不服2022-17626
意願2021-26244「電気自転車」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】部分意匠、意匠に係る物品の類似、基本的構成態様と具体的態様、両部分以外にも見られるもの、使用時に需要者の視界に入りやすい、需要者が注目、需要者の注意を惹く部分、類否判断に与える影響、直線状と凸弧状・屈曲、角張ったと丸みを帯びた
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠は「電気自転車」、引用意匠は「自転車」であって、補助動力源として電気を用いるか否かという相違があるものの、どちらも人が乗車して移動する目的のために用いる2輪車である点で共通しているから、両意匠の意匠に係る物品は、類似する。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
いずれも、使用時及び保管時を問わず、全体の加重を受け止めて、その形状や機構を保持するためのフレームであるから、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は、一致する。
(3)両部分の形状等
ア 共通点
基本的構成態様として、
(ア)両部分は、右側面視において、後方に傾いた縦向き略円筒形の「シートチューブ」の上端近くから、前方斜め上に向かって略変形円筒形の「トップチューブ」が設けられ、シートチューブとほぼ並行な略円筒形の短い「ヘッドチューブ」に接合されている。また、シートチューブの下端から前方斜め上に向かって設けられた略縦長円筒形の「ダウンチューブ」は、ヘッドチューブ及びトップチューブと接合されており、シートチューブ、トップチューブ及びダウンチューブにより略三角形状を形成している。また、シートチューブにおけるトップチューブとの接合部よりやや下側の位置から、後方斜め下に向かって略円筒形の「シートステー」が設けられ、シートチューブ下端からは、後方やや斜め上に向かって略円筒形の「チェーンステー」が設けられており、後輪中央の位置でシートステーと接合され、シートチューブ、シートステー及びチェーンステーにより略三角形を形成している点、
具体的態様として、
(イ)トップチューブのシートチューブ近傍がやや下方に屈曲している点、
(ウ)シートステーの後輪中央の近傍が、やや上方に屈曲している点において共通する。
イ 相違点
(ア)トップチューブについて、右側面視において、本願意匠は、全体が直線状で、両側に長手方向に沿って稜線が表れる程度に角張った筒体であるのに対し、引用意匠は、右端から左端寄りまで、わずかに凸弧状としたあと上方に屈曲し、ヘッドチューブ側の丸みを帯びた筒体から、漸次変化することにより、シートチューブ側ではパイプを押しつぶしたような縦長の筒体としている点、
(イ)トップチューブのシートチューブへの接合点について、本願意匠は、シートチューブ上端のすぐ下であるのに対して、引用意匠は、上端からやや下側である点、
(ウ)シートステーの後輪中央からの形状について、本願意匠は、略「く」形状に屈曲しているのに対して、引用意匠は、直線状である点において相違する。
2 類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、類似する。
(2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は一致する。
(3)両部分の形状等
ア 共通点の評価
この種物物品分野において、共通点(ア)ないし(ウ)は、両部分以外にも見られるものであることから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
相違点(ア)及び(イ)は、主に使用時に需要者の視界に入りやすく、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
また、主に物品の保管時に、需要者はフレームの外形に注目すると考えられるが、相違点(ウ)は、フレームの外形を形作る一部として需要者の注意を相当程度惹く部分であるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
ウ 形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)ないし(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。
3 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲も同一で、形状等において、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。
関連情報
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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.26、最終更新2023.08.26)
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