各種投稿

ポパイ事件(ネクタイ・最高裁):著作権侵害訴訟【動画】

ポパイ事件(ネクタイ・最高裁):著作権侵害訴訟」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(13分45秒)。

これまで、ポパイアンダーシャツ事件と、ポパイマフラー事件とを順にみてきました。これらは、商標権の侵害訴訟でした。著作権者の許諾商品への、商標権の権利行使の話でした。

今回のポパイネクタイ事件では、これまでとは逆に、著作権者側が商標権者側を、著作権侵害で訴えた事件です。ポパイネクタイ事件の最高裁判決を確認してみます。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


ポパイ事件(ネクタイ・最高裁):著作権侵害訴訟【動画】

 


(作成2025.01.11、最終更新2025.01.11)
Copyright©2025 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:遊技機用表示灯事件【動画】

意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:遊技機用表示灯事件」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(7分17秒)。

遊技機用表示灯事件における意匠の類否判断手法(部分意匠)を確認してみます。つまり、対比する両意匠が類似するか否かについて、結論に至るまでの流れの骨格を確認してみます。詳しくは、遊技機用表示灯事件をご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:遊技機用表示灯事件【動画】

 


(作成2024.12.28、最終更新2024.12.28)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

遊技機用表示灯事件(部分意匠の類否判断基準、創作性を考慮した権利行使可否と類否判断)【動画】

遊技機用表示灯事件(部分意匠の類否判断基準、創作性を考慮した権利行使可否と類否判断)」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(19分27秒)。

部分意匠の類否判断基準を示した「遊技機用表示灯事件」を確認してみます。部分意匠の類否判断に先立ち、本件意匠部分の登録が創作容易なため無効にされるべきか(本件意匠権に基づく権利行使が認められないか)についても判断しています(意匠法41条、特許法104条の3)。また、類否判断では、公知意匠の存否だけでなく、公知意匠に基づく創作性も考慮しています。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


遊技機用表示灯事件(部分意匠の類否判断基準、創作性を考慮した権利行使可否と類否判断)【動画】

 


(作成2024.12.21、最終更新2024.12.21)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

包装用容器事件:S字模様の向きと本数、星形と鋸歯円

円筒体の周側面に模様が付された包装用容器(包装用缶)について、意匠の類否と創作非容易性が争われた「包装用容器事件」を確認してみます。

「2本の逆S字状模様と、星形模様」が表された本件意匠について、「1本のS字状模様と、周縁が鋸歯状の小円模様」が表された引用意匠との間での類否と、創作の容易性とが争われた事件です。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。

 


東京高裁、昭和63年(行ケ)第129号、平成1年3月14日

包装用容器事件:S字模様の向きと本数、星形と鋸歯円

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実

第一 当事者の求めた裁判

一 原告

「特許庁が昭和58年審判第18326号事件について昭和63年2月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二 被告

主文同旨の判決

 

第二 請求の原因

一 特許庁における手続の経緯

被告は、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙に示すとおりのものとした登録第566407号意匠(本件意匠)の意匠権者である。

原告は、被告を被請求人として、特許庁に対し本件意匠の登録無効審判を請求し、昭和58年審判第18326号事件として審理された結果、「本件審判の請求は、成り立たない」との審決があり、その謄本は原告に送達された。

 

二 審決の理由の要点

 1 本件意匠の意匠に係る物品、構成及び出願、登録関係は前項記載のとおりである。

 

 2 本件意匠の基本的構成態様は、容体を直径対高さの比率を略1対2とした円筒状に形成し、上面に、中央にリング状の引抜環を設けた落とし蓋を嵌入したものとし、左右両側面に同じ模様、すなわち、ほぼ中央付近で最も接近し、上下端に向かってやや離れる、等幅で逆S字状の曲線模様各二本を容体の高さ一杯に、また、下端寄りの右側の曲線側近に星形模様各一個をそれぞれ表したものである。

次に、具体的構成態様は、容体の地色を赤色、曲線模様、星形模様を白色、落とし蓋を乳白色とし、さらに、星形模様については、その内部に両眼及び口様のものを赤色で、外側に放射線状の細線四本を白色で、それぞれ表したものである。

 

 3 これに対し、引用意匠は、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙に示すとおりにしたものと認める。

その形態の基本的構成態様は、容体を直径対高さの比率を略1対2.7とした円筒状に形成し、上面を馬蹄形状の引抜環を設けた蓋で密封したものとし、左右両側面に同じ模様、すなわち、上方寄り3分の1付近で最も細く、上下端へ向って幅が漸増(ぜんぞう)するゆるやかなS字状の曲線模様各一本を容体の高さ一杯に、また、左側面の曲線の上方寄り右側近に周縁を鋸歯状にした小円模様一個をそれぞれ表したものである。

