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意匠登録の出願理由(なぜ意匠登録するのか、登録のメリット)【動画】

意匠登録の出願理由(なぜ意匠登録するのか、登録のメリット)について、解説動画をYouTubeに投稿しました(20分19秒)。

意匠登録(いしょうとうろく)する理由、意匠登録出願する理由、意匠登録のメリットについて、意匠登録の現場からご紹介します。

新製品のデザインや、新作のハンドメイド作品のデザインなどについて、製造販売等を独占したい場合、意匠登録する必要があります。

中小企業様や個人事業主様から様々な意匠登録相談を受ける中で分かった「なぜ意匠登録するのか」、「出願(申請)する理由は何か」、「意匠登録するメリット」について、“実際の肌感覚”でご紹介します。

2026年1月現在の情報です。

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意匠登録の出願理由(なぜ意匠登録するのか、登録のメリット)【動画】

 


(作成2026.01.01、最終更新2026.01.01)
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意匠登録の出願理由(なぜ意匠登録するのか、登録のメリット)

目次

 


はじめに

意匠(いしょう)とは、物品等のデザイン(形状、模様、色彩又はこれらの結合)をいいます。新製品のデザインや、新作のハンドメイド作品のデザインなどについて、製造販売等を独占したい場合、意匠登録する必要があります。意匠登録を受けるには、特許庁に意匠登録出願(申請)して、審査をパスしなければなりません。意匠登録出願すると、同一・類似のデザインが過去にないかや、創作容易でないかなど、所定の登録要件について審査されます。審査をパスして意匠登録を受けることで、登録意匠のみならず類似意匠についても、独占的に製造販売等することができます。他社が勝手に実施すれば、意匠権の侵害として、製造販売等の差止めや損害賠償などを請求できます。

弁理士小山は、中小企業様や個人事業主様から意匠登録の出願・申請について、様々なご相談に対応してまいりました。完全な個人事務所ですが、意匠登録の出願・申請について、年間数十件以上、ご相談いただいております。ほとんどの方は、意匠登録がはじめての方です。アンケートした訳ではありませんし、お伺いしてもおりませんが、ご相談時の雑談の中で、ご相談者様から、意匠登録する理由をお話いただくことがあります。

そこで、これまでの経験を踏まえて、「なぜ意匠登録するのか」、「出願(申請)する理由は何か」、「意匠登録するメリット」について、“実際の肌感覚”でご紹介したいと思います。以前、「意匠登録のメリット・デメリット」を投稿済ですが、今回はもう少し具体的な「意匠登録の出願理由(なぜ意匠登録するのか、登録のメリット)」のご紹介です。ここでは、基本的に、異なる相談者様から複数回お聞きした理由を中心に、ご紹介いたします。互いに重複・関連する項目もありますが、ご了承ください。

もちろん、意匠登録する理由は、会社により、人により異なります。なぜ意匠登録するのかの審査はありませんし、弊所でもお尋ねしませんから、意匠登録について、もしご興味があれば、お気軽にご相談ください。

 


意匠登録の出願理由(意匠登録する理由・メリット)

(1)他社に真似されないようにしたい。

◆新製品を発売すると、すぐに他社に真似されそうなので、意匠登録しておきたい。

以前、デザインを真似されたことがあるので、今回は、意匠登録しておきたい。

◆アマゾン(Amazon)や楽天市場(Rakuten)で販売するが、ライバルの参入を防いで販売を独占したい

◆メルカリ(Mercari)などのフリマアプリや、ベイス(BASE)などのネットショップで販売したいが、自分の作品が真似されるのは嫌だ

◆ハンドメイドの教室・ワークショップをやりたいが、受講者が勝手に商品販売までするのは認めない

◆他社に商品化を提案または製造委託したいが、デザインを盗まれないか心配なので、先に意匠登録しておきたい。

◆市販の部品を用いて誰でも簡単に作れるので、真似されないようにしたい。

◆起業に向けて準備しているが、開業後に販売する主力商品については、保護しておきたい。

【解説】意匠登録を受けることで、登録意匠と同一・類似の意匠について、製造販売等を独占することができます。他人が勝手に実施すれば、意匠権侵害として、製造販売等の差止めや損害賠償などを請求できます。

 

(2)自分が1番に考えたことを残したい。

◆自社商品を発売(自分の作品を発表)すると、すぐに他社に真似された上、(自社の会社規模からして)その他社のコピー商品の方が、自社商品よりも売れて有名になるかもしれない。そうなると、自社商品がまるで模倣品のように思われるのではないかと心配している。自社が(自分が)本家本元であることを確保したい

◆従来の市販品の欠点をなくす商品を考えた。一番に考えたのは自分だから、その証明が欲しい。

◆老い先短い。これまでの経験を、最後に形あるもので残したい

◆当面、自分で(自社で)使用して商品化する予定はないが、他社に先に出願されては困る

◆自分自身で使ってみて便利だから、今後商品化したいが、それまでに他社に先に出願されないか心配だ

◆広くいろんな人に使って欲しいし、模倣品が出ても権利行使するつもりもないが、他人が勝手に出願したり、誰のデザインか不明になるのは嫌だ

【解説】意匠登録を受けると、意匠登録公報が発行されると共に、意匠登録証が交付されます。それにより、いつ誰が創作したかを公的に残せます。いまでも、明治からの登録公報を、誰でもネットで見ることができます。

また、意匠登録されるということは、従来、同一・類似のデザインがなかったことになります。理論上、「世界になかったデザイン」ということになります。意匠登録後、意匠登録済であることの権利表示が可能ですから、自分が本家本元であることのアピールに使えます。

 

(3)他社の権利を侵害することなく安心して販売したい。

抵触する他人の意匠権がないかを確認したい。商品販売後、他人から文句を言われたくない。警告を受けたり、侵害訴訟になったりするのは、避けたい。

◆ハンドメイド作品を展示即売するイベント(ハンドメイドマルシェ、手作り市)に出展したり、あるいはSNSに投稿したりしたところ、他の作家さんから「似ている」と文句を言われた。あるいは、ある特徴を有する作品には、片っ端から侵害している旨のメッセージを送る人がいるらしい。全く似ていないと思うので、何らかの保険をかけておきたい。

【解説】意匠の登録要件の一つとして、「新規性」や「先願」があります。出願前に知られた意匠と同一・類似の意匠は、新規性がないとして、意匠登録を受けることができません。また、同一・類似の意匠について、先行する意匠登録があった場合も、意匠登録を受けることができません。

