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意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリット【動画】

意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリットについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(10分15秒)。

意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリットについて考えてみます。特許事務所を介さずに、「自分で(自社で)出願する場合との違い」についてです。

意匠登録がはじめての方を対象に、お客様の立場から見たメリットを、できるだけ客観的に検討したつもりですが、あくまでも弊所の見解です。お客様により、あるいは事務所により、異なる意見があるかもしれません。

2024年7月現在の情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリット【動画】

 


(作成2024.07.13、最終更新2024.07.13)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリット

はじめに

意匠(いしょう)」とは、物品、建築物、画像の美的な外観・デザインをいいます。意匠は、目で見てすぐ分かるため、非常に模倣されやすいです。意匠の保護を図るには、特許庁に意匠登録出願し、審査をパスして、意匠登録する必要があります。

多くの意匠登録は、特許事務所(弁理士)の代理によりなされます。つまり、特許事務所の弁理士は、お客様に代わって、特許庁に意匠登録出願し、拒絶理由通知(登録しない旨の通知)がくればそれに対応し、意匠登録のお手伝いをします。

意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリットについて考えてみます。特許事務所を介さずに、「自分で(自社で)出願する場合との違い」についてです。

意匠登録がはじめての方を対象に、お客様の立場から見たメリットを、できるだけ客観的に検討したつもりですが、あくまでも弊所の見解です。お客様により、あるいは事務所により、異なる意見があるかもしれません。

逆に、意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するデメリットは、おそらく「費用」だと思います。「特許庁費用(印紙代)」は、自分で出願しても必要ですが、特許事務所に依頼すると、さらに「代理人費用(特許事務所の手数料)」が必要となります。

費用対効果、つまり「代理人費用」と「下記メリット」とを比較して、特許事務所に依頼するか否か、ご検討ください。

なお、代理人費用は、事務所により異なります。小山特許事務所の場合、意匠登録費用のページをご覧ください。

 


意匠登録を特許事務所(弁理士)に依頼するメリット

以下、互いに関連する項目もあります。下線部は、特に重要と思われるものです。

なお、意匠登録、全体意匠、部分意匠、関連意匠などについては、「意匠登録とは・意匠権の取り方」や「意匠登録の例・種類」をご覧ください。

 

意匠登録について相談できます。

  • 新製品のデザインをどのように保護(出願)するか、相談できます。
  • 意匠登録の対象か、出願の必要性について、相談できます。
  • 全体意匠とするか(どの部分の)部分意匠とするか、相談できます。
  • 関連意匠とするか、どのような内容の関連意匠とするか、相談できます。
  • 図面で出願するか写真で出願するか、相談できます。
  • 出願から登録までの流れについて、把握できます。
  • 出願から登録までの費用について、把握できます。
  • 意匠登録か、特許・実用新案登録か、相談できます。商標法、著作権法、不正競争防止法などが関連する場合もあります。
  • 既に販売後の権利取得(新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続)について、相談できます。
  • 先行登録調査を依頼できます。
    (a) 先行の登録意匠としてどのようなものがあるのか、競合他社はどのような出願をしているのか、調査を依頼できます。キーワードだけの調査では不十分です。
    (b) 但し、実際の審査では、国内の登録意匠だけでなく、海外の登録意匠も調査されます。また、国内外の雑誌、カタログ、パンフレット、ウェブサイトなどに掲載のものも、先行意匠となります。
  • 公知意匠、他社意匠、自己の登録意匠などとの関係について、相談できます。
  • 商品販売等によるデザイン公開の時期、自己の先行出願の出願日、登録公報発行の時期などとの関係での、完成品意匠、部品意匠、部分意匠、関連意匠の各出願のタイミング・出願順序について、助言を受けることができます。
  • 外国出願を取扱いの事務所なら、海外での権利取得についても相談できます。国内の特許事務所を介して外国出願されるなら、最初から特許事務所へご依頼された方が、処理が円滑に進みます。

 

出願手続をお任せできます。

  • 意匠制度(法律)、出願様式(書式)、特許庁の審査基準やガイドライン等をよく知らなくても、手間なく不安なく迅速に出願できます。
    (a) 最新の法令、書式、運用を調べる必要がありません。
    (b) 自分で(自社で)出願後、万一、方式不備があると、その解消手続が面倒です。
    (c) 出願日を基準に審査されるため、一日でも早く出願する必要があります。
    (d) 出願内容によっては、意図しない権利範囲となっている可能性もあります。
  • 六面図などの図面の準備に不安があっても、安心して出願できます。
    (a) 六面図・断面図・端面図の作成、部分意匠の特定、可動部の特定、透明部の特定、必要図と参考図の扱いなど、意匠実務・意匠図面に慣れていなくても、安心して出願できます。
    (b) 出願後の図面の修正や追加は、非常に困難です。意匠が明確でない場合、出願しても拒絶されます。再出願するにしても、印紙代が余分にかかりますし、既に商品販売等をしていると、それを理由に拒絶されます。そのため、最初から万全を期さねばなりません。
    (c) 各図の画像ファイルについて、その形式、大きさ、願書への添付方法など、詳しく知らなくても、出願できます。
  • 出願ソフトの準備、更新、操作の必要がありません。
  • 電子証明書の取得や更新の必要がありません。
  • 紙で出願する場合の書留郵便代や電子化手数料が要りません。
  • 文章や図面での説明不足を防止できます。
    自社製品の場合、自分は使用目的や使用方法等をよく知るため、文章や図面での説明が足りず、出願内容が不明確になるおそれがあります。また、たとえば、図面中の円形部が、丸穴なのか、模様なのか、不明な場合もあります。しかし、弁理士に依頼すれば、弁理士自身が(お客様にご質問するなどして)その物品がどのようなものか知ろうとするため、適正な出願書類に仕上がります。つまり、弁理士を介することで、第三者の立場から、客観的に出願書類を作成できます。