次に、具体的構成態様は、容体の地色を赤褐色、曲線模様、小円模様を白色、蓋を銀色にそれぞれ表したものである。

 

 4 本件意匠と引用意匠との対比

両意匠を比較するに、両者はまず、容体を細長い円筒状に形成し、地色を赤を基調とした色調にした点でやや共通点が認められる。しかしながら、これらの共通点は、包装用容器、就中(なかんずく)、包装用缶などにおいては、従来よりごく普通にみられるところであって、特に本件意匠と引用意匠との間にのみ認められる共通点ということはできない。

これに反し、両意匠の間には、

まず曲線模様において、本件意匠が、二本の等幅、逆S字状の曲線模様をほぼ中央付近で最も接近し、上下端に向かってやや離れる態様で左右側面に表しているのに対し、引用意匠は、一本の、上方寄り3分の1が最も細く、上下端に向かって幅が漸増するゆるやかなS字状の曲線模様を左右両側面に表している点、

及び両者の曲線模様の側近に、本件意匠は、内部に両眼及び口様のものを表し、外側に放射状の細線四本を伴った星形模様二個を表しているのに対し、引用意匠は、周縁を鋸歯状にした小円模様一個を表している点に顕著な差異が認められ、

さらに、蓋についても、本件意匠が中央にリング状の引抜環を設けた落とし蓋としているのに対し、引用意匠は、馬蹄形状の引抜環を設け密閉状の蓋としている点にも差異が認められる。

そして、両意匠のように、ごく普通の単純な円筒状の包装容器においては、その表面に表された各種の模様の態様に意匠の要部が存するのは明らかであり、その要部において前記のごとき顕著な差異点が認められる両意匠は、全体として観察した場合、到底類似しているものと認めることはできない。

また、本件意匠は、二本の逆S字状模様及び星形模様等の形状及び態様等に形態全体のまとまりを形成する上で意匠の創作があったというほかなく、請求人の主張するごとく、引用意匠に基づいて当業者が容易に創作することができたものであると認めることはできない。

 

 5 以上のとおりであるから、請求人(原告)の提出した証拠及び主張をもっては、本件意匠が、意匠法第3条第1項第3号の規定、同法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとして、その登録を無効とすることはできない。

 

三 審決の取消事由

引用意匠の構成態様が審決の理由の要点3記載のとおりであることは認める。

しかしながら、審決は、本件意匠と引用意匠を対比判断するに当たり、本件意匠の形態の要旨の認定を誤り、ひいて、両意匠は類似しているとは認められず、また、本件意匠は引用意匠に基づいて当業者が容易に創作することができたものであると認めることはできない、と誤って判断したものであるから、違法であり、取り消されるべきである。

 1 類否判断の誤り

 ・・・省略・・・

 2 創作の容易性における判断の誤り

 ・・・省略・・・

 

第三 請求の原因に対する認否及び被告の主張

 請求の原因一及び二の事実は認める。

 同三は争う。審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

 1 類否判断の主張について

 ・・・省略・・・

 2 創作の容易性について

 ・・・省略・・・

 

第四 証拠関係

 ・・・省略・・・

 

理由

 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当時者間に争いがない。

 

 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

 1(一) 本件意匠は、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙に示すとおりにしたものであり、

その基本的構成態様は、容体を直径対高さの比を略1対2とした円筒状に形成し、上面に、中央にリング状の引抜環を設けた落とし蓋を嵌入したものとし、左右両側面には、容体の高さ一杯に、二本の等幅でやや幅太な逆S字状の曲線がほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かってやや離れる態様の模様を表し、また、左右両側面下端寄りの右側の曲線側近に星形模様を各一個を表したものであり、

その具体的構成態様は、円筒体側面の地色を赤色、曲線模様を白色、上面落とし蓋を乳白色とし、星形模様は白色とし、その内部に両眼及び口様のものを赤色で、外側に放射状の細い直線四本を白色で表したものであることが認められる。

 

 (二) 一方、引用意匠が、意匠に係る物品を「包装用容器」とし、意匠に係る形態を別紙に示すとおりとしたものであり、その構成態様が次のとおりであることは当事者間に争いがない。

引用意匠の基本的構成態様は、容体を直径対高さの比率を略1対2.7とした円筒状に形成し、上面を馬蹄形状の引抜環を設けた蓋で密閉したものとし、左右両側面に同じ模様、すなわち、上寄り3分の1附近で最も細く、上下端に向かって幅が漸増する緩やかなS字状の曲線模様各一本を容体の高さ一杯に、また、左側面の曲線の上方寄り右側近に周縁を鋸歯状にした小円模様一個をそれぞれ表したものであり、