そのため、意匠登録出願の審査を受けることで、他人の意匠権との抵触も確認できます。言い換えれば、他人の権利を侵害しないかについて、自社で製造販売等する際の一つの安心材料を得ることができます。

但し、やや専門的になりますが、他人の登録意匠等との利用関係や、特許権等との抵触関係までは審査されません。そのため、意匠登録を受けても、製造販売等できない場合もあり得ます。たとえば、登録意匠の一部(部品や部分)について、他人が先に意匠登録を受けている場合などです。あるいは、意匠登録ではなく、他人が特許を有する場合などです。

しかし、このような例外はあるものの、意匠登録が一つの安心材料にはなります。また、先行登録意匠との関係では、出願の仕方を工夫することで、ある程度、リスクを低減できます。

なお、特許や商標の場合、出願して拒絶になると、その情報は公開されますが、意匠の場合、仮に拒絶になっても、原則として(一部の例外を除き)、他人に知られることはありません。そのため、たとえば、自社の出願意匠が、先行する他社の登録意匠に類似するとして拒絶されても、他社に知られることはありません。権利の抵触関係が知られず、安心です。

ちなみに、先行する他社の登録意匠(登録公報)の存在を理由に拒絶されても、直ちに自社の実施が制限される訳ではありません。拒絶の根拠となった先行意匠について、現在も権利が存続中とは限りません。登録料不納や存続期間満了などで、現在は権利が消滅している可能性もあります。また、たとえば、全体意匠と部分意匠との関係、さらには実施意匠との関係で、「権利が取れるか」と「実施できるか」は別問題として、改めて検討が必要となります。

以上は、他社が先に登録しているかの問題でしたが、意匠登録を受けると、他社が後から登録するのも防止できます。すなわち、出願し意匠登録を受けると、同一・類似範囲での他人の登録を、確実に排除できます。本来、自社が意匠登録しなくても、自社が先に商品販売等していれば、それと同一・類似の意匠については、あとから他社が出願しても、意匠登録を受けられません。しかし、実店舗での販売など、公開の日付と内容について、立証が難しい場合もあります。ところが、自社が先に意匠登録しておけば、登録公報により、いつ誰が出願したか、容易に確実に立証でき、審査でも参照してもらえます。結果として、同一・類似範囲での他人の登録を確実に排除できます。

意匠の類似の確認方法については、「意匠の類否(類似/非類似)」や「意匠の類似範囲の確認手段」をご覧ください。

 

(4)新製品を発売(あるいは新作を発表)したら評判がよいから意匠登録したい。

◆つい最近(あるいは何ヶ月か前に)新製品を発売したところ、非常に売行き(引き合い)がよい。他社が参入しないように、意匠登録しておきたい。販売代理店からも意匠登録をすすめられた。

◆SNSで作品を公開したら、バズったので意匠登録したい。

◆SNSで作品を公開したら、コメント欄から意匠登録をすすめられた

◆イベント・展示会に出品したら、評判がよかったので、意匠登録したい。

◆発売前だが試作品を試してもらったら、専門家から褒められたので、意匠登録したい。

【解説】意匠登録を受けるには、前述したとおり、「新規性」が必要です。出願前に商品販売やネット掲載されますと、原則として、もはや意匠登録を受けることはできません。ご自身のデザインであっても、出願前に公開すると、意匠登録を受けられません。しかしながら、最初の公開から1年以内なら、所定の例外申請をすることで、公開はなかったものとして、意匠登録を受けられる場合もあります。

但し、あくまでも例外ですから、本来は、デザイン公開前に出願するのが原則です。デザイン公開後に意匠登録出願をご希望の場合、それ以上の公開は控えて、お早めにご相談ください。意匠の新規性喪失の例外について、詳しくは「意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)」をご覧ください。

 

(5)自分の作品が意匠登録されるか、腕試ししたい。

◆新作のハンドメイド作品が、客観的に本当に新しいものか、創作容易と判断されないか、意匠登録審査を受けてみたい。

◆趣味で手作りしたが、知り合いに見せると評判がよいので、本当にすごいものか、意匠登録で試したい。

既存部品の組合せだが、結果として従来にないものができた。意匠登録できるか試したい。

【解説】意匠登録出願すると、「新規性」や「創作非容易性」について、審査されます。出願前に同一・類似の意匠がなかったか、容易に創作できたものでないかなどを審査されます。意匠登録されるということは、従来、同一・類似のデザインがなく、しかも創作容易でもない、ことになります。

 

(6)新製品(あるいは新作のハンドメイド作品)を安く保護したい。

特許は費用がかかり過ぎるので、意匠登録で済ませたい。

【解説】特許と比較して、意匠登録は、出願から登録までの費用が、非常に安いです。具体的には、出願から登録までの費用は、特許の場合、最低でも169,800円が必要ですが、意匠の場合、24,500円で済みます(2025年12月現在)。中小企業様や個人の方は、特許費用の減額を受けられる場合もありますが、それとの比較でも、通常、意匠登録の方が安くなります。

なお、上記各費用は、特許庁へ支払う印紙代です。多くの意匠登録出願は特許事務所の弁理士が代理してなされますが、その場合、特許事務所の手数料が別途必要です。弊所の場合、「意匠登録費用」をご覧ください。

しかし、単に安いからというだけで意匠登録を選択してはなりません。特許と意匠登録とは、守備範囲が全く異なります。特許は、技術的なアイデアを保護するのに対し、意匠登録は、商品等のデザインを保護します。デザインが異なってもよいなら(つまりデザインを変えて他社が実施してくる可能性があるなら)、まずは特許(または実用新案登録)を検討してみる必要があります。詳しくは、「特許と意匠の違い」をご覧ください。

 

(7)技術的に新しい訳ではないので特許は難しそうだが、なんとか保護したい。

◆特許出願しようと専門家に相談に行ったが、新規性がない(既に知られた技術である)、あるいは進歩性がない(先行技術と同一ではないが容易に考えられる)として、特許は難しいとの見解であった。しかし、諦めきれず、なんとか保護できないかとネットで調べてみると、意匠登録というものがあることを知った。意匠登録してみたい。