 

出願後の各種手続も、お任せできます。

  • 拒絶理由通知がきても、その対応をお任せできます。
    (a) 審査の結果、たとえば、同一・類似の先行意匠が発見されたり、容易に創作できると判断されたりした場合には、拒絶理由通知(登録しない旨の通知)がなされます。所定期間内に、適切に対応する必要があります。
    (b) 弁理士に依頼すれば絶対に登録になるという訳ではありませんが、法律知識や実務経験の違いにより、通常、お客様ご自身が対応されるよりも、登録の可能性を高めることができます。
  • 登録査定後の登録料の納付を、お任せできます。
  • 登録後の年金管理を、お任せできます。
  • 審査において、先行する他社の登録意匠が見つかるかもしれません。また、登録後、他社製品との関係が問題になるかもしれません。そのような場合でも、まずは弁理士に相談できます。
  • 登録後、デザイン変更があった場合に、その対応について相談できます。
  • 出願・登録後のその他の手続(たとえば住所変更や権利者変更など)も相談・依頼できます。
  • 同一案件、あるいは別件について、知財の相談先を確保できます。

 


小山特許事務所による意匠登録

自分で(自社で)図面や写真を用意できるが、安心して出願したい場合

  • 図面または写真を用意すると、安く出願できます。どのような図面や写真が必要か、改善点などは相談できます。弁理士小山が、必要な図のご案内、必要な図が揃っているかのチェック、審査に耐える図か否かのチェック、六面図の各図間の整合性チェック(図の向きや縮尺の確認・修正)、特許庁出願形式への変換、願書の作成などを行います。
  • 図の向きや縮尺調整など、難しければ、弁理士小山にお任せできます。追加費用はかかりません。図面出願に追加する参考写真、写真出願に追加する断面図なども、依頼できます。弁理士小山との共同作業で、手軽に安心して、安価に出願できます。
  • 出願用の図面や写真の用意が難しくても、弁理士小山自身が図面作成等できる場合、安く出願できます。
  • 拒絶理由通知対応費用が無料のため、諦めずに反論できます。つまり、出願後に思わぬ拒絶理由通知がきて、審査官の認定に納得できないけれど、反論に費用がかかるなら諦める、ということがなくなります。
  • 初回相談料無料のため、気軽に安心して相談できます。
  • 成功報酬不要のため、トータルでも安くなります。
  • 費用は、意匠登録費用をご覧ください(Bコース)。

 

自分で(自社で)図面や写真を用意できないが、現物はある場合

  • 現物があれば、写真で出願できます。プロカメラマンの協力のもと、スタジオ撮影いたします。ぜひ他と比べてみてください。物品や周囲がぼやっとしていたり、陰・影があったり、全体的に暗くて不鮮明であったり、何か写り込んだりしていませんか。また、正面図に平面(上面)や側面が写り込んだり、側面図に平面が写り込んだりしていませんか。それは六面図ではありません。以前よりも図面要件は緩和されていますが、意匠の明確性は確保する必要があります。写真は審査対象となり権利範囲を定めるものですから、出願時から万全を期さなければなりません。弊所なら、意匠写真の例のように安心の内容で出願できます。
  • 価格優先の場合、弁理士小山自身が図面作成等できる場合、安く出願できます。一度ご相談ください。
  • 費用は、意匠登録費用をご覧ください(Aコース、Cコース)。

 


意匠登録のご相談

意匠登録に関するご相談・ご依頼は、お問合せのページからお気軽にご連絡ください。

図面、写真または現物があれば、日本全国どこからでも、リモートで相談・依頼できます。ウェブ会議システムには、弊所からEメールで招待状をお送りしますので、そのメールに記載のリンクをクリックするだけでご参加いただけます。画面操作は、すべて弊所で行いますので、はじめてでもご安心ください。

ご相談時にご用意いただく図面や写真は、出願用である必要はありません。物品の内容(構造や使用方法など)が分かれば結構です。

全件、弁理士小山が直接に担当いたします。顔の知った信頼関係を築くことで、納得&安心の登録を目指します。

初回相談料は無料です。費用がかかる場合、事前に申し上げます。

なお、公的機関での無料相談との違いは、「公的機関の無料相談との違いは?」をご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2024.07.11、最終更新2024.07.11)
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レコードプレーヤー用ターンテーブル事件:部品の意匠登録