具体的構成態様は、容体の地色を赤褐色、曲線模様、小円模様を白色、蓋を銀色にそれぞれ表したものである。

 

 (三) 以上の事実によれば、本件意匠及び引用意匠は共に、意匠に係る物品を包装用容器とし、その容体を細長い円筒状に形成したものであるところ、このような容器自体の形状はごく普通にみられるものであるから、看者が強く注意を惹かれる意匠の要部は、その側面に表された模様の態様、すなわち、本件意匠にあっては「二本の逆S字状の曲線模様、星形模様」にあり、引用意匠においてもその側面に表された「一本のS字状模様と小円模様」にあると認められる。

 

 2 原告は、本件意匠の基本的構成態様として、赤色のリボン状の模様が存在すると主張する。

しかしながら、前記1(一)で認定したとおり、本件意匠の容体側面部の地色は赤色であり、これに対し二本の等幅の逆S字状の曲線模様の色彩は白色で、しかも右二本の曲線はやや幅太に表されているのであるから、看者が本件意匠から看取する模様は、ほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かってやや離れる、等幅で逆S字状の曲線模様であると認められ、右曲線に挟まれた地色と同色の赤色部分がリボン状の模様として看取されるとは認めることができない

してみると、本件意匠には赤色のリボン状の模様が存在し、この点を看過したまま引用意匠との類似性を否定した審決は誤りであるとする原告の主張は理由がない。

 

また、原告は、本件意匠の星形模様は意匠の要部ではなく、その態様及び配置個所が引用意匠の小円模様と同様であることからすると、右星形模様は、むしろ、本件意匠と引用意匠を類似のものとする要素であると主張する。

しかしながら、前記1(一)で認定したとおり、本件意匠の星形模様は、その内部に両眼及び口様のものを赤色で、外側に放射状の細線四本を白色で表したものであって、単純な星形模様とは異なる特異なものであり、しかも本件意匠の側面に表された模様は右星形模様と前記逆S字状の曲線模様しかないことからすると、右星形模様は意匠を構成する模様としての比重の高い、看者にとって注意を喚起される創作性のある図形であると認められるから、右星形模様は意匠の要部というべきである。そして、その模様は、前記1(二)で認定したとおりの周縁を鋸歯状にした小円型の引用意匠の模様とは明らかに異なるものであると認められるから、これが本件意匠と引用意匠を類似するものとする要素であるとは到底いい得ない。

したがって、本件意匠の星形模様に意匠の要部が存するとして、引用意匠の小円模様との間に顕著な差異があるとした審決の認定、判断に誤りは認められない。

 

 3 創作の容易性について

前記認定のとおり、本件意匠の要部たる模様の態様は、容体左右両側面に二本の等幅でやや幅太な逆S字状の曲線でほぼ中央附近で最も接近し、上下端に向かってやや離れる態様の模様を表し、また、左右両側面下端寄りの右側の曲線側近に、内部に両眼及び口様のものを、外部に放射状の四本の細い直線を配した星形模様各一個を表しているものだけであり、原告の主張するリボン状の模様なるものは存在しない。そして、右「二本の逆S字状曲線模様」は前記1(二)で認定した引用意匠のS字状の曲線模様が、一本の曲線で、上寄り3分の1が最も細く、上下端へ向かって幅が漸増する緩やかなS字状であることからすれば、その形状を全く異にする模様であると認められる。

また、本件意匠の星形模様についても、引用意匠の周縁を鋸歯状にした小円模様から星を連想することが容易であるとは認められない上、前記2で認定したとおり、本件意匠の星形模様は単純な星形模様とは異なる態様を示していることからすれば、本件意匠における「二本の逆S字状の曲線模様」や「星形模様」は引用意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができたものとは認められないものである。

したがって、本件意匠にリボン状の模様が存在することを前提として、本件意匠は創作容易であったとする原告の主張は採用できず、この点に関する審決の認定、判断に誤りはない。

 

 4 以上のとおり、本件意匠と引用意匠との類否判断及び創作の容易性についての審決の認定、判断は正当であって、審決に原告主張の違法はない。

 

 よって、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間の附与につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条、第158条第2項を適用して、主文のとおり判決する。

 


関連情報

 


(作成2024.12.19、最終更新2024.12.19)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:増幅器付スピーカー事件【動画】

意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:増幅器付スピーカー事件」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(6分53秒)。

増幅器付スピーカー事件における意匠の類否判断手法を確認してみます。つまり、対比する両意匠が類似するか否かについて、結論に至るまでの流れの骨格を確認してみます。詳しくは、増幅器付スピーカー事件をご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:増幅器付スピーカー事件【動画】