既存の部品の組合せではあるが、全く新たなデザインであるし、用途も少し異なる。意匠登録してみたい。

【解説】技術的に新しくなくても、デザインが新しければ、意匠登録を受けることができます。しかし、意匠登録を受けても、保護される範囲は、あくまでも出願し登録を受けた登録意匠と、その類似範囲に限られます。デザインを変更すれば、他社は製造販売等ができます。その点を考慮して、費用をかけてまで意匠登録すべきかの検討は必要です。そのデザインだからこそお客様に買っていただけるという場合、意匠登録は有効です。なお、技術的な改良改変部を見つけることで、特許または実用新案登録を受けることができる場合もあります。特許(または実用新案登録)と意匠登録との双方で保護することもできます。「特許と意匠の違い」もご覧ください。

 

(8)思い入れのある作品なので、意匠登録したい。

◆家族など大切な人との関係で、思い入れのある作品である。意匠登録という形で残したい。

◆家族やご近所に喜んでもらっている。意匠登録という形で残したい。

◆特定の人を念頭に、役立つものを届けたい困っている人を助けたい、あるいは仕事を創出したい

◆デザインコンテストでの受賞作品について、意匠登録したい。

卒業制作の作品、あるいは卒業論文のための試作品について、意匠登録したい。

【解説】意匠登録されるということは、従来、同一・類似のデザインがなく、しかも創作容易でもないことになります。また、意匠登録を受けると、その内容は意匠登録公報に掲載されると共に、権利者には意匠登録証が交付されます。

なお、前述のとおり、出願前にデザインを公開すると、原則として意匠登録を受けることはできなくなりますが、最初の公開から1年以内なら、例外的に意匠登録を受けられる場合もあります。詳しくは「意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)」をご覧ください。

 

(9)意匠登録済の表示でビジネスしたい。

◆アマゾン(Amazon)、楽天市場(Rakuten)、ヤフーショッピング(Yahoo!)のようなECモール、自社独自のECサイトなど、各種のショッピングサイトで販売する際、「意匠登録済」などをアピールして、他社製品と差別化したい。

【解説】意匠登録を受けると、権利者は、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品やその包装等に、「意匠登録表示」を付することができます。法律上、厳密にいえば「登録意匠第○○○○○○○号」と表示することになりますが、単に「意匠登録済」のような表示も(法律上の登録表示ではありませんが)みられます。意匠登録表示ついて詳しくは、「意匠登録表示とは」をご覧ください。

 

(10)今なら助成金(補助金)が出るので、意匠登録したい。

◆意匠登録にかかる費用を心配していたが、たまたま助成金(補助金)の案内があったので、意匠登録したい。

【解説】意匠登録についても、費用の補助を受けられる場合があるようです。詳しくは、たとえば、お住まいの市区町村や公的団体などにお問合せください。

意匠登録のメリット・デメリット」もご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2025.12.25、最終更新2025.12.30)
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意匠の「新規性」と「新規性喪失の例外」【動画】

意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)の内、意匠の「新規性」と「新規性喪失の例外」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(3分12秒)。

意匠の「新規性」と「新規性喪失の例外」についてのまとめです。意匠の登録要件として、「新規性」があります。出願前に同一又は類似のデザインが知られている場合(たとえば自ら商品販売やネット掲載等した場合)、新規性がないとして、意匠登録を受けることはできません。但し、最初の公開から1年以内でしたら、「新規性喪失の例外」として、意匠登録できることもあります。具体例で確認していきます。

2025年9月現在の情報です。

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意匠の「新規性」と「新規性喪失の例外」【動画】

 


(作成2025.09.28、最終更新2025.09.28)
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【更新】意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)

主な更新情報のご案内です。

2025年9月28日、「意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)」を更新しました。

主として、次の点について、更新しております。

  • 意匠の「新規性」と「新規性喪失の例外」(まとめ)を追記しました。
  • 図を加入して、いくつかの具体例を示しました。

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京高裁【動画】

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京高裁」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(6分9秒)。

「減速機」と「減速機付きモーター」との類否、利用関係について争われた意匠権侵害訴訟「減速機事件」の続きです。今回は、東京高裁判決についてです。

本件登録意匠に係る物品は「減速機」であるのに対し、被告製品は、減速機にモーターを連結した「減速機付きモーター」です。減速機部分とモーター部分とは、ネジで固定されています。本件登録意匠の要部は、減速機の内、モーターの取付面にあります。減速機にモーターが連結されると、登録意匠の要部が外観に現れず隠れてしまいます。このような状況下で、意匠権侵害が成立するかが争われた事件です。

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減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京高裁【動画】

 


(作成2025.09.27、最終更新2025.09.27)
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減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京地裁【動画】

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京地裁」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(5分45秒)。

意匠権侵害訴訟「減速機事件」について確認してみます。「減速機」と「減速機付きモーター」との類否、利用関係について争われた事件です。まずは、東京地裁判決についてです。

本件登録意匠に係る物品は「減速機」であるのに対し、被告製品は、減速機にモーターを連結した「減速機付きモーター」です。減速機部分とモーター部分とは、ネジで固定されています。本件登録意匠の要部は、減速機の内、モーターの取付面にあります。減速機にモーターが連結されると、登録意匠の要部が外観に現れず隠れてしまいます。このような状況下で、意匠権侵害が成立するかが争われた事件です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
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減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京地裁【動画】

 


(作成2025.09.14、最終更新2025.09.14)
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減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京高裁

目次

 


はじめに

「減速機」と「減速機付きモーター」との類否、利用関係について争われた意匠権侵害訴訟「減速機事件」の続きです。今回は、東京高裁判決についてです。東京地裁判決については、次のリンク先をご覧ください。

以下、東京高裁判決です。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。図面や写真についても、詳しくご確認いただけます。

 


減速機事件:東京高裁、平成15年(ネ)第1119号、平成15年6月30日

主文

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

 ・・・(省略)・・・

 

第2 事案の概要

  本件は、意匠に係る物品を「減速機」とする意匠登録第798521号の意匠権(本件意匠権)を有する控訴人が、被控訴人に対し、本件意匠権に基づき、被控訴人が被控訴人製品を製造販売する等の行為は本件意匠権を侵害すると主張し、それらの行為の差止め及び被控訴人製品の廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害金合計2090万円及びこれに対する不法行為の後である平成14年3月22日(本件訴状送達日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原判決は、控訴人の本訴請求をいずれも棄却したのに対し、控訴人はその取消しを求めて本件控訴を提起した。