モーターのない「レコードプレーヤー用ターンテーブル」が、一物品の意匠か、工業用利用することができる意匠かが争われた「レコードプレーヤー用ターンテーブル事件(拒絶審決取消訴訟、東京高裁)」を確認してみます。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。

 


レコードプレーヤー用ターンテーブル事件:東京高裁、昭和52年(行ケ)第121号、昭和53年7月26日

レコードプレーヤー用ターンテーブル事件:部品の意匠登録

主文

特許庁が昭和51年審判第3213号事件についてした審決を取消す。訴訟費用は、被告の負担とする。

 

事実

第一 当事者の求めた裁判

原告(出願人)は、主文同旨の判決を求めた。

被告(特許庁)は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。

 

第二 請求の原因

一 特許庁における手続の経緯

原告は、「レコードプレーヤー用ターンテーブル」について、意匠登録出願をしたが、拒絶査定を受けたので、審判を請求したところ、特許庁は、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。

 

二 審決の理由の要点

本願意匠のターンテーブルは、モーターが装着されて初めて完成品と目されるものであり、モーターなくしては、回転速度の切り換えや速度の微調整、押釦による操作等が機能しえぬものと認められ、

また、仮りに互換性のある部分品としての使用を考えてみても、添付図面代用写真及び図面(断面図)に示されたままのものでは、回転軸とモーターとの連結はもちろん、その他の操作機構とモーターとの連結さえも可能なものとは認め難く、部品としての取り付けも想像し難いものであり、

所詮ターンテーブル、ターンテーブル用シート及び操作部付フレーム等から成る未完成品であり、一意匠全体を表わす一物品の出願とは認められない。

したがって、本願意匠は、意匠法第3条第1項本文の工業上利用することができる意匠に該当しないとして、登録を拒絶すべきである。

 

三 審決の取消事由

・・・(省略)・・・

 

第三 被告の答弁

・・・(省略)・・・

 

第四 証拠関係

・・・(省略)・・・

 

理由

原告主張の審決の取消事由の存否について考察する。

(一)本願ターンテーブルは、外周のターンテーブルフレームと、その上部内側に挿着された狭義のターンテーブルと、当該ターンテーブルの中心にあるセンタースピンドルとから成るものであり、モーターはない

そして、本願ターンテーブルが(従来のベルトドライブ方式ではなく)ダイレクトドライブ方式と呼ばれるものであるとの原告主張事実は、被告において明らかに争わないから自白したものとみなされる。

原告は、本願ターンテーブルにあっては、モーターと不可分の関係にあるセンタースピンドルが図示されているところから、モーターが装着されているのと同一に解することができると主張する。

しかしながら、モーター付きの物品の意匠であるためには、モーター部分が外観に表われる限りにおいて、その外観が意匠の要素となる。すなわち、モーター自体が外観に表われればモーター自体が意匠の要素となり、モーターキャビネット等が外観に表われモーター自体は外観に表われないときは、モーターキャビネット等が意匠の要素となり、モーター自体は意匠の要素とはならない。

本願ターンテーブルにあっては、その外部(おそらくは底面)にモーター部分が装備されるものであり、その内部にモーターが包蔵されるものではない。したがって、モーター部分の外観を採り上げていない本願意匠をもって、モーターが装備されている物品の意匠と同一に解することはできず、原告の主張は採用の限りでない。

 

(二)そこで、モーターが装備されていない本願ターンテーブルが、意匠法第7条にいう「物品の区分」に該当するとして、すなわち意匠法上の一物品として、意匠の対象となりうるかどうかについて考察する。

およそ部品が意匠法上の一物品といいうるためには、(a)互換性を有すること、(b)通常の状態で独立して取引の対象となること、が必要である。

 

そして、電気蓄音機ないしその部品の意匠の登録例において、モーターの装備の有無がどのように取扱われているかを検討してみると、次のとおりである。

 (1)モーターの装備されているもの
  (イ)本願意匠の出願の出願に係るもの(登録第…号、・・・省略・・・)
  (ロ)本願意匠の出願の出願に係るもの(登録第…号、・・・省略・・・)
 (2)モーターの装備されていないもの
  (イ)本願意匠の出願の出願に係るもの(登録第…号、・・・省略・・・)
  (ロ)本願意匠の出願の出願に係るもの(登録第…号、・・・省略・・・)

 

各登録例のうち、(2)(ロ)のターンテーブルは、意匠法第7条、意匠法施行規則第5条別表第1の「物品の区分」に掲げられている蓄音器用回転盤、すなわち狭義のターンテーブル(回転盤そのもの)であり、もともと意匠法上、一物品として取扱われているものであり、本願ターンテーブルとは別種の物品である。

 

そこで、(2)(ロ)の物品を除いて、その余の登録例を通観するに、本願意匠の出願の前後にわたり、同じような物品について、あるいはモーターを装備したものを一物品として取扱い、あるいはモーターを装備しないものを一物品として取扱っていることが認められる。

