目次
- 意匠の創作非容易性とは
- 創作容易な意匠の例
- >ありふれた手法
- >軽微な改変
- 新規性と創作非容易性との関係
- 関連条文
- 関連情報
- 本ページの解説動画:意匠の創作非容易性【動画】
*参考文献:特許庁編『意匠審査基準』
創作容易な意匠の例(意匠審査基準より)
意匠の創作非容易性とは
意匠登録出願前に、「当業者」が「公知」となった「形状等又は画像」に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠については意匠登録を受けることができません。この要件を意匠の創作非容易性といいます。
「当業者」とは、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者をいいます。より具体的には、その意匠に係る物品を製造・販売する業界において、その業界の意匠に関して、通常の知識を有する者をいいます。
「公知」とは、日本国内又は外国において、公然知られるか、頒布された刊行物に記載されるか、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となることをいいます。
「形状等」とは、「形状、模様若しくは色彩」又は「これらの結合」をいいます。
なお、創作非容易性の判断の基礎とする資料は、出願された意匠と同一又は類似の分野に限られません。
創作容易な意匠の例
(1)ありふれた手法
その意匠の属する分野における「ありふれた手法」により創作されたにすぎないものは、創作容易な意匠といえます。
特許庁の意匠審査基準によれば、多くの物品等の分野に共通する主な「ありふれた手法」の例は次のとおりですが、当該意匠の属する分野の創作の実態に照らして判断されます。
(a)置き換え
意匠の構成要素の一部を他の意匠等に置き換えることをいう。
(b)寄せ集め
複数の既存の意匠等を組み合わせて、一の意匠を構成することをいう。
(c)一部の構成の単なる削除
意匠の創作の一単位として認められる部分を、単純に削除することをいう。
(d)配置の変更
意匠の構成要素の配置を、単に変更することをいう。
(e)構成比率の変更
意匠の特徴を保ったまま、大きさを拡大・縮小したり、縦横比などの比率を変更することをいう。
(f)連続する単位の数の増減
繰り返し表される意匠の創作の一単位を、増減させることをいう。
(g)物品等の枠を超えた構成の利用・転用
既存の様々なものをモチーフとし、ほとんどそのままの形状等で種々の物品に利用・転用することをいう。
(2)軽微な改変
出願前公知の形状等又は画像が「ほとんどそのままあらわされている場合」だけでなく、改変が加えられている場合であっても、その改変が「その意匠の属する分野における軽微な改変にすぎない場合」も、創作容易な意匠といえます。
特許庁の意匠審査基準によれば、「軽微な改変」の例は次のとおりですが、当該意匠の属する分野の創作の実態に照らして判断されます。
(a)角部及び縁部の単純な隅丸化又は面取り
(b)模様等の単純な削除
(c)色彩の単純な変更、区画ごとの単純な彩色、要求機能に基づく標準的な彩色
(d)素材の単純な変更によって生じる形状等の変更
新規性と創作非容易性との関係
創作非容易性について規定する意匠法第3条第2項は、前項の新規性の規定を受けた形で、「…容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。」とされます。
そのため、新規性がある場合にのみ、創作非容易性について判断されます。つまり、新規性の規定が優先適用されます。言い換えれば、同一・類似の意匠ではないが、創作容易な意匠についてのみ、第3条第2項で拒絶されることになります。
また、新規性の要件は、同一・類似の物品等の意匠間において、需要者の立場からみた美感の類否が問題となるのに対し、創作非容易性は、物品等との関係を離れた抽象的なモチーフとしての形状等を基準として、それから当業者が容易に創作することができる意匠でないことを登録要件としたものであって、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性が問題となります。
◆新規性についての詳細は、意匠の新規性をご覧ください。
◆創作非容易性についての詳細や具体例は、意匠の創作非容易性(意匠審査基準の読解)をご覧ください。
関連条文
意匠法
(意匠登録の要件)
第3条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
2 意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
関連情報
- 意匠の創作非容易性【まとめ】
- 意匠の創作非容易性(意匠審査基準の読解)
- 意匠登録とは・意匠権の取り方
- 意匠の新規性
- 意匠法第3条の2(先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠の保護除外)
- 意匠の先願要件
- 意匠の類否(類似/非類似)
(作成2022.01.23、最終更新2024.01.13)
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