 

  本件の争いのない事実、争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり当審における控訴人の追加的な主張の要点を付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」及び「第3 争点及び当事者の主張」に記載のとおりである。

 

 3 当審における控訴人の追加的な主張の要点

 (1) 意匠法が創作保護法であることは、以下の理由により明らかである。すなわち、・・・(省略)・・・

 (2) 原判決は、「意匠保護の根拠は、流通過程における混同防止にあると解されるから、意匠法の保護の対象となるのはあくまで物品の外観であって、外観に現れず、視覚を通じて認識することがない物品の隠れた形状は、意匠権侵害の判断に当たっては考慮することはできない」と判示した。

 しかし、上記(1)のとおり、意匠保護の根拠は創作の保護であると解すべきであり、これを前提とすると、自己の商品に他人の意匠の創作をそのまま冒用するような行為は、たとえ最終的な製品において他人の意匠が外部から認識できなくても、許容されるべきではないから、原判決の前記判断は誤りである。

 (3) また、原判決は、被控訴人製品の「減速機部分は、減速機付きモーターの一構成部分にすぎないというべきであるから、被控訴人製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできない」、「控訴人が主張するように、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」や、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目したとしても、減速機付きモーターにおいて登録意匠の要部が外観に現れなければ、意匠権侵害といえない」と判示した。

 しかし、部分意匠制度が導入されたことを考慮すると、「独立して取引される物品の意匠を保護対象とする」ことの根拠は明らかでないし、また、仮に、そのような解釈に立っても、これは「物品が独立して取引されている場合に限り保護を与える」ことと同一ではない。前記のとおり、意匠法が創作保護法であることを前提とすると、当該物品を内製さえすれば意匠の創作を冒用しても許されるというような原判決の解釈は、不当である。

 (4) 結局、被控訴人製品の意匠における本件登録意匠との類似性及び利用関係を否定した原判決の判断は失当である。

 

第3 当裁判所の判断

  争点(1)(本件登録意匠の構成態様)、同(2)(本件登録意匠の要部)及び同(3)(被控訴人製品の意匠の構成態様)についての認定判断は、原判決の「事実及び理由」の「第4 争点に対する判断」の「1」ないし「3」のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決…「2ミリメートル程度と」、及び…「が、塞板の周縁部は円弧状に90度屈曲している」を削除し、…「シンクロナスモーター」を「ステッピングモーター及びシンクロナスモーター」と改め、…「塞板の周縁部の形状、」、及び…の「2ミリメートル程度でごく」を削除し、…「フランジは、全般に平面状に形成されているが、円形に削られた中央縁部が円弧状に90度屈曲して円筒状のケーシングと連続している。」を加える。)。

 

 2 争点(4)(本件登録意匠と被控訴人製品の意匠との類否)について

 (1) 本件登録意匠に係る物品と被控訴人製品の物品とを対比すると、本件登録意匠に係る物品は、減速機であるのに対し、被控訴人製品は、減速機部分にモーター部分を連結して1個の物品とした減速機付きモーター(ギヤードモーター)であるから、両者は物品が異なるものである。

 (2) 次に、本件登録意匠と被控訴人製品全体の意匠を比較する。

 まず、基本的構成態様においては、
 本件登録意匠の構成態様が「本体は、内部に減速ギアが収納された深い鍋型の円筒状のケーシングであり、その開口した一端である出力側端に、フランジを形成し、出力側端を塞板で閉塞し、この塞板に軸受けを突設し、この軸受けから回転軸を突出させている」というものであるのに対し、
 被控訴人製品の全体の構成態様は、本件登録意匠と基本的構成態様を同じくする第1のケーシング(減速機部分)のみならず、「該第1のケーシングの他端に、その一端を連結し他端には開口部を有する円柱状の第2のケーシング(モーター部分)とからなる。」、「第2のケーシングの直径は第1のケーシングの直径と略同一であり、その長さは第1のケーシングの約2倍であって、第1のケーシングと連結していない他端の開口部は、プラスチック製の塞板で閉塞されている。」、「第1のケーシングと第2のケーシングの連結部分は、ねじによって固定されており、第1のケーシングの膨出部の存在により、僅かな間隙が形成されているが、膨出部の背面視における形状全体は外部からは認識できない」というものである点で相違している。

 また、本件登録意匠と被控訴人製品の第1のケーシングの具体的構成態様を比較すると、
 ①プロポーションについて、ケーシングの直径と長さの比は、約3:2である点、
 ②フランジについて、正面視において、中央部が円形に削られた環状の隅丸正方形であって、厚さは薄く、四隅に正円型の透孔が形成してあり、また、全般に平面状に形成されているが、円形に削られた中央縁部が円弧状に90度屈曲して円筒状のケーシングと連続している点、
 ③軸受け及び回転軸について、塞板の正面視において、上部に偏芯して設けてある点において共通する。

 しかし、他方、
 ①本件登録意匠では、塞板は、全般に平面状に形成されており、塞板の平面状部分とフランジ部の平面状部分とは同一平面上に設けられているのに対し、
 被控訴人製品の第1のケーシングでは、塞板は、全般に平面状に形成されており、その周縁部には3つの小さな取付ねじがあり、塞板の平面状部分とフランジ部の平面状部分とは同一平面上ではなくわずかな段差が設けられている点、
 ②本件登録意匠では、軸受けの軸方向の長さと、軸受けから突出した回転軸の長さほぼ同じであるのに対し、
 被控訴人製品の第1のケーシングでは、軸受けの軸方向の長さと、軸受けから突出した回転軸の長さの比が約1:2である点、
 ③本件登録意匠では、ケーシングのモーター側端の形状が、中央部をわずかに膨出させて周縁部に段部を形成しており、膨出部は、背面視において、頂部及び下部両側の3か所が膨出部分の円周に沿ってほぼそれぞれ120度の角度をおいてケーシングの外縁方向に突出した変形円輪郭であり、その中央部に膨出部の直径に比して約3分の1ほどの直径を有する比較的大径の透孔が設けてあり、頂部の突出部には縦長の透孔が、また、下部の2つの突出部にはやや縦長の透孔がそれぞれ設けてあり、その下部の2つの突出部の間に正円型の透孔が設けてあるというものであるのに対し、
 被控訴人製品の第1のケーシングでは、膨出部の背面視における形状全体は外部からは認識できないものである点
 が、それぞれ相違している。