すなわち、モーターを装備しない(2)(イ)のものも、互換性を有し、通常の状態で独立して取引の対象となるものとして、取扱われているものということができる。(2)(イ)のものは、本願意匠の出願前の出願に係るものであり、「意匠に係る物品」の名称こそ異なり種々であるが、いずれも回転盤、操作パネル及びモーターのセンタースピンドルから成るものであり、その点においては本願ターンテーブルと同じである。そして、モーターの装備の有無が、当該物品の互換性、独立取引の対象性に及ぼす影響に関して、(2)(イ)の物品のようなベルトドライブ方式のものと本願ターンテーブルのようなダイレクトドライブ方式のものとの間で異別に解しなければならない特別の事情も認められない

したがって、前記の各登録例によれば、モーターの装備されていない本願ターンテーブルも、本願意匠の出願時において、互換性を有し、通常の状態で独立して取引の対象となりうるものであつたことを推認することができ、意匠法上の一物品として意匠の対象となりうるものと解するのが相当である。

 

(三)被告は、回転盤のみを指す狭義のターンテーブルを除き、ターンテーブルと呼ばれるものは、回転盤、操作パネル及びモーターによって構成されるものであり、また、このようなものを「フォノモーター」と称する場合もある旨主張する。しかしながら、甲第8号証の10の登録意匠は、モーターのないターンテーブルに係るものであるから、モーターを装備していないターンテーブルというもののあることもうかがわれるし、また、モーターのないターンテーブルをも意匠法上の一物品と認めるべきかどうかは、各事例にかかわりなく、独自に決すべきことであり、前記(二)の判断を左右するに足りるものではない。

 

(四)以上のとおりであって、本願意匠をもって、意匠法上、一物品の意匠とは認められず、意匠法第3条第1項本文の工業上利用することができる意匠に該当しないとして、その登録を拒絶すべきものとした審決の判断は誤りであつて、審決は違法として取消されるべきである。

 


関連情報

 


(作成2024.07.09、最終更新2024.07.09)
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手提袋事件:「形状だけの意匠」とは何か、「模様・色彩付き意匠」との利用関係【動画】

手提袋事件:「形状だけの意匠」とは何か、「模様・色彩付き意匠」との利用関係について、解説動画をYouTubeに投稿しました(8分57秒)。

「形状だけの意匠(形状のみの意匠)」とは何か、「形状だけの意匠」と「模様や色彩付きの意匠」との利用関係について示した「手提袋事件(意匠権の専用実施権の侵害差止め仮処分事件、千葉地裁)」を確認してみます。

「形状だけの意匠」に他人の意匠権がある場合に、これに模様や色彩を付すと、別意匠(非類似意匠)となることがあるか、別意匠なら権利者でなくても実施できるのか、実施するとどうなるのか、についてです。

2024年6月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


手提袋事件:「形状だけの意匠」とは何か、「模様・色彩付き意匠」との利用関係【動画】

 


(作成2024.06.30、最終更新2024.06.30)
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手提袋事件:「形状だけの意匠」とは何か、「模様・色彩付き意匠」との利用関係

はじめに

「形状だけの意匠(形状のみの意匠)」とは何か、「形状だけの意匠」と「模様や色彩付きの意匠」との利用関係について示した「手提袋事件(意匠権の専用実施権の侵害差止め仮処分事件、千葉地裁)」を確認してみます。

「形状だけの意匠」に他人の意匠権がある場合に、これに模様や色彩を付すと、別意匠(非類似意匠)となることがあるか、別意匠なら権利者でなくても実施できるのか、実施するとどうなるのか、についてです。

この事件では、意匠権の専用実施権に基づく「製造販売の差止め」の仮処分申請が認められております。

以下、青字は、債務者側(権利者から侵害を問われている側)の主張や鑑定内容、赤字は裁判所の判断(債権者・権利者側に有利な判断)となっています。なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から全文をご確認ください。

意匠の利用関係については、「机事件(意匠権侵害訴訟):意匠の利用関係」もご覧ください。

 


手提袋事件:千葉地裁、昭和52年(ヨ)第253号、昭和55年1月28日

手提袋事件:形状だけの意匠、利用関係

用紙地色と形状輪郭線との明度差に限定されるか

本件登録意匠群(本意匠及び類似意匠)は、手提袋の形状に関する意匠である。

一般に、物品の形状だけの意匠を出願する場合においても、意匠法施行規則によれば、「用紙は、トレーシングペーパー、…を用いる。図面は、…、黒色インキ…で鮮明に描くものとする。」旨定められているから、図面のうえで形状の輪郭とその余の部分に白黒の明度差のトーンが出るのは自明のことである。

たとえば、…シャツの形状に関する意匠の出願では、黒い線で胸のポケットの形状が描かれる。しかし、このような場合、T鑑定の考え方に従えば、生地が淡い一色で、それとは対照的な強い色調のポケットの縫い目がなければならないことになろうが、かように限定する必要も、また合理的理由も見い出し難い

本件登録意匠群についても同様であって、T鑑定のように、地色は極めて淡い一色で、地色とファスナーや縫い目の線図模様との明度差は極めて大きく、ほとんど白黒に近い程度の差があるなどと解すべき合理的根拠を見い出すことはできない

