目次
- はじめに
- 商標の先使用権とは?
- 第32条第1項
>先使用権の発生要件
>先使用権の効果
>関連規定(4条1項十号、47条1項) - 第32条第2項
>混同防止表示請求 - 関連情報
- 本ページの解説動画:商標法第32条の条文解読(先使用権):未登録周知商標の保護【動画】
はじめに
- 商標法第32条について、条文を解読してみます。
- 商標の先使用権(せんしようけん)についての規定です。未登録周知商標の保護規定です。
- 商標登録せずに使用していたが、他人が先に商標登録を受けた場合に、継続して使用することができるか否かの規定となります。
- 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
商標の先使用権とは?
先使用権とは、他人の商標登録出願前から不正競争の目的でなく登録商標と同一・類似の商標を使用していた結果、周知商標となっているときは、その商標を継続して使用することができる権利をいいます。
詳しくは、商標法第32条に規定されており、以下のとおりです。
なお、特許法の先使用権、意匠法の先使用権については、次のページをご覧ください。
(先使用による商標の使用をする権利)
第32条
・他人の商標登録出願前から
・日本国内において
・不正競争の目的でなく
・その商標登録出願に係る「指定商品若しくは指定役務」又は「これらに類似する商品若しくは役務」について「その商標又はこれに類似する商標」の使用をしていた結果、
・その商標登録出願の際(第9条の4(補正が要旨変更と登録後に認められたときは補正書提出時に出願したものとみなす)の規定により、又は第17条の2第1項(意匠法の準用)若しくは第55条の2第3項(審判における特則)(第60条の2第2項(再審)において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第17条の3第1項(補正却下後の新出願)の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現に「その商標」が自己の業務に係る「商品又は役務」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、
【その者】は、
継続して「その商品又は役務」について「その商標」の使用をする場合は、
「その商品又は役務」について「その商標」の使用をする権利を有する。
【当該業務を承継した者】についても、同様とする。
先使用権の発生要件
- 他人の商標登録出願前から使用していること。
- 日本国内において使用していること。
- 不正競争の目的でなく使用していること。
- 「指定商品等又はこれに類似する商品等」について「登録商標又はこれに類似する商標」の使用をしていること。
- 商標登録出願の際現に「その商標」が自己の業務に係る「商品等」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること(単に使用しているだけでは足りず、周知商標となっていること)。
- 継続して「その商品等」について「その商標」の使用をすること(同一範囲で継続使用すること)。
先使用権の効果
- 【その者】は、「その商品等」について「その商標」の使用をする権利を有する。
- 【その業務を承継した者】についても、同様である。
関連規定
- 未登録でも他人の周知商標があれば、それと同一・類似の商標については、本来、商標登録を受けることができない(4条1項十号)。しかし、誤って登録された場合でも、周知商標の使用者は、先使用権により、使用を継続できることになる(32条)。
- 4条1項十号違反を理由とする無効審判請求は、善意に登録を受けた場合、登録日から5年を経過した後は、請求することができない(47条1項)。そのため、その除斥期間の経過後、先使用権が特に意味を持つことになる。
- 第4条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの - 第47条 …商標登録が第4条第1項第十号…の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)…は、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。
2 【当該商標権者又は専用使用権者】は、
前項の規定により【商標の使用をする権利を有する者】に対し、
「その者の業務に係る商品又は役務」と「自己の業務に係る商品又は役務」との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを
請求することができる。
混同防止表示請求
- 【商標権者又は専用使用権者】は、
【先使用権者】に対し、
「その者の業務に係る商品等」と「自己の業務に係る商品等」との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを
請求することができる。
関連情報
(作成2022.11.19、最終更新2022.11.22)
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