 (3) 前記(1)認定のとおり、本件登録意匠に係る物品と被控訴人製品の物品とは、異なるものであるし、また、前記(2)認定の本件登録意匠と被控訴人製品全体の意匠の共通点と相違点によれば、両者の構成態様は、①被控訴人製品の全体の構成態様が、第1のケーシング(減速機部分)のみならず、その直径と略同一の直径であり、その長さの約2倍の長さである第2のケーシングと連結されたものである点、②被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できない点において、大きく異なっているものといわざるを得ないから、被控訴人製品中の第1のケーシングの基本的構成態様や具体的構成態様の一部が本件登録意匠のそれらと共通するものであるという前記共通点を十分参酌しても、本件登録意匠と被控訴人製品の意匠は、全体として、看者に異なる美観を与えるものというべきであり、両者が類似しているということは到底できない

 (4) これに対し、控訴人は、被控訴人製品のモーター部分と減速機部分は、ねじにより着脱可能に取り付けられ、減速機部分の膨出部の存在により取付部分に僅かな間隙が形成されているため、減速機部分は独立して認識されるものであるから、本件登録意匠との類否判断の対象となるべきものは、被控訴人製品の減速機部分である旨主張し、また、部分意匠制度が導入されたことを考慮すると、「独立して取引される物品の意匠を保護対象とする」ことの根拠は明らかでないし、さらに、仮に、そのような解釈に立っても、これは「物品が独立して取引されている場合に限り保護を与える」ことと同一ではなく、意匠法が創作保護法であることを前提とすると、当該物品を内製さえすれば意匠の創作を冒用しても許されるというような結論は不当である旨主張する。

 しかしながら、意匠の保護は、最終的には産業の発達に寄与することを目的とするものであるから(意匠法1条)、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同し、誤って物品を購入することを防止すると同時に、上記取引者等の混同を招く行為を規制することにより意匠権者の物品流通市場において保護されるべき地位を確保することにあると解すべきである。そうすると、意匠権侵害の有無の判断に際しては、流通過程に置かれた具体的な物品が対象となるものというべきである

 そして、本件においては、被控訴人が被控訴人製品を減速機部分とモーター部分とが一体のものとして製造販売していることは当事者間に争いがないし、前記のとおり、被控訴人製品の減速機部分は、ねじによりモーター部分と固定されているものであるから、結局、被控訴人製品において減速機部分は減速機付きモーターという物品の一構成部分にすぎないというべきである。したがって、被控訴人製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできない筋合いである。

 (5) また、控訴人は、意匠法は意匠の持つ「形態価値」を保護するものであり、「形態価値」を保護するためには保護されるべき意匠が物品の流通過程で見えるかどうかは問題ではなく、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」と、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目しなければならない旨主張し、また、意匠保護の根拠は創作の保護であると解すべきであり、これを前提とすると、自己の商品に他人の意匠の創作をそのまま冒用するような行為は、たとえ最終的な製品において他人の意匠が外部から認識できなくても、許容されるべきではないから、意匠権侵害の判断に当たっては、外部から認識できない物品の隠れた形状も考慮すべきである旨主張する。

 しかしながら、意匠とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいうのであるから(意匠法2条1項)、外部から視覚を通じて認識できるものであることを要するものであり、また、前記のとおり、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同することを防止することにあると解すべきであるから、結局、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができる物品の外観のみが、意匠法の保護の対象となるものであって、流通過程において外観に現れず視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は考慮することができないものというべきである(なお、控訴人主張のとおり、意匠保護の根拠が「創作」であると解したとしても、それが必ずしも意匠権侵害の判断に当たり、物品の隠れた形状をも考慮すべきであるとの見解には結びつかない筋合いである。)。

 

 3 争点(5)(被控訴人製品における意匠の利用関係)について

 控訴人は、①他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を包含すること、②他の登録意匠の特徴を破壊することなく包含すること、③他の構成要素と区別しうる態様において包含すること、という要件を満たす限り、意匠の利用関係が認められると解すべきであるところ、この観点から見ると、被控訴人製品は本件登録意匠を利用ないし包含しているといえるから、本件意匠権を侵害しているというべきである旨主張する。

 しかしながら、控訴人の主張するように、利用関係による意匠権の侵害が認められるとしても、前記認定のとおり、被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できないものであるから、被控訴人製品が本件登録意匠を利用ないし包含しているということはできない(なお、利用関係の判断においても、前記のとおり、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は、考慮することができないものというべきである。)。

 

 4 結論

 以上によれば、控訴人の被控訴人に対する本訴請求をいずれも棄却すべきものとした原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

 


関連情報

 


(作成2025.09.12、最終更新2025.09.12)
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減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:東京地裁

目次

 


はじめに

「減速機」と「減速機付きモーター」との類否、利用関係について争われた意匠権侵害訴訟「減速機事件」を確認してみます。まずは、東京地裁判決についてです。

本件登録意匠に係る物品は「減速機」であるのに対し、被告製品は、減速機にモーターを連結した「減速機付きモーター」です。減速機部分とモーター部分とは、ネジで固定されています。本件登録意匠の要部は、減速機の内、モーターの取付面にあります。減速機にモーターが連結されると、登録意匠の要部が外観に現れず隠れてしまいます。このような状況下で、意匠権侵害が成立するかが争われた事件です。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。図面や写真についても、詳しくご確認いただけます。

 


減速機事件:東京地裁、平成14年(ワ)第5556号、平成15年1月31日

主文

 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1 請求

 ・・・(省略)・・・

 

第2 事案の概要

  本件は、意匠権を有する原告が、被告に対し、被告がイ号物件及びロ号物件を製造販売する等の行為は原告の意匠権を侵害するとして、それらの行為の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求めている事案である。

 2 争いのない事実等

 (1) 原告は、次の意匠権(本件意匠権)を有している。

 意匠に係る物品   減速機
 登録番号   第798521号
 出願日    昭和61年7月22日
 登録日    平成2年7月16日
 登録意匠   意匠公報記載のとおり

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:本件登録意匠

 (2) 被告は、平成7年ころより、イ号物件を製造、販売している。イ号物件は、モーターに減速機を取り付けたものであって、その形状は別紙目録1記載のとおりであり、イ号物件から分離した減速機部分の形状は別紙目録3記載のとおりである。