本件登録意匠群は手提袋の形状だけの意匠と解するのが相当である。

 


形状だけの意匠と余白の部分

T鑑定によれば、本件登録意匠群のファスナーや縫い目を形状と見ることもできる、しかし、かような形状だけの意匠において余白の部分は無模様かつ一色と解すべきである、としている。

しかし、一般に、形状だけの意匠の出願の際、出願者は余白の部分を無模様かつ一色と限定する積極的意思を有しないのがむしろ通常であろうし、また、模様、色彩と切り離された形状だけの意匠が存在しうることは意匠法2条1項の規定の文理上明らかである。

また、もしT鑑定の考え方に従えば、後述のとおり、ある形状だけの意匠登録が存在する場合に、これと同一の形状の物品であっても、それに目立つ模様が付されており、同物品の製造過程において、その模様が形状よりも先に出来るものでさえあれば、同物品の製造販売は右意匠権を侵害しないということに帰するから、かような意匠権者としては、その権利の保護をうけるために一々数限りなく存在しうる模様や色彩を限定して出願しなければならないこととなって、甚だ不合理である。

してみれば、形状だけの意匠において余白の部分は、模様、色彩の限定はないと解するのが相当である。

 


意匠の類否と利用関係

T鑑定は、形状だけの登録意匠と、これと同ーの形状であるが目立つ模様の付された意匠とは、別意匠と取扱うのが、古くからの特許庁の確立した取扱である、としているが、これと右の解釈とは何ら抵触するものではない

即ち、形状だけの登録意匠は、形状についての創作思想を開示するにとどまり、模様や色彩については何らふれるところがないから、後に新規な模様を創作した者は、たとえ右の登録意匠と形状が同一であっても、別意匠として出願することができ、また、これに対応して、右の模様に新規性ないし創作性が認められれば、別個の意匠権を付与されて然るべきだからである。

しかし、かような後願の意匠が登録されうることと、先願意匠との利用関係の有無は別個の問題である。かような場合にも、後願意匠権と先願意匠権の調整の問題が残り、そのような場合のためにこそ意匠法26条の規定が存在するからである。

 


利用関係について

本件登録意匠群の形状と、債務者製品の形状とは、類似する。一方、債務者製品に多種多様な模様、色彩が施されていることは、明らかである。

ところで、意匠法26条の規定の趣旨は、単に先願意匠権と後願意匠権との調整の場合に限らず、先願意匠権と未登録の意匠の調整の場にも及ぼされるものと解される。

同条にいう「利用」とは、後願の登録(未登録)意匠を実施すれば、他人の先願の登録意匠もしくはこれに類似する意匠を全部実施することとなるが、逆に先願登録意匠もしくはこれに類似する意匠を実施しても後願登録(未登録)意匠の全部実施とはならない関係を指すと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、債務者製品の製造は本件登録意匠群(の形状)に類似する意匠を全面実施したことになり、逆に本件登録意匠群に類似する意匠を実施しても、(多種多様の模様、色彩の施された)債務者製品の意匠の全面実施とはならないこと明らかであるから、結局、債務者製品は、本件登録意匠群に類似する意匠を利用するものというべく、これを業として実施すれば、債権者の本件意匠権の専用実施権を侵害するものといわざるをえない。

この点につきT鑑定は、結論として右の利用関係を否定している。仮に、T鑑定の考え方に従えば、形状、模様、色彩が全く同一の物品であっても、その製造工程において、形状が先にできるものは利用関係があり、模様、色彩が先に生成されるものは利用関係がないこととなるが、かような結論は実質的にみて不合理である。また、少なくとも本件におけるような利用関係の判断にあたって、物品の製造過程を問題としなければならない合理的理由を見い出すことはできない

 


参考情報

  • 「特許と企業170号」1983年2月
  • 昭和52年審判第11101号(意匠登録無効審判)

 


関連情報

 


(作成2024.06.29、最終更新2024.06.30)
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机事件(意匠権侵害訴訟):意匠の利用関係【動画】

机事件(意匠権侵害訴訟):意匠の利用関係について、解説動画をYouTubeに投稿しました(13分23秒)。

意匠の利用関係について示した「机事件(大阪地裁)」を確認してみます。「机」と「書架付きの机(学習机)」とが類似するか、非類似でも侵害となることはあるか、「意匠の利用」とは何か、被告が自己の意匠権に基づく実施の場合でも侵害となるかなどが争点です。

判決全文、被告意匠のイ号図面、ロ号図面、ハ号図面については、事件番号に基づき、裁判所のウェブサイトからご確認いただけます(https://www.courts.go.jp)。

2024年6月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


机事件(意匠権侵害訴訟):意匠の利用関係【動画】

 


(作成2024.06.15、最終更新2024.06.25)
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机事件(意匠権侵害訴訟):意匠の利用関係

意匠の利用関係について示した「机事件(大阪地裁)」を確認してみます。「机」と「書架付きの机(学習机)」とが類似するか、非類似でも侵害となることはあるか、「意匠の利用」とは何か、被告が自己の意匠権に基づく実施の場合でも侵害となるかなどが争点です。

