特許明細書の書き方(法令・様式編)

 


はじめに

特許制度は、特許庁への出願という形で、新規な発明を開示した者に、その開示の代償として、一定期間の独占権を認める制度です。特許を得るための出願は、願書、明細書、特許請求の範囲、必要な図面、及び要約書を提出して行います。

この内、明細書には、当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が、特許請求の範囲の「請求項に係る発明」を実施(生産・使用)することができる程度に、明確かつ十分に記載しなければなりません。その際、明細書では、発明の名称、技術分野、背景技術、その課題、その課題を解決するための手段、それによる効果の他、発明を実施するための形態として、具体例や変形例などを記載します。また、図面を添付して出願する場合には、明細書において、図面の簡単な説明(各図の説明)の他、図面で用いた符号の説明も記載します。

以下、特許出願の明細書について、一般的な様式・記載例を示した後、特許法、その施行規則および様式を確認してみます。

 


明細書の様式・記載例

【書類名】明細書
【発明の名称】鉛筆
【技術分野】
 【0001】
 本発明は、鉛筆に関するものである。
【背景技術】
 【0002】
 従来、下記特許文献1に開示されるように、・・・構造の鉛筆が知られている。この鉛筆は、・・・するものである。そのため、・・・のような不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
 【0003】
  【特許文献1】特開2009-000000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
 【0004】
 本発明が解決しようとする課題は、・・・できる鉛筆を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
 【0005】
 本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、・・・することを特徴とする鉛筆である。
【発明の効果】
 【0006】
 本発明の鉛筆によれば、・・・することができる。
【図面の簡単な説明】
 【0007】
  【図1】本発明の一実施例の鉛筆を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
 【0008】
 図1は、本発明の一実施例の鉛筆を示す斜視図である。
 【0009】
 この図に示すように、本実施例の鉛筆は、・・・
 ~構成・作用効果~
 ~具体例・変形例~
【符号の説明】
 【0010】
 1 鉛筆
 2 軸材
 3 芯

 


明細書に関する条文・規則・様式(2020.07.16)

特許法 第36条第3項

…明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
  一 発明の名称
  二 図面の簡単な説明
  三 発明の詳細な説明

 

特許法 第36条第4項

前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
  一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
  二 その発明に関連する文献公知発明(第29条第1項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。

 

特許法施行規則 第24条

願書に添付すべき明細書は、様式第29により作成しなければならない。

 

特許法施行規則 第24条の2

特許法第36条第4項第一号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。

 

特許法施行規則 様式第29(抜粋)

 【書類名】 明細書
 【発明の名称】
 【技術分野】
(【背景技術】)
(【先行技術文献】)
  (【特許文献】)
  (【非特許文献】)
 【発明の概要】
   【発明が解決しようとする課題】
   【課題を解決するための手段】
  (【発明の効果】)
(【図面の簡単な説明】)
  (【図1】)
(【発明を実施するための形態】)
  (【実施例】)
(【産業上の利用可能性】)
(【符号の説明】)
(【受託番号】)
(【配列表フリーテキスト】)
(【配列表】)

 

〔備考〕

4 文字は、10ポイントから12ポイントまでの大きさで、タイプ印書等により、黒色で、明りようにかつ容易に消すことができないように書き、平仮名(外来語は片仮名)、常用漢字及びアラビア数字を用いる。この場合において、「【発明の名称】」の欄に記載する当該発明の内容については、半角を用いてはならない。また、「【」、「】」、「▲」及び「▼」は用いてはならない(欄名の前後に「【」及び「】」を用いるときを除く。)

6 文章は口語体とし、技術的に正確かつ簡明に発明の全体を出願当初から記載する。この場合において、他の文献を引用して明細書の記載に代えてはならない

7 技術用語は、学術用語を用いる。

8 用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する。ただし、特定の意味で使用しようとする場合において、その意味を定義して使用するときは、この限りでない。

9 登録商標は、当該登録商標を使用しなければ当該物を表示することができない場合に限り使用し、この場合は、登録商標である旨を記載する。

10 微生物、外国名の物質等の日本語ではその用語の有する意味を十分表現することができない技術用語、外国語による学術文献等は、その日本名の次に括弧をしてその原語を記載する。

12 化学物質を記載する場合において、物質名だけでは、その化学構造を直ちに理解することが困難なときは、物質名に加え、化学構造を理解することができるような化学式をなるべく記載する。

13 「【発明の名称】」は、明細書の最初に記載し、当該発明の内容を簡明に表示するものでなければならない。

14 「発明の詳細な説明」は、第24条の2及び特許法第36条第4項に規定するところに従い、「【発明の名称】」の欄の次に、次の要領で記載する。

 イ 原則として、特許を受けようとする発明の属する技術の分野を記載し、当該記載事項の前には、「【技術分野】」の見出しを付す。

 ロ 文献公知発明を含め、特許を受けようとする発明に関連する従来の技術についてなるべく記載する。その記載は、「特許文献1」、「非特許文献1」のように、「【先行技術文献】」の欄において情報の所在に付した番号を引用して記載することが望ましい。この場合において、当該記載事項の前には、【背景技術】の見出しを付す。