 


(作成2024.12.14、最終更新2024.12.14)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

増幅器付スピーカー事件:意匠の類否判断(美感の共通、意匠の要部、多機能物品)【動画】

増幅器付スピーカー事件:意匠の類否判断(美感の共通、意匠の要部、多機能物品)」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(21分21秒)。

多機能物品である「増幅器付スピーカー」と「増幅器」との類否について争われた「増幅器付スピーカー事件」を確認してみます。侵害を疑われている側が起こした、意匠権侵害差止請求権不存在確認の訴えです。そのため、通常の侵害訴訟とは逆に、被告が意匠権者となっています。原告製品意匠は本件登録意匠に類似するとして、原告の請求が棄却されておりますから、権利者勝訴の判決です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


増幅器付スピーカー事件:意匠の類否判断(美感の共通、意匠の要部、多機能物品)【動画】

 


(作成2024.12.07、最終更新2024.12.07)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

タンブラー事件:共通点が差異点を埋没させ共通の印象・美感をもたらす力

意匠登録出願の拒絶審決取消訴訟である「タンブラー事件」を確認してみます。

この事件では、次のような判断が示されました。

  • 本願意匠が引用意匠と類似するか否かは、「当業者を基準として創作性の観点から比較」するのではなく、「一般需要者を基準として美感の類否の観点から比較」して判断する。
  • 共通点が、差異点を埋没させてしまうほどに強力な共通の印象(美感)をもたらす力を有するものでない限り、両意匠は全体として異なった印象(美感)をもたらすものというべきである。
  • それ自体極めてありふれた構成比率のもの同士であっても、構成比率が大きく異なれば、見る者に与える印象(美感)が異なることはあり得る。ありふれたものからはありふれた印象(美感)しか生じないとしても、ありふれた印象(美感)が皆同じとは限らない。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。

 


東京高裁、平成12年(行ケ)第503号、平成13年4月12日

タンブラー事件:共通点が差異点を埋没させ共通の印象・美感をもたらす力

主文

特許庁が平成10年審判第8672号事件について平成12年8月14日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

主文と同旨

2 被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

 

第2 当事者間に争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯

原告は、アメリカ合衆国においてした出願に基づく優先権を主張して、意匠に係る物品を「タンブラー」とし、その形態を別紙のとおりとする意匠登録出願(本願意匠)をしたが、拒絶査定を受けたので、これに対する不服審判を請求した。特許庁は、これを審理した結果、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、原告にその謄本を送達した。

2 審決の理由の要点

審決の理由は、要するに、本願意匠は、別紙のコップの意匠(引用意匠)に類似するので、意匠法3条1項3号に該当し、意匠登録を受けることができない、とするものである。

 

第3 原告主張の審決取消理由の要点

・・・省略・・・

 

第4 被告の反論の要点

・・・省略・・・

 

第5 当裁判所の判断

1 当裁判所は、本願意匠は、引用意匠と類似せず、意匠法3条1項3号に該当しないと解するのが相当であり、両意匠の類似性を認めて本願意匠の登録を拒絶した審決は、少なくともその限りにおいて意匠の類否判断を誤ったものとして、取り消されるべきであると考える。その理由は、次のとおりである。

(1) 次の点について、当事者間に争いがない。

  • 本願意匠の形態が、別紙に示すとおりのものであること。
  • 引用意匠の形態が、別紙に示すとおりのものであること。
  • 両意匠は、外周面を凸弧面と凹弧面を交互に水平状に複数段形成して、上方に向かって斜状に拡開する縦長の逆円錐台状の有底の態様である点で、形態が共通するものであること。

 

(2) 本願意匠と引用意匠とを比較すると、少なくとも以下の各点で、形態が相違していることが認められる。

 (ア) 本願意匠は、底面の直径と高さの比が約1対2であるのに対し、引用意匠のそれは、約1対3である。

 (イ) 本願意匠は、底面から上面までを略同一傾斜面状としているのに対し、引用意匠は、下方約4分の1を略垂直状に形成し、その上方を略傾斜面状としている。

 (ウ) 本願意匠は、開口部が最も広がっているのに対し、引用意匠は、開口部が最上部に形成された凸弧面よりもすぼまっている

 (エ) 本願意匠の凸弧面の形状はゆるやかで、側壁の傾斜面に沿って、わずかに外側にふくらんでいるにすぎない。これに対し、引用意匠の凸弧面の形状ははっきりと外側にふくらんでおり、側壁の傾斜面から明らかに突出している

 

