六面図とは

意匠登録出願の図面(意匠図面)として、典型的には「六面図」が用いられます。六面図とは何か、六面図の具体例、六面図の描き方、一部の図を省略できる場合(同一又は対称の場合)、図の同一と対称の違い、六面図の必要性、平面的なものを表す図面、図面に不備がある場合の取扱い(出願拒絶・登録無効)について、わかりやすく解説します。

目次

 


六面図とは?

六面図とは、正投影図法により各図同一縮尺で作成した「正面図」、「背面図」、「左側面図」、「右側面図」、「平面図」及び「底面図」からなる一組の図をいいます。

 


六面図の具体例

立体を表す図面は、正投影図法により各図同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図をもって一組として記載します。この一組の図が、六面図です。

六面図(正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図)

六面図は、物品を前後左右上下から観察し、次の六つの図面から構成されます。

  • (1) 前方から見た正面視を「正面図(しょうめんず)」
  • (2) 後方から見た背面視を「背面図(はいめんず)」
  • (3) 左側から見た左側面視を「左側面図(ひだりそくめんず)」
  • (4) 右側から見た右側面視を「右側面図(みぎそくめんず)」
  • (5) 上方から見た平面視を「平面図(へいめんず)」
  • (6) 下方から見た底面視を「底面図(ていめんず)」

 


六面図の描き方

六面図は、次のイメージで描くことができます。すなわち、六面図は、あたかも、四角形で中空の透明な箱の中に物品を入れ、箱の各面から物品を見た状態を各面に描いたのち、その箱を展開した図と対応します。

下に示す「六面図の描き方(透明な箱の各面への投影(描画)とその箱の展開)」をご参照ください。

六面図の描き方(透明な箱の各面への投影(描画)とその箱の展開)

 


図の省略(同一又は対称の場合)

正面図と背面図が同一又は対称の場合、通常、背面図を省略することができます。

左側面図と右側面図が同一又は対称の場合、一方の側面図を省略することができます。

平面図と底面図が同一又は対称の場合、通常、底面図を省略することができます。

図面を省略した場合、その旨を願書の【意匠の説明】の欄に記載します。

 

図が同一又は対称の場合とは?(同一と対称の違い?)

図の「対称」と「同一」の違い:意匠図面の省略

「同一又は対称の場合」とは具体的にどのような場合をいうのか、同一と対称の違いについて、詳しくは、「図の「対称」と「同一」の違い」をご覧ください。

 


六面図の必要性

意匠法施行規則の様式第6の備考8には、次のとおり規定されています。

『立体を表す図面は、意匠登録を受けようとする意匠を明確に表すために十分な数の図をもつて記載する。記載した図と同一又は対称である図は、当該図が他のいずれの図と同一又は対称であるかを願書の「【意匠の説明】」の欄に記載することをもつて当該図の記載に代えることができる。』

旧施行規則では、原則として六面図が要求されましたが、現在では、上述のとおり、必ずしも六面図が要求される訳ではありません。

しかしながら、六面図は、立体を表す図面の基本といえます。特許庁『意匠登録出願等の手続のガイドライン』(令和6年3月)でも、立体的な意匠を表す図面について、次のとおり案内されています。

立体的な意匠を表す図面は、正投影図法により各図同一縮尺で作成した【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】及び【底面図】など意匠登録を受けようとする意匠を明確に表すために十分な数の図を記載してください。

 


平面的なものを表す図面 

いわゆる「地もの」のように平面的なものを表す図面は、各図同一縮尺により作成した表面図及び裏面図をもって一組とします。

但し、表面図と裏面図が同一若しくは対称の場合、又は裏面が無模様の場合には、裏面図を省略することができます。その場合、その旨を願書の【意匠の説明】の欄に記載します。

 


図面に不備がある場合の取扱い

図が相互に整合せず、意匠の内容を特定できない場合」や「図面、写真などが不鮮明であることなどにより、正確に意匠の内容を知ることができない場合」などは、『意匠が具体的ではない』と判断されます(特許庁「意匠審査基準」)。

その結果、意匠法第3条第1項柱書の「工業上利用することができる意匠」に該当しないとして、出願拒絶、登録無効の原因となります。つまり、出願しても拒絶され(登録にならず)、仮に登録になっても無効の原因となります。

具体的な事例として、以下のものがあります。

 

(a) 出願拒絶理由

特許と異なり、意匠の場合、(登録前に)拒絶された出願は、原則として公開されません。そのため、一部の例外を除き、図面の不備を理由に拒絶された出願の具体例を、知ることはできません。しかし、後で述べるように、一旦審査をパスした登録後でさえ無効となるものがありますから、図面の不備を理由にそもそも登録にならなかったものもあるはずです。

実際、審査において拒絶され、上級審である審判において登録された例は、いくつか確認できます。逆にいえば、仮に審判請求しなかったなら、拒絶査定が確定し、権利化できなかった案件です。審判請求には、余分な手間や費用がかかりますから、中小企業様や個人事業主様には、負担が大きいと思われます。審判請求費用として、特許庁印紙代だけで55,000円必要です(2024年9月現在)。

また、図面の不備を理由に特許庁で拒絶審決を受け、それに不服として裁判所に出訴した事件として、次のものがあります。つまり、審査において拒絶査定を受け、それに不服として審判請求したが、判断が覆らなかったので、裁判所に出訴した事件です。しかし、裁判所も、特許庁の判断(拒絶審決)を支持しております。最終的に意匠登録されなかったのですが、本件は、訴訟事件となったため、公開されております。

 

(b) 登録無効理由

登録後に、図面に不備が見つかった場合の訴訟事件や審判事件として、たとえば、次のものがあります。救済される場合、救済されない場合があります。

 


関連情報

 


(作成2002.10.06、最終更新2024.09.27)
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