 ハ 特許を受けようとする発明に関連する文献公知発明のうち特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他その文献公知発明に関する情報の所在を記載する。
  その記載は、情報の所在ごとに行を改めて記載し、特許、実用新案又は意匠に関する公報の名称を記載しようとするときは「【特許文献1】特開〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇号公報」のように記載し、学術論文の名称その他情報の所在を記載しようとするときは「【非特許文献1】〇〇〇〇著、「△△△△」××出版、〇〇〇〇年〇月〇日発行、p.〇〇~〇〇」のように、著者、書名、発行年月日等の必要な事項を記載する。この場合において、各記載事項の前には、なるべく「【特許文献】」及び「【非特許文献】」の見出しを付し、これらの記載の前にはなるべく「【先行技術文献】」の見出しを付す。
  なお、「特許文献」又は「非特許文献」が2以上あるときは、なるべく次のように「【特許文献1】」、「【特許文献2】」、「【非特許文献1】」、「【非特許文献2】」のようにそれぞれ記載する順序により連続番号を付して記載する。…
  【先行技術文献】
    【特許文献】
      【特許文献1】
      【特許文献2】
    【非特許文献】
      【非特許文献1】
      【非特許文献2】

 ニ 原則として、その発明が解決しようとする課題及びその課題を発明がどのように解決したかを記載する。また、特許を受けようとする発明が従来の技術との関連において有利な効果を有するものであるときは、なるべくその効果を記載する。この場合において、各記載事項の前には、なるべく「【発明が解決しようとする課題】」、「【課題を解決するための手段】」及び「【発明の効果】」の見出しを付し、これらの記載の前には、「【発明の概要】」の見出しを付す。

 ホ 特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を記載し、必要があるときは、これを具体的に示した実施例を記載する。その発明の実施の形態は、特許出願人が最良と思うものを少なくとも一つ掲げて記載し、当該記載事項の前には、「【発明を実施するための形態】」の見出しを付す。また、実施例の記載の前には、なるべく「【実施例】」の見出しを付し、実施例が2以上あるときは、なるべく「【実施例1】」、「【実施例2】」のように記載する順序により連続番号を付した見出しを付す。…

 ヘ 特許を受けようとする発明が産業上利用することができることが明らかでないときは、特許を受けようとする発明の産業上の利用方法、生産方法又は使用方法をなるべく記載し、当該記載事項の前には、なるべく「【産業上の利用可能性】」の見出しを付す。

15 「図面の簡単な説明」は、図の説明ごとに行を改めて「【図1】平面図」、「【図2】立面図」、「【図3】断面図」のように記載し、当該図の説明の前には、「【図面の簡単な説明】」の見出しを付す。図の主要な部分を表す符号の説明を記載するときは、当該符号の説明の前には、なるべく「【符号の説明】」の見出しを付す。

16 化学式等を明細書中に記載しようとする場合には、化学式を記載しようとするときは化学式の記載の前に「【化1】」、「【化2】」のように、数式を記載しようとするときは数式の記載の前に「【数1】」、「【数2】」のように、表を記載しようとするときは表の記載の前に「【表1】」、「【表2】」のように記載する順序により連続番号を付して記載する。化学式等は、横170㎜、縦255㎜を超えて記載してはならず、1の番号を付した化学式等を複数ページに記載してはならない。…

18 明細書(配列表は除く。)には、原則として、発明の詳細な説明の段落、図面の簡単な説明の図の説明若しくは符号の説明又は配列表のフリーテキストの繰り返し記載の前に、それぞれ「【」及び「】」を付した4桁のアラビア数字で「【0001】」、「【0002】」のように連続した段落番号を付す。この場合において、「【技術分野】」、「【背景技術】」、「【特許文献】」、「【非特許文献】」、「【発明の概要】」、「【発明が解決しようとする課題】」、「【課題を解決するための手段】」、「【発明の効果】」、「【図面の簡単な説明】」、「【発明を実施するための形態】」、「【実施例】」、「【産業上の利用可能性】」、「【符号の説明】」、「【受託番号】」又は「【配列表フリーテキスト】」の見出しの次に段落番号を付し、これらの見出しの前に段落番号を付してはならない。また、「【特許文献1】」、「【非特許文献1】」、「【化1】」、「【数1】」、「【表1】」、「【図1】」のような番号の次に段落番号を付してはならない

20 明細書における各記載事項は、原則として様式中の見出しの順序で記載するものとする。ただし、先行技術文献の記載については、明細書中の任意の位置とすることができる。

 


関連情報

 


(作成2020.07.16、最終更新2020.07.16)
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