特許協力条約に基づく国際出願の「請求の範囲」

特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の「請求の範囲」の記載方法について、特許協力条約の条文、同条約に基づく規則を確認しておきます。

日本国特許庁を受理官庁として国際出願を行う場合(つまり日本の特許庁に国際出願をする場合)については、別途、国際出願法(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律)に規定されています。これについては、国際出願の「請求の範囲」の書き方をご覧ください。

以下では、おおもととなる特許協力条約(PCT)やその規則について、確認してみます。

本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁ホームページなどでご確認ください。

 


特許協力条約
第6条 請求の範囲

請求の範囲には、保護が求められている事項を明示する。
請求の範囲は、明確かつ簡潔に記載されていなければならない。
請求の範囲は、明細書により十分な裏付けがされていなければならない。

 


特許協力条約に基づく規則
第6規則 請求の範囲

6.1 請求の範囲の数及び番号の付け方

(a) 請求の範囲の数は、請求の範囲に記載される発明の性質を考慮して妥当な数とする。

(b) 請求の範囲の数が二以上の場合には、請求の範囲には、アラビア数字により連続番号を付する。

(c) 請求の範囲について補正をする場合における番号の付け方は、実施細則で定める。

 

6.2 国際出願の他の部分の引用

(a) 請求の範囲は、不可欠である場合を除くほか、発明の技術的特徴について明細書又は図面を引用する記載によつてはならない。特に、請求の範囲は、「明細書の………の箇所に記載したように」又は「図面の………の図に示したように」のような引用をする記載によつてはならない。

(b) 国際出願が図面を含む場合には、請求の範囲に記載されている技術的特徴には、その特徴に係る引用符号を付することが望ましい
 引用符号は、括弧を付して用いることが望ましい。引用符号を付することが請求の範囲の速やかな理解を特に容易にするものでない場合には、引用符号は、用いない。指定官庁は、公表に当たつては、引用符号を省略することができる。

 

6.3 請求の範囲の記述方法

(a) 保護が求められている事項は、発明の技術的特徴を記載することによつて明示する。

(b) 請求の範囲には、適当と認められるときは、次のものを含める
  (ⅰ)保護が求められている事項の明示に必要な発明の技術的特徴であつて結合して先行技術をなすものを表示する陳述
  (ⅱ)(ⅰ)の規定に従つて記載された技術的特徴と結合して保護が求められている技術的特徴を簡潔に記載する特徴部分この部分は、「に特徴を有する」、「を特徴とする」、「のように改良した」又はその他これらの表現と同様の表現を用いて示される。

  • ジェプソン型クレーム」として知られている2つの部分からなるクレームであり、先行技術に関する前段部分と、それに続く特徴部に関する後段部分とを含むクレームです(PCT国際調査及び予備審査ガイドライン 5.05, 15.30等)。具体的には、「…(先行技術)…において、…(本願特徴部)…を特徴とする…装置(方法)。」のような記載です。

(c) 指定国の国内法令が(b)に規定する請求の範囲の記述方法を定めていない場合には、その記述方法に従わないことは、当該指定国においていかなる影響をも及ぼすものではない。ただし、実際に用いられる請求の範囲の記述方法が当該指定国の国内法令の要件を満たしている場合に限る。

 

6.4 従属請求の範囲

(a) 一又は二以上の他の請求の範囲のすべての特徴を含む請求の範囲(この従属的な形式の請求の範囲を以下「従属請求の範囲」という。)の記載は、可能なときは冒頭に、他の請求の範囲を引用して行い、次に、保護が求められている追加の特徴を記載することによつて行う。
 二以上の他の請求の範囲を引用する従属請求の範囲(「多数従属請求の範囲」)は、引用しようとする請求の範囲を択一的な形式によつてのみ引用する
 多数従属請求の範囲は、他の多数従属請求の範囲のための基礎として用いてはならない。

 国際調査機関として行動する国内官庁に係る国の国内法令が多数従属請求の範囲を前二文に規定する請求の範囲の記述方法と異なる方法によつて起草することを許していない場合において、前二文に規定する請求の範囲の記述方法に従わないときは、国際調査報告に第17条(2)(b)の規定に基づく表示をすることができる。実際に用いられる請求の範囲の記述方法が指定国の国内法令の要件を満たしている場合には、第二文又は第三文に規定する請求の範囲の記述方法に従わないことは、当該指定国においていかなる影響も及ぼすものではない。

  • 従属請求の範囲(従属クレーム)とは?、多数従属請求の範囲(多数項従属クレーム)とは?、マルチマルチクレームとは?、これらの具体例については、国際出願の「請求の範囲」の書き方をご覧ください。
  • 特許協力条約 第17条 国際調査機関における手続
    (1) 国際調査機関における手続は、この条約、規則並びに国際事務局がこの条約及び規則に従つて当該国際調査機関と締結する取決めの定めるところによる。
    (2)(a) 国際調査機関は、国際出願について次のいずれかの事由がある場合には、その旨を宣言するものとし、出願人及び国際事務局に対し国際調査報告を作成しない旨を通知する。
      (ⅰ) 当該国際調査機関が、当該国際出願の対象が規則により国際調査機関による調査を要しないとされているものであると認め、かつ、当該国際出願について調査を行わないことを決定したこと。
      (ⅱ) 当該国際調査機関が、明細書、請求の範囲又は図面が有意義な調査を行うことができる程度にまで所定の要件を満たしていないと認めたこと。
     (b) (a)に規定するいずれかの事由が一部の請求の範囲のみとの関連においてある場合には、国際調査報告は、当該請求の範囲についてはその旨を表示するものとし、他の請求の範囲については次条の規定に従つて作成される。
    (3)省略

(b) 従属請求の範囲は、それが引用する請求の範囲に含まれるすべての限定又は、従属請求の範囲が多数従属請求の範囲である場合には、当該多数従属請求の範囲と関係する特定の請求の範囲に含まれるすべての限定を含むものと解する。

(c) 前の単一の請求の範囲を引用するすべての従属請求の範囲及び前の二以上の請求の範囲を引用するすべての従属請求の範囲は、可能な範囲でかつ最も実際的な方法で取りまとめて記載する。

 

6.5 実用新案

国際出願に基づき実用新案を与えることを求められている指定国は、国際出願の処理がその指定国において開始された後は、6.1から6.4までに規定する事項につき、これらの規定に代えて実用新案に関する国内法令の規定を適用することができる。ただし、出願人が、出願を当該国内法令の規定に適合させるため、第22条に規定する当該期間の満了の後少なくとも二箇月の期間の猶予を与えられることを条件とする。

 


関連情報

 


(作成2020.06.28、最終更新2020.06.28)
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