(3) 引用意匠は、本願意匠に比べ、上記(ア)ないし(ウ)の差異点により、全体に縦長の印象を明瞭に与え、かつ、これに(エ)の差異点が加わることにより、一種奇抜な印象を与えるものとなっているということができる。

被告は、原告の主張する差異点は、いずれも、特徴という程度には至らないありふれた態様に係るもので、差異としては極めて微弱なものというべきであり、前記(1)の共通点、特に「凸弧面と凹弧面を交互に水平状に複数段形成したという外周面の特徴」から生ずる共通の印象を超えるような異なった印象はそこから生じない旨主張する。

しかしながら、当業者を基準として創作容易性の観点から比較する場合においてはともかく、一般需要者を基準としてそれぞれの与える意匠的効果としての印象(美感)の類否の観点から両意匠を比較する場合においては、上記差異点、特に(ア)ないし(ウ)の差異点から生ずる印象(美感)の差異は、一般的には、決して小さなものではなく、共通点が、この差異を埋没させてしまうほどに強力な共通の印象(美感)をもたらす力を有するものでない限り、両意匠は全体として異なった印象(美感)をもたらすものというべきである。

被告は、上記差異点(ア)につき、両意匠ともそれ自体極めてありふれた構成比率のものであり、意匠としては、その差異を格別評価するまでには至らない、と主張するが、たといそれ自体極めてありふれた構成比率のもの同士であっても、構成比率が大きく異なれば、見る者に与える印象(美感)が異なることは十分あり得ることである。ありふれたものからはありふれた印象(美感)しか生じないとしても、ありふれた印象(美感)は皆同じであって、その間に差異はない、ということにはならないのである。

ところが、被告の強調する共通点である凸弧面と凹弧面を交互に水平状に複数段形成したという外周面の特徴が、当業者を基準として創作性の観点から比較する場合ではなく、一般需要者を基準として美感の類否の観点から比較する場合に、被告の主張するように強力な力を有すると認めさせる資料は、本件全証拠を検討しても見いだすことができず、その他、両意匠の前記共通点が上記力を有することは、本件全証拠を検討しても認めることはできない。

以上のとおりであるから、本願意匠は、当業者を基準として創作容易性の観点からみて登録に値しないものとする評価が許されるか否かはともかく(なお、本願意匠を大づかみにした場合の形態(基本的形態)は、コップなどのものとして、古くから日本国内において広く知られた形状の一つであることは、当裁判所に顕著である。)、意匠法3条1項3号の下で、一般需要者を基準として意匠の与える美感の観点から登録性を判断するに当たり、引用意匠との関係で、登録を拒否すべき類似の範囲に含まれるものとすることはできないというべきである。

被告の主張は、採用することができない。

 

2 以上述べたところによれば、本願意匠が引用意匠と類似し意匠法3条1項3号に該当するとした審決は、違法なものとして取り消されるべきである。

 

第6 よって、審決を取り消すこととし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

 


関連情報

 


(作成2024.12.03、最終更新2024.12.03)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

ポパイ事件(マフラー・最高裁):商標権侵害訴訟【動画】

ポパイ事件(マフラー・最高裁):商標権侵害訴訟」について、解説動画をYouTubeに投稿しました(9分32秒)。

ポパイ・マフラー事件の最高裁判決を確認してみます。

高裁判決では、「POPEYE」のワンポイントマークである乙標章は、商標としての機能を備えて使用されていて、かつ本件商標に類似しており、しかも、「POPEYE」の名称自体に著作物性がなく、著作物の複製とはいえないことを理由に、「ポパイ」漫画の著作権者の許諾を得た商品の販売者に対しても、商標権の権利行使を認めました。

最高裁は、このような権利行使が「権利の濫用」に当たるか否かについて、判断を示しました。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


ポパイ事件(マフラー・最高裁):商標権侵害訴訟【動画】

 


(作成2024.11.30、最終更新2024.11.30)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

包装用缶事件:包装・パッケージ業界の常識を考慮した意匠類否判断

容量に応じたサイズ変更、色違いもある包装用容器(包装用缶)について、意匠の類否が争われた「包装用缶事件」を確認してみます。

「包装(パッケージ)業界の常識」を考慮した類否判断がなされました。

また、文字が意匠の構成要素となるかについても判断が示されました。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。

 


東京高裁、平成元年(行ケ)第129号、平成2年3月7日

包装用缶事件:包装・パッケージ業界の常識を考慮した意匠類否判断

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実

第一 当事者の求めた裁判

 原告は、「特許庁が、同庁昭和60年審判第18421号事件について、平成元年4月14日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。

 被告は、主文同旨の判決を求めた。

 

