特許法第100条の条文解読(差止請求権)

はじめに

  • 特許法第100条について、条文を解読してみます。
  • 特許権の侵害行為の差止請求権についての規定です。
  • 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
  • 参考文献:特許庁『工業所有権法逐条解説 第21版』
  • 本ページの解説動画特許法第100条の条文解読(差止請求権)【動画】

 


(差止請求権)
第100条

特許権者又は専用実施権者は、
自己の特許権又は専用実施権を「侵害する者」又は「侵害するおそれがある者」に対し、
その侵害の【停止】又は【予防】を請求することができる

  • 特許権の侵害行為の差止請求権の規定である。侵害の【停止】又は【予防】を請求することができる。
  • 特許権の侵害とは、正当な権原又は理由なく、業として、他人の特許発明を実施することをいう(第68条)。所定の間接侵害行為(直接侵害の予備的行為)も、特許権を侵害するものとみなされる(第101条)。
  • 民法第709条、特許法第102条の損害賠償請求権と異なり、侵害者の「故意又は過失」は要件とはならない
    ・民法第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
    ・特許法第102条「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合・・・」
  • 侵害の【停止】を請求とは、現在進行中の侵害を止める請求をいい、侵害の【予防】を請求とは、将来侵害しないことの請求である。つまり、現在又は将来の侵害の差止めを請求できる。そして、次の第2項で、さらに侵害物の【廃棄】や設備の【除却】など、【侵害の予防に必要な行為】を請求できる。

 

2 特許権者又は専用実施権者は、
前項の規定による請求をするに際し、
 ・「侵害の行為を組成した物」(物を生産する方法の特許発明にあつては、「侵害の行為により生じた物」を含む。第102条第1項(損害額の推定)において同じ。)【廃棄】
 ・「侵害の行為に供した設備」【除却】
 ・その他の【侵害の予防に必要な行為】
を請求することができる。

  • 廃棄・除却請求権の規定である。侵害物の【廃棄】や設備の【除却】など、【侵害の予防に必要な行為】を請求することができる。
  • 「前項の規定による請求をするに際し」とあることから、第1項の差止請求に付帯して請求する必要がある。第1項で、今やっている侵害を止めること、又は、今後侵害しないことを請求でき、その際、第2項で、侵害品があればその廃棄や、設備があればその除却なども請求できることになる。
  • 「その他の」とあることから、【侵害の予防に必要な行為】には、「侵害の行為を組成した物」の【廃棄】や、「侵害の行為に供した設備」の【除却】が含まれる。言い換えれば、侵害物の【廃棄】や設備の【除却】は、【侵害の予防に必要な行為】の一種である。(ご参考:条文の読み方>「その他の」と「その他」)
  • 「侵害の行為を組成した物」とは、侵害行為の必然的内容をなした物をいい、物を生産する方法の特許発明にあっては、侵害行為により生じた物を含む。具体的には、(a)物に特許がされている場合における「その物」、(b)物の製造装置に特許がされている場合における「その装置」、(c)物の製造方法に特許がされている場合における「その方法により製造された物」は、「侵害の行為を組成した物」である。端的にいえば、「侵害品」である。
  • 第101条各号に掲げる行為(間接侵害行為)は、特許権又は専用実施権の侵害行為とみなされる。そのため、たとえば、特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産にのみ用いる物(製造装置や専用部品等)も、「侵害の行為を組成した物」に含まれる。
  • 「侵害の行為に供した設備」とは、たとえば、物に特許がされている場合において、その物の製造装置をいう。
  • 「その他の侵害の予防に必要な行為」には、たとえば、侵害しない保証としての、担保の提供が含まれる。

 


関連情報

 


(作成2022.04.09、最終更新2022.05.23)
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