目次
- はじめに
- 特許の先使用権とは?
- 第79条(先使用による通常実施権)
>先使用権の発生要件
>先使用権の効果 - 関連情報
- 本ページの解説動画:特許法第79条の条文解読(先使用権):出願前からの実施者の保護【動画】
はじめに
- 特許法第79条について、条文を解読してみます。
- 特許の先使用権(せんしようけん)についての規定です。他人の出願前からの実施者の保護規定です。
- 特許出願せずに実施又はその準備をしていたが、他人が先に特許出願して特許を受けた場合に、継続して実施することができるか否かの規定となります。
- 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
- 参考文献:特許庁『工業所有権法逐条解説 第22版』
特許の先使用権とは?
先使用権とは、他人の特許出願前から善意にその発明の実施である事業又はその準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業目的の範囲内において、継続して業として実施することができる権利をいいます。
詳しくは、特許法第79条に規定されており、以下のとおりです。
なお、意匠法の先使用権、商標法の先使用権については、次のページをご覧ください。
(先使用による通常実施権)
第79条
特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、
又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、
特許出願の際現に日本国内において
その発明の実施である事業をしている者
又はその事業の準備をしている者は、
その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、
その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
先使用権の発生要件
◆特許出願に係る発明との関係:次のいずれかに該当すること。
- 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をしたこと。
- 特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得したこと。
◆発明の実施である事業との関係:次のいずれかに該当すること。
- 特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしていること。
- 特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業の準備をしていること。
先使用権の効果
- 実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
- つまり、実施又は準備をしている「発明の範囲内」かつ「事業の目的の範囲内」で、業として特許発明を実施することができる。
- 実施又は準備をしている「発明の範囲内」とあるので、今後も実施できるのは、特許発明の全部ではなく、実施又は準備をしていた発明の範囲内に限られる。
- 実施又は準備をしている「事業の目的の範囲内」とあるので、事業を変えての実施はできないが、製造規模の拡大は許される。
関連情報
(作成2022.11.22、最終更新2022.11.22)
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