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:イ号意匠

 (3) その後、被告は、平成14年ころまでに、イ号物件における減速機部分の形状を変更し、ロ号物件を製造、販売している。ロ号物件もモーターに減速機を取り付けたものであって、その形状は別紙目録2記載のとおりであり、ロ号物件から分離した減速機部分の形状は別紙目録4記載のとおりである。

減速機事件:減速機と減速機付きモーターとの類否及び利用関係:ロ号意匠

 

第3 争点及び当事者の主張

 1 本件の争点

 (1) 本件登録意匠の構成態様
 (2) 本件登録意匠の要部
 (3) 被告製品の意匠の構成態様
 (4) 本件登録意匠と被告製品の意匠との類否
 (5) 被告製品における意匠の利用関係
 (6) 損害の発生及び額

 2 当事者の主張

 ・・・(省略)・・・

 

第4 争点に対する判断

 1 争点(1)について

 本件登録意匠の構成態様は次のとおりと認められる。

 (1) 基本的構成態様

 本体は、内部に減速ギアが収納された深い鍋型の円筒状のケーシングであり、その開口した一端である出力側端に、フランジを形成し、出力側端を塞板で閉塞し、この塞板に軸受けを突設し、この軸受けから回転軸を突出させている。

 (2) 具体的構成態様

 ア プロポーション

  ケーシングの直径と長さの比は、約3:2である。

 イ フランジ

  (ア) フランジは、正面視において、中央部が円形に削られた環状の隅丸正方形であって、厚さは2ミリメートル程度と薄く、四隅に正円型の透孔が形成してある。
  (イ) フランジは、全般に平面状に形成されているが、円形に削られた中央縁部が円弧状に90度屈曲して円筒状のケーシングと連続している。

 ウ 塞板

  (ア) 塞板は、全般に平面状に形成されているが、塞板の周縁部は円弧状に90度屈曲している。
  (イ) 塞板の平面状部分とフランジ部の平面状部分とは同一平面上に設けられている。

 エ 軸受け及び回転軸

  (ア) 軸受け及び回転軸は、塞板の正面視において、上部に偏芯して設けてある。
  (イ) 軸受けの軸方向の長さと、軸受けから突出した回転軸の長さはほぼ同じである。

 オ ケーシングのモーター側端の形状

  (ア) ケーシングのモーター側端は、中央部をわずかに膨出させて周縁部に段部を形成している。
  (イ) 膨出部は、背面視において、頂部及び下部両側の3か所が膨出部分の円周に沿ってほぼそれぞれ120度の角度をおいてケーシングの外縁方向に突出した変形円輪郭であり、その中央部に膨出部の直径に比して約3分の1ほどの直径を有する比較的大径の透孔が設けてあり、頂部の突出部には縦長の透孔が、また、下部の2つの突出部にはやや縦長の透孔がそれぞれ設けてあり、その下部の2つの突出部の間に正円型の透孔が設けてある。

 

 2 争点(2)について

 (1) 本件登録意匠に関する公知意匠は、次のとおりであると認められる。

 ・・・(省略)・・・

 (2) 上記認定の事実からすると、本件登録意匠の構成態様のうち、原告が要部であると主張する、ケーシングの出力側端に略正方形のフランジを形成した点は、本件登録意匠の要部であると認めることはできないし、フランジが薄く、四隅に正円型の透孔が形成してある点も、本件登録意匠の要部であると認めることはできない。

 また、原告は、ケーシングのモーター側端の中央部に膨出部を形成した点が、本件登録意匠の要部であると主張するが、単に中央部に膨出部を形成するというのみでは、あまりに抽象的であるうえ、上記認定のとおり、変速機について、中央部に膨出部を形成したものが存し、物品が異なるものの、電動機についても、中央部に膨出部を形成したものが存在するから、この点も、これのみでは、本件登録意匠の要部であると認めることはできない。

 本件登録意匠の要部は、ケーシングのモーター側端の具体的な形状、すなわち、ケーシングのモーター側端は中央部をわずかに膨出させて周縁部に段部を形成しており、その膨出部は、背面視において、頂部及び下部両側の3か所が膨出部分の円周に沿ってそれぞれ約120度の角度をおいてケーシングの外縁方向に突出した変形円輪郭であり、その中央部に膨出部の直径の3分の1程度の直径を有する比較的大径の透孔が設けてあり、前記頂部の突出部及び下部の2つの突出部に透孔がそれぞれ設けてある構成態様にあるものというべきである。

 (3) 被告は、膨出部の背面形状のうち、膨出部に設けられた透孔の形状が要部である旨主張するが、本件登録意匠の透孔の形状は、透孔の形状としては通常あり得る形態にすぎないというべきであるから、要部とは認められない。その他、被告が主張するところの、塞板の周縁部の形状、塞板とフランジ部の位置関係、軸受けの軸方向の長さと軸受けから突出した回転軸の長さの比は、いずれも詳細に観察して初めて気づく程度の些細な特徴にすぎないから、要部とは認められない。

 

 3 争点(3)について

 被告製品の構成態様は次のとおりであると認められる。

 (1) イ号物件の構成態様

 ア 全体の構成態様

  (ア) 開口されている一端にフランジが形成されている円筒状の第1のケーシング(減速機部分)と、該第1のケーシングの他端に、その一端を連結し他端には開口部を有する円柱状の第2のケーシング(モーター部分)とからなる。

  (イ) 前記第1のケーシングは前記開口部を閉塞する円形の塞板と、この塞板に突設された軸受けと、この軸受けから突出する回転軸よりなる。

  (ウ) 第2のケーシングの直径は第1のケーシングの直径と略同一であり、その長さは第1のケーシングの約2倍であって、第1のケーシングと連結していない他端の開口部は、プラスチック製の塞板で閉塞されている。

  (エ) 第1のケーシングと第2のケーシングの連結部分は、ねじによって固定されており、第1のケーシングの膨出部の存在により、僅かな間隙が形成されているが、後記イ(イ)Ebの形状全体は外部からは認識できない

 イ 第1のケーシング(減速機部分)の構成態様

  (ア) 基本的構成態様

 本体は、内部に減速ギアが収納された深い鍋型の円筒状のケーシングであり、その開口した一端である出力側端に、フランジを形成し、ケーシングの出力側端は塞板で閉塞し、この塞板に軸受けを突設し、この軸受けから回転軸を突出させている。

