独立項と従属項

はじめに

 


目次

 


【特許請求の範囲】の【請求項】

特許請求の範囲では、「請求項」と呼ばれる項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければなりません(特許法第36条第5項)。

特許請求の範囲についてで述べたように、請求項には、「独立項(独立形式請求項)」と「従属項(引用形式請求項)」とがあります。

ここでは、独立項と従属項とについて、さらに詳細にみていきます。

 


独立項とは?

独立項とは、先行する他の請求項を引用しないで記載した請求項をいいます。端的に言えば、「請求項○に記載の…」のような文言がない請求項をいいます。他の請求項の記載に影響を受けないため、他の請求項とは独立した関係を有する請求項です。少なくとも請求項1は、必ず独立項となります。

 


従属項とは?

従属項とは、先行する他の請求項を引用して記載した請求項をいいます。端的に言えば、「請求項○に記載の…」のような文言がある請求項をいいます。他の請求項の記載に影響を受けるため、当該他の請求項に従属した関係を有する請求項です。

 


独立項と従属項の具体例

たとえば、特許請求の範囲が次の場合、請求項1が独立項、請求項2が従属項です。

【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 前記軸材が断面六角形である ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。

請求項2に記載の鉛筆は、請求項1に記載の「軸材の中心線に沿って芯が設けられた」鉛筆の内、「軸材が断面六角形である」鉛筆に限定したものです。請求項2の内容は、請求項1の内容も含めて、「軸材の中心線に沿って芯が設けられ、前記軸材が断面六角形である」鉛筆という訳です(請求項1+2の内容)。

請求項1では鉛筆全般について権利請求する一方、請求項2では断面六角形鉛筆について権利請求しています。詳しくは、特許請求の範囲についてをご確認ください。

請求項2では、(請求項1を引用することで)請求項1の内容を取り込むので、仮に請求項1の内容に変化があれば、その影響を受けることになります。たとえば、請求項1において、「前記軸材の一端部に消しゴムが設けられた」ことも要件とすると、それを引用する請求項2では、そのような消しゴム付き鉛筆の内、「軸材が断面六角形である」鉛筆に限定したものとなります(消しゴム付き断面六角形鉛筆)。

 


従属項の類型

従属項の使い方として、以下のものがあります。緑字は、特許庁編『特許・実用新案審査ハンドブック』に掲載の例です。

 

従属項の使い方1(構成の下位概念化(内的付加))

◆例1-1「典型的な引用形式請求項」
【請求項1】 断熱材を含んだ建築用壁材
【請求項2】 断熱材が発泡スチロールである請求項1記載の建築用壁材
 *請求項1の「弾性材」を、請求項2において「発泡スチロール」に限定しています。

◆例1-2
【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 前記軸材が断面六角形の木材である ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。
 *請求項1の「軸材」を、請求項2において「断面六角形の木材」に限定しています。

 

従属項の使い方2(構成の付加(外的付加))

◆例2-1
【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 前記軸材の一端部に消しゴムが設けられた ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。
 *請求項1の鉛筆に対し、請求項2において「消しゴム」付きに限定しています。

 

従属項の使い方3(構成の置換)

◆例3-1「引用される請求項の発明を特定するための事項の一部を置換する引用形式請求項」
【請求項1】 歯車伝動機構を備えた特定構造の伝動装置
【請求項2】 請求項1記載の伝動装置において、歯車伝動機構に代えてベルト伝動機構を備えた伝動装置
 *請求項1の「歯車伝動機構」を、請求項2において「ベルト伝動機構」に置換しています。

◆例3-2
【請求項1】 断面六角形の軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 断面六角形の軸材に代えて、断面楕円形の軸材を用いた ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。
 *請求項1の「断面六角形の軸材」を、請求項2において「断面楕円形の軸材」に置換しています。

 

従属項の使い方4(カテゴリーの変更)

◆例4-1「異なるカテゴリーで表現された請求項の記載を引用して記載する引用形式請求項」
【請求項1】 特定構造のボールベアリング
【請求項2】 特定の工程による請求項1記載のボールベアリングの製法
 *請求項1では「物の発明」であるのに対し、請求項2では「方法の発明(物を生産する方法の発明)」に変更しています。

◆例4-2
【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 請求項1に記載の鉛筆の製造装置であって、…機構を備える ことを特徴とする鉛筆製造装置。
【請求項3】 請求項1に記載の鉛筆の製造方法であって、…工程を含む ことを特徴とする鉛筆製造方法。
 *請求項1では「物」、請求項2ではその物の「製造装置」、請求項3ではその物の「製造方法」としています。

 

従属項の使い方5(多数項従属・複合)

◆例5-1「多数項引用形式請求項で請求項を記載」
【請求項1】 特定の構造を有するエアコン装置
【請求項2】 風向調節機構を有する請求項1記載のエアコン装置
【請求項3】 風量調節機構を有する請求項1又は請求項2記載のエアコン装置

◆例5-2
【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 前記軸材が断面六角形である ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。
【請求項3】 前記軸材の一端部に消しゴムが設けられた ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛筆。
【請求項4】 請求項1~3のいずれか1項に記載の鉛筆の製造方法であって、…工程を含む ことを特徴とする鉛筆製造方法。

 


独立項の権利範囲は従属項よりも常に広いか?

一般的には、独立項の権利範囲(技術的範囲)は、その従属項よりも広い、と考えられます。逆にいえば、従属項の権利範囲(技術的範囲)は、その従属先である独立項よりも狭い、ことになります。従属項では、独立項に対し、何らかの限定(内的付加・外的付加)を加えることで、権利範囲を狭めているのが通常だからです。

実際、上記の「従属項の使い方1」や「従属項の使い方2」の場合には、従属項(請求項2)の権利範囲は、独立項(請求項1)の権利範囲よりも狭くなります。たとえば、「例2-1」の場合、請求項1は、鉛筆全般についての権利である一方、請求項2は、単なる鉛筆ではなく特定構造の鉛筆(消しゴム付きの鉛筆)に限られます。

そのため、権利侵害の有無を考える際、独立項(請求項1)との関係だけを考えるかもしれません。

しかしながら、「従属項の使い方3」のように、従属項において発明特定事項の「置換」があると、従属項(請求項2)の権利範囲が必ずしも独立項(請求項1)よりも狭くなるとは限りません。

独立項の一部構成が、従属項で他の構成に「置換」される結果、独立項との関係では権利侵害ではないけれども、従属項との関係では権利侵害となる場合があり得ます。この点、注意が必要です。

 


関連情報

 


参考条文

特許法第36条第5項

…特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。

 

特許法第36条第6項

…特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
  一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
  二 特許を受けようとする発明が明確であること。
  三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
  四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

 

特許法施行規則第第24条の3

特許法第36条第6項第四号の経済産業省令で定めるところによる特許請求の範囲の記載は、次の各号に定めるとおりとする。
  一 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
  二 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
  三 請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
  四 他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。

 


(作成2020.06.25、最終更新2020.07.02)
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