はじめに
- 特許法第43条~第43条の3について、条文を解読してみます。
- 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
- 本ページの解説動画:特許法第43条~第43条の3の条文解読(パリ条約による優先権、パリ条約の例による優先権)【動画】
目次
(パリ条約による優先権主張の手続)
第43条
パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、
『【その旨】並びに「最初に出願をし」若しくは「同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし」又は「同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められ」た【パリ条約の同盟国の国名】及び【出願の年月日】を記載した書面』【優先権主張書】を
経済産業省令で定める期間内に
特許庁長官に提出しなければならない。
- パリ条約による優先権とは?
パリ条約による優先権とは、いずれかの同盟国(第一国)において正規に出願をした者(又はその承継人)が、その出願に基づいて所定の優先期間内に他の同盟国(第二国)に出願したときに与えられる特別な利益をいいます。特許出願の場合、第二国における出願は、新規性や進歩性等の判断に関し、第一国における出願日(優先日)にされたのと同様の取扱いを受けることができます。 -
パリ条約 第4条 優先権
A (1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は、他の同盟国において出願をすることに関し、以下に定める期間中優先権を有する。
(2) 各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された2国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められる。
(3) 正規の国内出願とは、結果のいかんを問わず、当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願をいう。B すなわち、A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の出願、当該発明の公表又は実施、当該意匠に係る物品の販売、当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては、各同盟国の国内法令の定めるところによる。
C (1) A(1)に規定する優先期間は、特許及び実用新案については12箇月、意匠及び商標については6箇月とする。
(2) 優先期間は、最初の出願の日から開始する。出願の日は、期間に算入しない。
(3) 優先期間は、その末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受理するために開いていない日に当たるときは、その日の後の最初の就業日まで延長される。
(4) (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は、先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として、最初の出願とみなされ、その出願の日は、優先期間の初日とされる。この場合において、先の出願は、優先権の主張の基礎とすることができない。D (1) 最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は、その出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は、遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。
(2)~(5) 省略 - 特許法施行規則 第27条の4の2 第3項
特許法第41条第4項及び第43条第1項(同法第43条の2第2項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。
一 特許出願(特許法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願を除く。)について、同法第41条第1項、第43条第1項又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。)
優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から1年4月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から4月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)
二 特許法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願について、同法第41条第1項又は第43条第1項若しくは第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。)
優先日から1年4月、同法第44条第1項の規定による新たな特許出願に係るもとの特許出願の日、同法第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係るもとの出願の日若しくは同法第46条の2第1項の規定による特許出願の基礎とした実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から4月又は同法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願をした日から1月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)
三 特許法第41条第1項の規定による優先権の主張(同項第一号に規定する正当な理由があるときにするものに限る。)をする場合
当該正当な理由がないものとした場合における当該優先権の主張を伴う特許出願をすることができる期間の経過後2月
四 特許法第43条の2第1項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張をする場合
当該優先権の主張に係るパリ条約第4条C(1)に規定する優先期間の経過後2月
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、
「最初に出願をし」、若しくは「パリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし」、若しくは「同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められ」たパリ条約の同盟国の認証がある『出願の年月日を記載した書面』、『その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本』
又は『これらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であつてその同盟国の政府が発行したもの』【優先権証明書】を
次の各号に掲げる日のうち最先の日から1年4月以内に
特許庁長官に提出しなければならない。
一 「当該最初の出願」若しくは「パリ条約第4条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願」又は「同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願」の日
二 その特許出願が第41条第1項(国内優先権主張)の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項(パリ条約優先権主張)、次条第1項(優先期間徒過救済措置による優先権主張)(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項(パリ条約の例による優先権主張)の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第1項の規定による優先権の主張をした者は、
「最初の出願」若しくは「パリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願」又は「同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願」の番号を記載した書面を
前項に規定する書類(優先権証明書)とともに特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、
当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、
かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第1項の規定による優先権の主張をした者が第2項に規定する期間内に同項に規定する書類(優先権証明書)を提出しないときは、
当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第2項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、
第1項の規定による優先権の主張をした者が、第2項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、
前二項の規定の適用については、第2項に規定する書類を提出したものとみなす。
- 優先権証明書提出期間内に、「優先権書類の電子的交換のために必要な事項を記載した書面」を提出したときは、優先権書類(優先権証明書)を提出したものとみなす。
- 経済産業省令で定める場合=特許法施行規則 第27条の3の3第2項
6 特許庁長官は、
第2項に規定する期間内に「同項に規定する書類」又は「前項に規定する書面」の提出がなかつたときは、
第1項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
- 優先権証明書提出期間内に「優先権証明書」又は「優先権書類の電子的交換のために必要な事項を記載した書面」の提出がなかったときは、優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、
経済産業省令で定める期間内に限り、
「第2項に規定する書類」又は「第5項に規定する書面」を特許庁長官に提出することができる。
- 第2項に規定する書類=優先権証明書
- 第5項に規定する書面=優先権書類の電子的交換のために必要な事項を記載した書面
- 経済産業省令で定める場合=特許法施行規則 第27条の3の3第5項
8 第6項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に「第2項に規定する書類」又は「第5項に規定する書面」を提出することができないときは、
前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
- 経済産業省令で定める場合=特許法施行規則 第27条の3の3第6項
9 第7項又は前項の規定により「第2項に規定する書類」又は「第5項に規定する書面」の提出があつたときは、
第4項(優先権証明書の不提出による優先権主張の効力喪失)の規定は、適用しない。
(パリ条約の例による優先権主張)
第43条の2
パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとしたにもかかわらず、同条C(1)に規定する優先期間(以下この項において「優先期間」という。)内に優先権の主張を伴う特許出願をすることができなかつた者は、
その特許出願をすることができなかつたことについて正当な理由があり、かつ、経済産業省令で定める期間内にその特許出願をしたときは、
優先期間の経過後であつても、同条の規定の例により、その特許出願について優先権を主張することができる。
- 優先期間徒過救済措置による優先権主張
【補足】条文上は「パリ条約の例による優先権」ですが、説明の便宜上(条文解読シリーズでは)、次条(第43条の3)の優先権との違いを明示するために、「優先期間徒過救済措置による優先権」ということがあります。弊所が独自に名付けたものであり、法律用語ではありません。
2 前条の規定は、前項の規定により優先権を主張する場合に準用する。
第43条の3
次の表の上欄(ここでは左欄)に掲げる者が同表の下欄(ここでは右欄)に掲げる国においてした出願に基づく優先権は、
パリ条約第4条の規定の例により、特許出願について、これを主張することができる。
日本国民又はパリ条約の同盟国の国民(パリ条約第3条の規定により同盟国の国民とみなされる者を含む。次項において同じ。) | 世界貿易機関の加盟国 |
世界貿易機関の加盟国の国民(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1C第1条3に規定する加盟国の国民をいう。次項において同じ。) | パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国 |
2 パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しない国(日本国民に対し、日本国と同一の条件により優先権の主張を認めることとしているものであつて、特許庁長官が指定するものに限る。以下この項において「特定国」という。)の国民がその特定国においてした出願に基づく優先権
及び「日本国民」又は「パリ条約の同盟国の国民」若しくは「世界貿易機関の加盟国の国民」が特定国においてした出願に基づく優先権は、
パリ条約第4条の規定の例により、特許出願について、これを主張することができる。
3 前二条の規定は、前二項の規定により優先権を主張する場合に準用する。
(作成2021.06.16、最終更新2021.07.09)
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