  (イ) 具体的構成態様

  A プロポーション

 ケーシングの直径と長さの比は、約3:2である。

  B フランジ

 フランジは、正面視において、中央部が円形に削られた環状の隅丸正方形であって、厚さは2ミリメートル程度でごく薄く、四隅に正円型の透孔が形成してある。

  C 塞板

   a 塞板は、全般に平面状に形成されており、その周縁部には3つの小さな取付ねじがある。
   b 塞板の平面状部分とフランジ部の平面状部分とは同一平面上ではなくわずかな段差が設けられている。

  D 軸受け及び回転軸

   a 軸受け及び回転軸は、塞板の正面視において、上部に偏芯して設けてある。
   b 軸受けの軸方向の長さと、軸受けから突出した回転軸の長さの比は、約1:2である。

  E ケーシングのモーター側端の形状

   a モーター側端は、中央部をわずかに膨出されて周縁部に段部を形成している。
   b 膨出部は、背面視において、頂部及び下部両側の3か所が膨出部分の円周に沿ってほぼそれぞれ120度の角度をおいてケーシングの外縁方向に突出した変形円輪郭であり、その中央部に膨出部の直径に比して約3分の1ほどの直径を有する比較的大径の透孔が設けてあり、前記頂部の突出部には縦長の透孔が、また、下部2つの突出部には正円型の透孔がそれぞれ設けてあり、前記下部の2つの突出部の間にその突出部の透孔と略同径の正円型の透孔が設けてある。

 (2) ロ号物件の構成態様

 ア 後記(イ)のモーター側端にある膨出部の形状の点を除き、前記ア記載のイ号物件の構成態様と同一である。

 イ モーター側端にある膨出部の形状

  (ア) 膨出部は、背面視において、頂部及び下部両側の3か所が膨出部分の円周に沿ってほぼそれぞれ120度の角度をおいてケーシングの外縁方向に突出した変形円輪郭であり、その中央部に膨出部の直径に比して約3分の1ほどの直径を有する比較的大径の透孔が設けてあり、
  (イ) 前記3つの突出部にそれぞれ正円型の透孔が設けてある。

 

 4 争点(4)(5)について

 (1) 本件登録意匠に係る物品と被告製品の物品とを対比すると、本件登録意匠に係る物品は減速機であるのに対し、被告製品は、減速機部分にモーター部分を連結して一個の物品となした減速機付きモーター(ギヤードモーター)であるから、両者は物品が異なり、被告製品の意匠は本件登録意匠と同一又は類似であるということはできない

 また、原告が主張するように、利用関係による意匠権の侵害が認められるとしても、前記認定に係る本件登録意匠の要部は、前記3認定の事実からすると、被告製品の意匠においては、外部から認識できないから、このような場合には、利用関係が存すると認めることはできず、したがって、利用関係による意匠権の侵害も認められない

 (2) この点、原告は、本件登録意匠との類否判断の対象となるべき製品は、被告製品の減速機部分であると主張するが、前記認定のとおり、減速機部分は、ねじでモーター部分と固定されており、減速機部分は減速機付きモーターの一構成部分にすぎないというべきであるから、被告製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできないというべきである(もっとも、利用関係の判断に当たっては、減速機部分のみを類否判断の対象にすることがあり得るが、利用関係も成立しないことは前述のとおりである。)。

 また、原告は、意匠法は意匠の持つ「形態価値」を保護するものであり、「形態価値」を保護するためには保護されるべき意匠が物品の流通過程で見えるかどうかは問題ではなく、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」と、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目しなければならないと主張するが、意匠法において意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいい(意匠法2条1項)、また、意匠保護の根拠は、流通過程における混同防止にあると解されるから、意匠法の保護の対象となるのはあくまで物品の外観であって、外観に現れず、視覚を通じて認識することがない物品の隠れた形状は、意匠権侵害の判断に当たっては考慮することはできないというべきであり、この点は、利用関係の判断に当たっても変わらないというべきである。原告が主張するように、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」や、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目したとしても、減速機付きモーターにおいて登録意匠の要部が外観に現れなければ、意匠権侵害といえないことは、前述のとおりであって、これらに注目したところで結論が変わるものではない。

 

  以上のとおり、本件意匠権侵害の事実が認められないから、本訴請求は理由がない。よって、主文のとおり判決する。

 


関連情報

 


(作成2025.09.12、最終更新2025.09.12)
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意匠の類似範囲の確認手段【動画】

意匠の類似範囲の確認手段」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(10分53秒)。

意匠の類否(類似か非類似か)を確認する「手段」について、検討してみます。

意匠の出願審査や権利範囲の解釈で、「意匠が類似するか否か」の問題が生じます。意匠の類否について、第三者による客観的で信頼性のある結論が欲しい場合があります。どのような手段があるのか、通常の意匠登録出願、関連意匠の意匠登録出願、特許庁の判定、弁護士等の鑑定、意匠権侵害訴訟による裁判所での決着などをご紹介します。弁理士の専門である特許庁手続については、メリット、デメリットについても検討します。

たとえば、以下のような場合を想定しています。

  • (1)自社が保有する意匠権について、他社商品が意匠権侵害でないか確かめたい。
     >たとえば、アマゾンで自社商品と似た商品が販売されている。この他社商品が、自社の意匠権を侵害するものか確かめたい。
  • (2)他社が保有する意匠権について、自社商品が意匠権侵害でないか確かめたい。
     >たとえば、アマゾンで気になる他社商品を見つけたが、意匠登録しているらしい。これから発売予定の自社商品は、他社の意匠権を侵害しないか確かめたい。
  • (3)自社が保有する意匠権について、自社商品が権利範囲に含まれるか確かめたい。
     >たとえば、旧型商品について意匠登録しているが、デザイン変更後の新型商品も保護されているのか確かめたい。

2025年8月現在の情報であり、弊所の見解です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


意匠の類似範囲の確認手段【動画】

 


(作成2025.08.22、最終更新2025.08.24)
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意匠の類似範囲の確認手段

目次

(1)自社が保有する意匠権について、他社商品が意匠権侵害でないか確かめたい。
 >たとえば、アマゾンで自社商品と似た商品が販売されている。この他社商品が、自社の意匠権を侵害するものか確かめたい。
(2)他社が保有する意匠権について、自社商品が意匠権侵害でないか確かめたい。
 >たとえば、アマゾンで気になる他社商品を見つけたが、意匠登録しているらしい。これから発売予定の自社商品は、他社の意匠権を侵害しないか確かめたい。
(3)自社が保有する意匠権について、自社商品が権利範囲に含まれるか確かめたい。
 >たとえば、旧型商品について意匠登録しているが、デザイン変更後の新型商品も保護されているのか確かめたい。