第二 請求の原因

一 特許庁における手続の経緯

原告は、意匠に係る物品を「包装用かん」とする別紙記載の意匠(本願意匠)につき、類似意匠登録出願をしたが、拒絶査定を受けたので、これに対し審判の請求をした。特許庁は、これを審理した上、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は原告に送達された。

 

二 本件審決の理由の要点

 1 本願の意匠は、類似意匠登録出願したものであって、意匠に係る物品を「包装用かん」とし、意匠に係る形態を図面等によって表したものであり、その全体としての構成態様を別紙に示すとおりにしたものと認める。

 2 原審において拒絶の理由とした引用意匠は、意匠に係る物品を「包装用かん」とし、意匠に係る形態を写真版等で表したものであり、その全体としての構成態様を別紙に示すとおりにしたものと認める。

 3 両意匠を比較するに、意匠に係る形態について、両者は、(a)全体を細長円筒状とし、上下端周縁を玉縁状とした点、(b)上下端周縁以外の容体全体を暗調子とし、その容体の上端から下端までの間に、ほぼ波形をした曲線状の模様複数本を明調子で表した点等、各部の基本的形状及びそれらによって構成された全体の基本的構成態様がほぼ一致しているものと認められる。更に全体の具体的構成態様についても、次の点につき差異が認められるのみであって、その余の点につきほぼ一致しているものと認められる。

 4 即ち、両意匠は各部の具体的構成態様のうち、曲線状の模様につき、本願意匠は、上端の幅を最も太くし、下方へ向かって波形を描きつつ次第に細くなり、下端の玉縁直上では先端を尖らした態様のものとしているのに対し、引用意匠は、上端の幅を太くし、下方へ向かって波形を描きつつ次第に細くなり、ほぼ中央付近で最小幅となった後、再び下方へ向かって次第に太くなり、下端の玉縁直上では上端とほぼ同じ太さの幅とした態様のものとしている点に差異が認められる。

 5 以上の一致点、差異点を総合して両意匠を全体として考察するに、前記差異点は、両者の具体的構成態様のうちのごく一部分における差異と認められるものである。

 6 即ち、曲線状の模様の差異は、たとえ本願意匠が前記のように形成しているとしても、上下端の玉縁間の容体の高さ一杯に、ゆるやかな曲線で構成された波形の模様を、縦に、明調子で表したという点では酷似するものであり、かつ、この点が両意匠の要部と認められる。したがって、この両者に共通する特徴からみれば最小幅の部位の若干の差異は微差といわざるをえず、前記の要部における一致点を凌駕して看者に別異感を与えるまでには未だ到っていないから、全体の具体的構成態様を著しく変更したと認められるほどの差異ということはできない。

 7 以上のとおり、本願意匠は引用意匠と前記の点につき差異が認められるものであるが、その余において前記のとおり一致点が認められるものであり、全体として引用の意匠に類似するものと認められる。

 8 したがって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に規定する意匠に該当するものであるから、意匠登録を受けることができない。

 

三 本件審決を取り消すべき事由

 ・・・省略・・・

 

第三 請求の原因に対する認否及び主張

 ・・・省略・・・

 

第四 証拠関係

 ・・・省略・・・

 

理由

 請求の原因一、二の事実は当事者間に争いがない。

 そこで、原告主張の本件審決を取り消すべき事由について判断する。

 1 本願意匠と引用意匠の各構成が本件審決認定のとおりであることは原告の認めるところであり、両意匠を対比すると、本件審決認定のとおり請求の原因二4(曲線状の模様の差異)に示される差異があることも原告の認めるところである。そして、両意匠には、原告の主張する次の差異があることが一応認められる。

  • 【直径と高さの割合の相違】全体の缶の形状が、本願意匠では縦長で、直径と高さの割合が約1対2.32であるのに対し、引用意匠では幅広で、直径と高さの割合が約1対1.92である。
  • 【色彩の相違】本願意匠は地色が明るい青色であって、これに白の図形を配したものであるのに対し、引用意匠は地色と図形の色に特徴はない。
  • 【文字の有無の相違】本願意匠には文字はないのに対し、引用意匠は図案化された英文字が模様となって意匠を構成している。

 原告は、本件審決が右の点を相違点として摘示しなかったことをもって、相違点の看過誤認がある旨主張するので更に判断する。

 

 (一)【直径と高さの割合の相違】について

直径と高さの割合の相違が主として缶の容量差に起因するものであり、しかもほぼ同じ態様のもののシリーズとして段階的に品揃えすることが包装(パッケージ)業界の常識であることは、原告の明らかに争わないところである。

そうすると、本件における両意匠の直径と高さの割合の相違は、両意匠の意匠に係る物品がいずれも包装用缶であることを考慮すると、右の相違は、両意匠の類否判断の要素として採り上げるに足りないものというべきである。