この判決では、意匠権に基づき「製造販売等の差止め」が認められております。

 

目次(事件の概要)

  1. 原告登録意匠「机」と、被告意匠「書架付きの机」とは、類似するか。
  2. 「意匠の利用」とは何か。意匠の利用とは?
  3. 意匠の利用関係は、登録意匠と未登録意匠との間にも成立するか。
  4. 先願意匠権の排他権と、後願意匠権の実施権との調整
  5. 意匠の利用関係が成立する態様(物品が異なる場合、物品が同一の場合)
  6. 「意匠の類否」と「意匠の利用」との関係
  7. 本件登録意匠の特徴と、被告意匠の机部分との類否、利用関係
  8. 被告が自己の意匠権に基づく実施の場合でも侵害となるか。

 

以下、緑の枠内は、大阪地裁判決からの抜粋です。緑の枠の下は、弊所による読解内容を示しています。

詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。被告意匠のイ号図面、ロ号図面、ハ号図面についても、裁判所のウェブサイトからご確認いただけます(https://www.courts.go.jp)。

 


机事件:大阪地裁、昭和45年(ワ)第507号、昭和46年12月22日

机事件:意匠の利用関係

 


原告登録意匠「机」と、被告意匠「書架付きの机」とは、類似するか。

本件登録意匠と被告意匠とを全体的に対比観察すると、本件登録意匠は単なる机の意匠であるのに対し、被告意匠は机に書架を結合して一個の物品となした学習机の意匠であって、両者の意匠にかかる物品は同一性がなく、被告意匠は単なる机のみの意匠とは異なる審美感を惹起せしめるものと認められるから、意匠全体を比較すれば両者は非類似であるといわねばならない。

 

本件登録意匠と被告意匠とを全体的に対比観察すると、

本件登録意匠は単なる机の意匠であるのに対し、被告意匠は机に書架を結合して一個の物品となした学習机の意匠であって、

両者の意匠にかかる物品は同一性がなく

被告意匠は単なる机のみの意匠とは異なる審美感を惹起せしめるものと認められるから、

意匠全体を比較すれば両者は非類似であるといわねばならない。

 

◆「机」と「書架付き机」とは、非類似の意匠である。

 


「意匠の利用」とは何か。

意匠の利用とは、ある意匠がその構成要素中に他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を、その特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別しうる態様において包含し、この部分と他の構成要素との結合により全体としては他の登録意匠とは非類似の一個の意匠をなしているが、この意匠を実施すると必然的に他の登録意匠を実施する関係にある場合をいうものと解するのが相当である。

 

意匠の利用とは、

ある意匠」が

その構成要素中に「他の登録意匠又はこれに類似する意匠」の全部を、その特徴を破壊することなく、「他の構成要素」と区別しうる態様において包含し、

この部分」と「他の構成要素」との結合により全体としては「他の登録意匠」とは非類似の一個の意匠をなしているが、

この意匠」を実施すると必然的に「他の登録意匠」を実施する関係にある場合をいう

ものと解するのが相当である。

 

◆意匠の利用とは?

ある意匠(A)

→「他の登録意匠(B)又はその類似意匠(B´)」+「他の構成要素(C)

→全体としては「他の登録意匠(B)」とは非類似

→実施すると必然的に「他の登録意匠(B)」を実施する関係

 


意匠の利用関係は、登録意匠と未登録意匠との間にも成立するか。

意匠法第二六条は登録意匠相互間の利用関係について規定するが、意匠の利用関係のみについていえば、他の登録意匠を利用する意匠はそれ自体必ずしも意匠登録を受けている意匠である必要はなく、意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するものであり、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した未登録意匠の実施が、他人の当該意匠権の侵害を構成することは勿論である。

 

意匠法第26条は登録意匠相互間の利用関係について規定するが、

意匠の利用関係のみについていえば、他の登録意匠を利用する意匠はそれ自体必ずしも意匠登録を受けている意匠である必要はなく、

意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するものであり、

「他人の登録意匠又はこれに類似する意匠」を利用した「未登録意匠」の実施が、他人の当該意匠権の侵害を構成することは勿論である。

 


先願意匠権の排他権と、後願意匠権の実施権との調整

ところが、意匠権者は登録意匠及びこれに類似する意匠の実施を有する権利を専有する(意匠法第二三条)ところから、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した意匠が偶々自己の登録意匠又はこれに類似する意匠である場合には、利用された側の意匠権者の独占的排他権と利用する側の意匠権者の実施権とが衝突するため、両者の関係を調整する必要がある。意匠法第二六条はかかる場合双方の登録意匠の出願の先後関係により先願の権利を優先せしめ、後願の登録意匠又はこれに類似する意匠が先願の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用するものであるときは、後願にかかる意匠権の実施権をもつて先願にかかる意匠権の排他権に対抗しえないこととしたのである。

 