 


はじめに

意匠登録出願しても、公知意匠と同一又は類似の意匠については、意匠登録を受けることができません(意匠の新規性)。

意匠登録を受けると、意匠権者は、登録意匠及びこれに類似する意匠について、独占的に実施(製造販売等)することができます。登録意匠と同一・類似範囲での他人の実施や登録を排除できます。

このように、意匠の出願審査や権利範囲の解釈で、『意匠が類似するか否か』の問題が生じます。意匠の類否判断の“方法”については、「意匠の類否(類似/非類似)」でご紹介のとおりです。

しかし、それでもなお、第三者による客観的で信頼性のある結論が欲しい場合があります。ここでは、意匠の類否判断の“手段”、言い換えれば、意匠の“類似範囲の確認手段”、について検討してみます。

できるだけ客観的に検討したつもりですが、あくまでも弊所の見解です。

 


通常の意匠登録出願で類似か否かを確認

たとえば、アマゾン(Amazon)のようなECモールで、気になる他社商品を見つけたとします。その商品販売ページには、「意匠登録済」との表示がありました。これから販売予定の自社商品は、この他社の登録意匠と似ていないと思うけども、本当に非類似なのか、確かめておきたい場合もあると思います。

そのような場合、自社商品について意匠登録出願し、審査をパスするか、つまり他社の登録意匠と類似でないか、を確かめることが考えられます。自社商品が他社の登録意匠と類似なら出願は拒絶され、非類似なら(他に拒絶理由がなければ)登録になります。

意匠の類似範囲の確認手段1:自社商品の意匠Bが、他社の登録意匠A及びこれに類似する意匠の範囲に属するか

留意すべき点は、「意匠登録いろいろ(こんな実例が・・)」でご紹介のとおり、完成品と部品の利用関係など、審査をパスしたからといって、必ずしも安全に実施できるとは限らない点です。しかし、出願の仕方を工夫することで、その点のリスクを低減することはできます。意匠登録することで、一つの安心材料を得られます。

なお、意匠登録出願の場合、出願意匠が他社の登録意匠に類似するとして拒絶されても、その情報は原則として公開されません。出願の事実さえ、第三者には知られません。そのため、意匠登録出願により、比較的安全に手軽に類似範囲を確認することができます。

 


関連意匠の意匠登録出願で類似か否かを確認

たとえば、自社商品について、既に意匠登録出願し、意匠登録を受けているとします。今般、自社商品のデザインを少し変更しました。大幅なデザイン変更ではないので、新型デザインも、旧型デザインの意匠権で保護されていると期待します。意匠権は、登録意匠のみならず類似範囲まで及びますから、新型デザインも類似範囲に含まれていると期待します。しかし、本当に類似なのか、確かめておきたい場合もあると思います。

そのような場合、登録済の意匠を「本意匠」とし、変更後の意匠を「関連意匠」として意匠登録出願します。関連意匠として登録されたなら、両者は類似します。一方、両者が非類似の場合、関連意匠としては登録されないですが、通常の登録要件を満たせば、通常の意匠登録がなされます。その場合、出願は無駄にはなりません。

意匠の類似範囲の確認手段2:自社商品の意匠Bが、自社の登録意匠A及びこれに類似する意匠の範囲に属するか

 

また、関連意匠を登録することで、類似範囲の確認だけでなく、類似範囲の拡張を図ることもできます。つまり、関連意匠の類似範囲には「本意匠には類似しないが関連意匠には類似する範囲」として、「関連意匠にのみ類似する範囲」ができますから、本意匠だけを登録した場合と比較して、権利範囲を拡げることができます。

関連意匠登録による類似範囲の確認と拡張

なお、商品自体は同じでも、パッケージが変更になる場合もあります。パッケージについても意匠登録を受けている場合、パッケージの変更についても、関連意匠により、同様に、類似範囲の確認と拡張ができます。

関連意匠について、詳しくは「関連意匠制度とは?」をご覧ください。

 


特許庁の判定で類似か否かを確認

登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、特許庁に判定を求めることができます。結論に法的拘束力はありませんが、意匠の専門官庁である特許庁による公的な見解を得ることができます。比較的短期間に結論を得られる上、学識経験者等による鑑定と比較して安価と思われます。

たとえば、自社が権利者で、他社商品が権利侵害と考える場合、つまり「他社商品の意匠が自社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」と考える場合に利用できます。

意匠の類似範囲の確認手段3:他社商品の意匠Bが、自社の登録意匠A及びこれに類似する意匠の範囲に属するか

また逆に、他社が権利者で、自社商品が権利侵害と疑われているがそうとは思えない場合、つまり「自社商品の意匠が他社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない」と考える場合に利用できます。

意匠の類似範囲の確認手段1:自社商品の意匠Bが、他社の登録意匠A及びこれに類似する意匠の範囲に属するか

その他、自社が権利者で、自社商品が権利範囲に含まれるか確認する場合、つまり「自社商品の意匠が自社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」と考える場合などにも利用できます。

意匠の類似範囲の確認手段2:自社商品の意匠Bが、自社の登録意匠A及びこれに類似する意匠の範囲に属するか

なお、案件により、特許庁を介してですが、相手方(他社)とのやり取りが必要となります。また、内容・結果は、公報に掲載され公開されます。この点がデメリットになるかもしれません。

特許庁の判定について、具体例は、「シャープペンシル付きボールペンの意匠判定事件」をご覧ください。

 


学識経験者等による鑑定で類似か否かを確認

学識経験者、弁護士、弁理士などに、鑑定・見解を求めることも考えられます。

第三者に知られず、専門家の判断を得られます。

 


裁判所で類似か否かを確認

侵害訴訟を提起して、類似か否か、裁判所で決着を付けることができます。

権利侵害を疑われている側が、先に、差止請求権不存在確認の訴えなどをすることもできます。

なお、判決に至らず、和解によって終了することもあります。

その他、仲裁や調停など、裁判外紛争解決手続もあります。

 


関連情報

 


(作成2025.08.21、最終更新2025.08.24)
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