したがって、本件審決が右の点を相違点として適示しなかったことをもって、類否の判断に影響を及ぼすべき相違点の看過誤認があるということはできない。

 

 (二)【色彩の相違】について

成立に争いのない証拠によれば、ケース販売者及び製造者は何種類かの色替わりのもの及び容量に応じたサイズのケースを用意していることが認められる。右事実によれば、色替わりのもの及び大小のケースが用意されていることは、パッケージ業界において常識とされていると認めることができる。そして、そのような場合においては、色彩そのものに意匠の類否判断の対象となるほどの創作性は、認められないものといわなければならない。

そうすると、無限ともいえる色彩の中からどのような色彩を組み合わせるかという点に創作の余地があるとしても、前示のとおり包装用缶を意匠に係る物品とする本願意匠においては、色彩の相違は、類否判断の要素として採り上げるに足りないものというべきである。

したがって、本件審決が色彩の相違を両意匠の相違点として摘示しなかったことをもって、類否の判断に影響を及ぼすべき相違点の看過誤認があるということはできない。

 

 (三)【文字の有無の相違】について

意匠法2条1項の規定によれば、「意匠」とは、物品の形状模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起させるものをいうとされていることは明らかである。したがって、意匠中に文字が存在する場合、その文字が模様と認められる場合を除き、文字は意匠の構成要素と認めることができないものである。

そこで、引用意匠についてみるに、引用意匠中に認められるCoca-Colaの文字及びCOKEの文字は、前者はかなり図案化されていることは認められるけれども、両文字とも、コカコーラ及びコークと十分読みとることができ、未だ模様に変化したとは認めることができない

したがって、引用意匠中の文字部分は、意匠の類否判断の要素として採り上げるべきでないものというべきであるので、本件審決が文字の有無について相違点として適示しなかったことをもって、相違点の看過誤認があるということはできない。

 

 2 次に、原告は、本願意匠における白図形は波形であるのに対し、引用意匠の白図形はリボン形であるとし、その相違点を本件審決は看過誤認している旨主張する。

本願意匠と引用意匠との間に、本件審決認定のとおり相違点(請求の原因二4)があることは、原告の認めるところである。そして、原告が引用意匠についてリボン形であると主張する点は、審決の相違点認定のうちの、引用意匠の曲線状の模様を指しているものと認められる。

そうすると、原告がリボン形と主張する点は、同じ模様について、本件審決とは異なる言葉を用いて表現しているにすぎないといわざるをえない。

したがって、本件審決には、原告指摘の点に相違点の看過誤認はない。

 

 3 更に、原告は、本願意匠と引用意匠とは看者に与える美的感覚が全く異なっており、両者は非類似の意匠であると主張する。

本願意匠と引用意匠との間には本件審決認定のとおりの一致点(請求の原因二3)が存在することが認められる。そして、両意匠の間に本件審決認定のとおりの相違点が存在することは前記1のとおりであり、その他にも、相違点が存在することも前記1のとおりである。

そこで、右一致点及び相違点を総合して、両意匠を全体として考察すると、本件審決が相違点として取り上げた具体的構成態様のうちの曲線状の模様の差異は、上下端の玉縁間の容体の高さ一杯に、ゆるやかな曲線で構成された波形の模様を縦に明調子で表した点で両意匠とも酷似するものであって、この点が両意匠について看者の最も注意をひくところと認められるのであって、両意匠は美感を共通にするといわなければならない。

両意匠の「右波形模様の最小幅部分の位置が異なる点」、「直径と高さの割合の相違点」及び「色彩の相違点」等、原告指摘の相違点は、未だ、両意匠の右共通点を凌駕して看者に別異の印象を与えるとは認めることができない。

 

 4 以上のとおりであるから、本願意匠が全体として引用意匠に類似するものとした本件審決の判断は正当であり、本件審決には原告主張の点にこれを取り消すべき違法はない。

 

 よって、その主張の点に判断を誤った違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

 


関連情報

 


(作成2024.11.29、最終更新2024.11.29)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.