意匠権者は「登録意匠及びこれに類似する意匠」の実施をする権利を専有する(意匠法第23条)。

そのため、「他人の登録意匠又はこれに類似する意匠」を利用した意匠がたまたま「自己の登録意匠又はこれに類似する意匠」である場合には、「利用された側の意匠権者の独占的排他権」と「利用する側の意匠権者の実施権」とが衝突するため、両者の関係を調整する必要がある。

意匠法第26条は、かかる場合、
双方の登録意匠の出願の先後関係により先願の権利を優先せしめ、
後願の登録意匠又はこれに類似する意匠」が「先願の登録意匠又はこれに類似する意匠」を利用するものであるときは、「後願にかかる意匠権の実施権」をもって「先願にかかる意匠権の排他権に対抗しえない
こととしたのである。

 

  • 意匠法26条(他人の登録意匠等との関係)(2024年6月現在)
    1 意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない。
    2 意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠に類似する意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権、特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠に類似する意匠の実施をすることができない。

 


意匠の利用関係が成立する態様(物品が異なる場合、物品が同一の場合)

意匠の利用関係が成立する態様は、大別すると次の二つとなる。その一は意匠に係る物品が異なる場合であり、A物品につき他人の登録意匠がある場合に、これと同一又は類似の意匠を現わしたA物品を部品とするB物品の意匠を実施するときである。その二は意匠に係る物品が同一である場合であり、他人の登録意匠に更に形状、模様、色彩等を結合して全体としては別個の意匠としたときである。
右のいずれの場合であつても、意匠中に他人の登録意匠の全部が、その特徴が破壊されることなく、他の部分と区別しうる態様において存在することを要し、もしこれが混然一体となつて彼此区別しえないときは、利用関係の成立は否定されることを免れない。

 

意匠の利用関係が成立する態様は、大別すると次の二つとなる。

その一は、意匠に係る物品が異なる場合である。A物品につき他人の登録意匠がある場合に、これと同一又は類似の意匠を現わしたA物品を部品とするB物品の意匠を実施するときである。

その二は、意匠に係る物品が同一である場合である。他人の登録意匠に更に形状、模様、色彩等を結合して全体としては別個の意匠としたときである。

いずれの場合であっても、
意匠中に他人の登録意匠の全部が、その特徴が破壊されることなく他の部分と区別しうる態様において存在することを要し、
もしこれが混然一体となって彼此区別しえないときは、利用関係の成立は否定されることを免れない。

 

さて、以上の見地に立つて本件をみるに、被告意匠に係る学習机は、机部分と書架部分とを結合してなるもので、構成部品として机を包含し、しかも外観上机部分と書架部分とは截然と区別しうるものである。従つてもし被告意匠の机部分が本件登録意匠と類似すると認められる場合には、被告は原告の登録意匠と類似の意匠を現わした机を部品とする学習机の意匠を実施することに帰するので、ここに利用関係の成立が肯定されることとなる。

 

被告意匠に係る学習机は、
机部分と書架部分とを結合してなるもので、構成部品として机を包含し、
しかも外観上机部分と書架部分とは截然(せつぜん)と区別しうるものである。

従って、もし被告意匠の机部分が本件登録意匠と類似すると認められる場合には、
被告は「原告の登録意匠と類似の意匠を現わした机」を部品とする「学習机」の意匠を実施することに帰するので、
ここに利用関係の成立が肯定されることとなる。

 


「意匠の類否」と「意匠の利用」との関係

被告は、被告意匠は書架付学習机として一体不可分の意匠であるから、机部分の意匠と書架部分の意匠とが各独立して存在するものではなく、机部分の意匠を全体から分離して意匠の利用の有無を論ずることは意匠の本質を誤るものであつて許されないと主張する。しかし、右主張は意匠の類否の問題と意匠の利用の問題とを混同するものというべきである。すなわち、意匠は、その全体から一個の美感が生ずるものであつて、意匠の類否は結局類似した美感を与えるか否かにかかつているから、類否の判断にあたつては意匠の全体を相互に比較すべきことはいうまでもない。これに反して、意匠の利用関係の有無は、双方の意匠が全体観察においては非類似であることを承認しつつ、一方の意匠中に他の登録意匠の全部が包含されているか否かを問題とするものであるから、その判断は、一個の意匠を構成する一部が登録意匠全部と同一又は類似であるかを検討することによつてなされるべきことはむしろ当然である。従つて、意匠の利用の観念が認められている以上、利用関係の成否を論ずるに当り一個の意匠の一部を分離して観察の対象とすることは決して意匠の本質を誤るものではなく、これと相容れない被告の主張は当裁判所の採用しないところである。

 

◆「意匠の類否の問題」と「意匠の利用の問題」との関係

【意匠の類否について】 意匠は、その全体から一個の美感が生ずるものであって、意匠の類否は結局類似した美感を与えるか否かにかかっているから、類否の判断にあたっては意匠の全体を相互に比較すべきことはいうまでもない。

【意匠の利用について】 意匠の利用関係の有無は、双方の意匠が全体観察においては非類似であることを承認しつつ、一方の意匠中に他の登録意匠の全部が包含されているか否かを問題とするものであるから、その判断は、一個の意匠を構成する一部が登録意匠全部と同一又は類似であるかを検討することによってなされるべきことはむしろ当然である。利用関係の成否を論ずるに当り、一個の意匠の一部を分離して観察の対象とすることは、決して意匠の本質を誤るものではない。

