特許の重要な点を確認してみる「特許の重点」シリーズです。
第3回目は、特許出願してから特許成立までの話です。
出願審査請求、出願公開、特許要件、審査対応手続などについて、確認してみます。
- 本ページの解説動画:特許の重点3:出願後【動画】
(1)審査を受けるには、出願とは別に「出願審査の請求」が必要である。
◆出願しただけでは、審査されない。
◆審査を受けるには、原則として、出願日から3年以内に「出願審査の請求」が必要である。
◆特許庁による期限通知はないので、出願人自らが期限管理して手続する。
◆所定期間内に出願審査の請求をしないと、出願は取り下げたものとみなされる。但し、後述するように、取下げとみなされる前に出願公開されることで、後日の他人の権利化を阻止できる。
◆詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
(2)出願後1年6月経過すると、審査前でも、特許前でも、出願内容が公開される。
◆原則として、出願日から1年6月経過後、公開公報により出願内容が公開される。これを「出願公開」という。
◆遅くとも出願日までに、誰が、どのような発明をしたのか、記録を残せることになる。
◆特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)にて、誰でも公開公報(およびその他の公報)を見ることができる。
◆詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
(3)出願するだけで、もう他人に権利を取られることはない。
◆前述した出願公開により、特許されたか否かに問わず、後日出願による他人の権利化を阻止できる。
◆他人の権利化を阻止するだけなら、出願だけで審査を受ける必要はない(出願審査請求は不要)。但し、審査を受けて特許にしなければ、他人の実施を排除することはできない。また、改良発明については、後日、他人が特許を受けられる場合もある。
◆他人の模倣を排除するには、審査を受けて特許にする必要がある(出願審査請求が必要)。また、基本発明について特許を有していれば、改良発明の実施を制限できることもある。
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(4)特許されるための要件
◆所定の拒絶理由に該当しないことが要件となる。代表的な拒絶理由として、以下のものがある。
(4-1)出願書類に関する拒絶理由
- 新規事項追加(出願時に記載のない事項を追加した。)
- サポート要件(「特許を受けようとする発明(請求項に記載の発明)」が発明の詳細な説明に記載されていない。)
- 実施可能要件(発明の詳細な説明の記載が「特許を受けようとする発明」を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。)
- 明確性要件(「特許を受けようとする発明」が明確でない。)
- 発明の単一性(一出願で権利請求できる発明の範囲を超えている。)
(4-2)発明に関する拒絶理由
- 発明該当性(発明でない。)
- 産業上の利用可能性(医療行為などに当たる。)
- 新規性(出願前に知られている。)
- 進歩性(容易に発明できる。)
- 先願(せんがん)・拡大先願(他人の出願が先にある。)
(4-3)特許を受ける権利に関する拒絶理由
- 冒認(ぼうにん)出願(特許出願人がその発明について「特許を受ける権利」を有していない。)
- 共同出願(「特許を受ける権利」が共有であるのに、共有者全員で出願していない。)
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(5)拒絶理由通知がきたら、それに対応して特許化を図る。
◆多くの場合、一度は、新規性や進歩性がないなどを理由に、拒絶理由が通知される。
◆拒絶理由通知に対し、意見書や手続補正書を提出できる。意見書は、審査官に意見を申し述べる書類であり、手続補正書は、出願書類を修正する書類である。
◆たとえば、意見書において、審査で挙げられた先行技術とは異なる旨を主張(たとえば構成上の違いとそれによるメリットを主張)したり、手続補正書において、権利範囲を狭めて先行技術との違いを主張(たとえば断面六角形鉛筆を消しゴム付きに限定)したりして対応する。
◆拒絶理由がないか解消した場合、「特許査定」がなされ、拒絶理由が解消しない場合、「拒絶査定」がなされる。拒絶査定に対しては、審判や訴訟で争うことができる。
◆典型的な流れ
- 【例1】出願→出願審査請求→特許査定
- 【例2】出願→出願審査請求→拒絶理由通知→意見書・手続補正書→特許査定/拒絶査定
- 【例3】出願→出願審査請求→(最初の)拒絶理由通知→意見書・手続補正書→(最後の)拒絶理由通知→意見書・手続補正書→特許査定/拒絶査定
- なお、最後の拒絶理由通知に対する応答時、特許請求の範囲についてする補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明に限られる。しかも、限定的減縮を目的とする補正については、補正後の内容が特許性を有する必要がある。
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(6)特許査定がでても特許された訳ではない。
◆審査の結果、拒絶理由がないか解消した場合、「特許査定」がなされる。しかし、まだ特許された訳ではない。
◆特許後、独占権に対する対価として、毎年、特許料の支払いが必要である。その第1~3年分は、特許権成立前に、前払いする必要がある。この設定登録料(第1~3年分の特許料)を支払って、はじめて特許権が成立する。
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関連情報
(作成2023.01.03、最終更新2023.01.17)
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