意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:遊技機用表示灯事件

はじめに

遊技機用表示灯事件における意匠の類否判断手法を確認してみます。つまり、対比する両意匠が類似するか否かについて、結論に至るまでの流れの骨格を確認してみます。詳しくは、遊技機用表示灯事件をご確認ください。

なお、(裁判所ではなく)特許庁の意匠審査基準に基づく類否判断については、「意匠の類否判断(意匠審査基準の読解)」をご覧ください。

 


本件意匠部分と被告意匠部分の類否判断

本件意匠部分は、意匠に係る物品を***とし、その形態は、別紙意匠目録の実線で表された部分意匠である。

(1)意匠に係る物品について

本件意匠部分に係る物品は***であり、・・・との用途及び機能を備えるものである。

一方、被告製品は、・・・であるが、・・・との用途及び機能を有することに違いはなく、本件意匠部分に係る物品と類似することは明らかである。

 

(2)本件意匠部分の構成態様

本件意匠部分の構成態様は、以下のとおりである。

 【A】 ・・・である。
 【B】 ・・・である。
 【C】 ・・・である。
 【D】 ・・・である。
 【E】 ・・・である。
 【F】 ・・・である。

 

(3)本件意匠部分の要部

登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。そのため、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して、需要者の注意を惹き付ける部分を要部と把握した上で、両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し、全体としての美感を共通にするか否かを判断すべきであり、これは部分意匠においても異なるものではない

そして、本件意匠部分に係る物品である***は、・・・によって購入されるものであるから、意匠の類否判断における「需要者」(意匠法24条2項)は、・・・である。

以下、かかる需要者の観点から、本件意匠部分の要部について検討する。

 

ア 意匠に係る物品の性質、用途、使用態様など

本件意匠部分に係る物品である***は、・・・するものであるが、本件意匠部分は、構成態様【A】,【C】であることにより、・・・面からもその表示を視認しやすい点に特徴があるといえる。

また、使用時に最も注意を払う箇所において、構成態様【E】であることにより、通常とは違った美感をもたらしている。

これらに比べ、構成態様【B】,【F】は、格別特徴のある形態ではないし、また、構成態様【D】も、使用時に格別注意を惹き付ける箇所とは言い難い

したがって、本件意匠部分に係る物品の需要者である事業主は、顧客が注意を払う箇所も念頭に、構成態様【A】,【C】と、構成態様【E】に最も注意を惹かれるものと認められる。

 

イ 公知意匠

構成態様【A】~【E】は、本件意匠部分の登録出願前に公然知られていた形態であるか、当業者にとってありふれた手法で若干変更したものにとどまる。

しかし、構成態様【A】,【C】と構成態様【E】を組み合わせた形態は、本件意匠部分の登録出願前の公知意匠ではないし、また、公然知られた意匠に基づき、容易に創作することができたものでもない。

 

ウ 本件意匠部分の要部の認定

以上の事情に照らせば、本件意匠部分のうち、構成態様【A】,【C】は、公然知られていた形態をありふれた手法で若干変更したにとどまるものであるから、この部分のみをもって、本件意匠部分の要部とすることはできないし、また、構成態様【E】についても、同様にこれのみを要部とすることはできないが、これら各構成態様を組み合わせた態様については、本件意匠部分の要部と認めることができる。

 

(4)被告意匠部分の構成

別紙イ号物件写真の被告製品において、被告意匠部分の構成は、以下のとおりである。

 【a】 ・・・である。
 【b】 ・・・である。
 【c】 ・・・である。
 【d】 ・・・である。
 【e】 ・・・である。
 【f】 ・・・である。

 

(5)類否

ア 共通点

本件意匠部分と被告意匠部分は、・・・の点で共通する。

 

イ 差異点

本件意匠部分は、・・・であるのに対し、被告意匠部分では・・・である。

 

ウ 類否判断

 (ア) 以上を踏まえて検討するに、本件意匠部分と被告意匠部分は、前記(3)で認定の要部において、その態様を共通とするものである。すなわち、両意匠部分は、いずれも、・・・である点を共通にしている。

 この点、・・・に若干の違いはあるものの、その程度は微少で、美感を異ならせるような差異ではなく、かえって、この程度の違いしかないことは、両意匠部分の類似性を根拠付けるものといえる。そして、要部でこそないものの、・・・が同じであることも、両意匠部分の美感の共通性を補強するものである。

 (イ) 一方、被告意匠部分は、・・・であり、本件意匠部分との差異がある。しかし、要部に係る差異ではない上、その範囲及び差異の程度からしても、上記共通点に埋没する程度の違いでしかなく、美感を異にさせるようなものではない

 (ウ) また、本件意匠部分は、部分意匠であるため、類否判断に当たっては、その形態のみでなく、部分意匠に係る部分の物品全体における位置、大きさ及び範囲も参酌すべきと解されるが、本件意匠部分及び被告意匠部分は、いずれも・・・部分の意匠である点で共通している以上、本件意匠部分が…を占めるのに対し、被告意匠部分が…を占めているという違いは、部分意匠としての美感を異にさせるほどのものではない

 (エ) したがって、本件意匠部分と被告意匠部分は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感が共通しているといえ、類似するものと認められる。

 


関連情報

 


(作成2024.11.26、最終更新2024.11.26)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.