 


本件登録意匠の特徴と、被告意匠の机部分との類否、利用関係

…本件登録意匠の中核をなす特徴と認むべき点は、脚座に上下二段からなる天板脚を直立して据え付けた逆T字形脚によつて天板を支持し、天板脚の上段は扁平角筒状の鞘部とし、下段は多数のボルト係止孔を有する支柱となして上段の鞘部に嵌挿し、上段鞘部の側面に設けた調節ノブにより天板の高さを調節しうるようにし、天板脚底部付近において角棒状の横杆をもつて左右の逆T字形脚を連結し、天板下に天板脚の前後にまたがつた奥行きを有する袖抽斗を設けた形状にあるものと解せられ、被告意匠の机部分がこの点において本件登録意匠と軌を一にしていることは既に認定したとおりである。

 

本件登録意匠の中核をなす特徴と認める点は、

脚座に上下二段からなる天板脚を直立して据え付けた逆T字形脚によって天板を支持し、

天板脚の上段は扁平角筒状の鞘部とし、下段は多数のボルト係止孔を有する支柱となして上段の鞘部に嵌挿し、上段鞘部の側面に設けた調節ノブにより天板の高さを調節しうるようにし、

天板脚底部付近において角棒状の横杆をもって左右の逆T字形脚を連結し、

天板下に天板脚の前後にまたがった奥行きを有する袖抽斗を設けた形状にあるものと解せられ、

被告意匠の机部分がこの点において本件登録意匠と軌を一にしていることは既に認定したとおりである。

 

…本件登録意匠と被告意匠の机部分との間の相異点としてさきに指摘した(一)の(イ)ないし(ト)の諸点のうち、(イ)(但し、受梁先端が削いである点を除く)、(ハ)、(ニ)(但し、引手の点を除く)及び(ト)の差異は、本件登録意匠とその類似2の意匠との間にもみられるところであり、その余の相異点は全体からみれば微細な差異であつて、いずれも本件登録意匠の要部に関する差異とはいえず、これらの差異があるため被告意匠の机部分が本件登録意匠と異なつた印象を看者に与えるものとは認め難いところであるから、被告意匠の机部分は本件登録意匠と類似するものと認めるのが相当である。

 

本件登録意匠と被告意匠の机部分との間の相異点は、

本件登録意匠と(これを本意匠として登録された)類似意匠との間にもみられるか、全体からみれば微細な差異であって、

いずれも本件登録意匠の要部に関する差異とはいえず、

これらの差異があるため被告意匠の机部分が本件登録意匠と異なつた印象を看者に与えるものとは認め難いところであるから、

被告意匠の机部分は本件登録意匠と類似するものと認めるのが相当である。

 

そうすると、被告意匠は本件登録意匠に類似する机の意匠の特徴を生かしそのまま包含しているものというべく、しかも被告意匠中において右の机部分が書架部分と外観上截然と区別しうることは既に認定したとおりであるから、被告意匠を実施するときは必然的に本件登録意匠を実施する関係にあることが明らかであり、結局、被告意匠は本件登録意匠に類似する意匠を利用するものであるといわねばならない。

 

被告意匠は、本件登録意匠に類似する机の意匠の特徴を生かしそのまま包含している。また、被告意匠中において、机部分が書架部分と外観上截然(せつぜん)と区別しうる。

そのため、被告意匠を実施するときは、必然的に本件登録意匠を実施する関係にある。結局、被告意匠は本件登録意匠に類似する意匠を利用するものであるといわねばならない。

 


被告が自己の意匠権に基づく実施の場合でも侵害となるか。

ところで、被告意匠が被告の有する学習机についての登録第二八四三五五号意匠(昭和四一年一〇月二五日出願、昭和四三年五月一一日登録)に類似する意匠であり、被告意匠の実施が右登録意匠の意匠権に基づく実施とみられることは当事者間に争いがないけれども、被告の右登録意匠は本件登録意匠より後願にかかるものであるから、被告が自己の登録意匠の意匠権に基づく実施権をもつて原告の本件登録意匠の意匠権に基づく排他権に対抗しえないことは意匠法第二六条第二項の規定上明らかであり、畢竟、被告の実施行為は原告の本件登録意匠の意匠権を侵害するものというべきである。

 

被告意匠は、被告の有する学習机についての登録意匠に類似する意匠であり、被告意匠の実施は、登録意匠の意匠権に基づく実施とみられる。

けれども、被告の登録意匠は、本件登録意匠より後願にかかるものである。そのため、被告が自己の登録意匠の意匠権に基づく実施権をもって原告の本件登録意匠の意匠権に基づく排他権に対抗しえないことは、意匠法第26条第2項の規定上明らかである。

結局、被告の実施行為は、原告の本件登録意匠の意匠権を侵害するものというべきである。

 


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(作成2024.06.14、最終更新2024.06.25)
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