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特許庁統計【特実編2023年版】出願件数・審査請求率・審査期間・特許査定率など

はじめに

 


目次

  1. 【出願件数】特許出願件数は、年間どのくらい?、実用新案は?
  2. 【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?
  3. 【平均請求項数】特許出願の請求項の数は、平均どのくらい?
  4. 【審査請求率】出願後3年以内に出願審査請求される割合は、どのくらい?
  5. 【審査期間】特許の審査期間は、どのくらい?
  6. 【特許査定率】特許される割合は、どのくらい?
  7. 【拒絶査定件数と不服審判請求件数】拒絶査定件数と不服審判請求件数は、どのくらい?
  8. 【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】拒絶査定不服審判の請求件数、請求成立率、審理期間は、どのくらい?
  9. 【無効審判の件数・成否・期間】無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  10. 【異議申立ての件数・成否・期間】特許異議申立ての申立件数、決定件数、審理期間は、どのくらい?
  11. 【実用新案技術評価件数】実用新案技術評価書の作成件数は、どのくらい?
  12. 【PCT出願件数】日本国特許庁を受理官庁としたPCT国際出願件数は、どのくらい?
  13. 【海外への出願件数】日本から海外への特許出願件数は、どのくらい?
  14. 【海外からの出願件数】外国人による日本への特許出願件数は、どのくらい?
  15. 【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

 


Q&A

1.【出願件数】特許出願件数は、年間どのくらい?、実用新案は?

2022年の特許出願件数は、289,530件です。筆頭出願人による内訳は、個人5,966件、法人283,545件、官庁19件です。

2022年の実用新案登録出願件数は、4,513件です。筆頭出願人による内訳は、個人1,344件、法人3,169件、官庁0件です。

 

2.【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?

2022年、特許出願件数289,530件の内、弁理士代理出願は271,079件、本人出願は17,511件です。そのため、弊所計算では、特許の本人出願率は、6.0%です。

2022年、実用新案登録出願件数4,513件の内、弁理士代理出願は3,510件、本人出願は949件です。そのため、弊所計算では、実用新案の本人出願率は、21.0%です。

 

3.【平均請求項数】特許出願の請求項の数は、平均どのくらい?

特許出願時における「特許請求の範囲」の平均請求項数は、通常の国内出願(PCT経由以外の出願)で9.8、PCT経由も含めた全出願で12.3です(2022年)。

 

4.【審査請求率】出願後3年以内に出願審査請求される割合は、どのくらい?

出願審査請求率は、74.7%です(2019年出願分)。

 

5.【審査期間】特許の審査期間は、どのくらい?

特許のファーストアクション期間は、10.1か月です(2022年)。但し、早期審査対象案件は、2.3か月です。

なお、ファーストアクション期間とは、一次審査通知までの期間をいいます。具体的には、出願審査請求から、審査官による審査結果の最初の通知(主に特許査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間です。

 

6.【特許査定率】特許される割合は、どのくらい?

特許査定率は、75.9%です(2022年)。

なお、特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+ファーストアクション後の取下げ・放棄件数)です。

特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)と、それを比較する際の注意点、会社ごとの特許査定率・最終特許率、大学の特許査定率については、次のリンク先をご覧ください。

 

7.【拒絶査定件数と不服審判請求件数】拒絶査定件数と不服審判請求件数は、どのくらい?

2022年、拒絶査定件数は57,927、拒絶査定不服審判の請求件数は19,647件です。

 

8.【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】拒絶査定不服審判の請求件数、請求成立率、審理期間は、どのくらい?

前提として、審判請求時に特許請求の範囲等について補正(前置補正:ぜんちほせい)があったときは、審査官による再審査(前置審査:ぜんちしんさ)に付されます。前置審査において、拒絶理由が解消していると判断された場合、「特許査定」が出され、依然として拒絶理由が解消していないと判断された場合、「前置報告」の上、審判へ移行します。審判において審理された結果、「特許審決(請求成立)」又は「拒絶審決(請求不成立)」がなされます。

2022年、拒絶査定不服審判について、請求件数19,647、前置審査における特許査定件数9,604、前置報告件数7,096、審判における請求成立件数5,942、請求不成立(含却下)件数1,565、取下放棄件数539です。

拒絶査定不服審判事件における請求成立率は、79%です(2022年)。
なお、請求成立率=請求成立件数/(請求成立件数+請求不成立(含却下)件数)です。

拒絶査定不服審判での平均審理期間は、11.7か月です(2022年)。但し、早期審理対象案件は、3.7か月です。

なお、審理期間とは、審判請求日から、審決の発送日、取下・放棄の確定日、又は却下の発送日までの期間の暦年平均です。但し、前置審査に係る事件について、審判請求日とは、審理可能となった日(部門移管日)です。

 

9.【無効審判の件数・成否・期間】無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、特許無効審判について、請求件数97請求成立(含一部成立)件数16、請求不成立(含却下)件数58、取下放棄件数41です。

2022年、実用新案登録無効審判について、請求件数3請求成立(含一部成立)件数1、請求不成立(含却下)件数3、取下放棄件数0です。

特許・実用新案の無効審判の審理期間は、13.4か月です(2022年)。

なお、審理期間とは、審判請求日から、審決の発送日(審決の予告を行うものはその発送日)、取下・放棄の確定日、又は却下の発送日までの期間の暦年平均です。

 

10.【異議申立ての件数・成否・期間】特許異議申立ての申立件数、決定件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、特許異議申立てについて、権利単位で見たとき、申立件数1,322取消決定(含一部取消)件数95、維持決定(含却下)件数1,178、取下放棄件数2です。

特許異議申立ての審理期間は、8.2か月です(2022年)。

なお、審理期間とは、異議申立日から、決定の発送日(取消理由通知(決定の予告)を行うものはその発送日)、取下・放棄の確定日、又は却下の発送日までの期間の暦年平均です。

 

11.【実用新案技術評価件数】実用新案技術評価書の作成件数は、どのくらい?

2022年、実用新案技術評価書の作成件数は、281件です。

 

12.【PCT出願件数】日本国特許庁を受理官庁としたPCT国際出願件数は、どのくらい?

2022年、日本国特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数は、48,719件です。

 

13.【海外への出願件数】日本から海外への特許出願件数は、どのくらい?

2021年、日本から海外への特許出願件数は、190,433件です。

割合は、米国39%、中国24%、欧州(EPO)11%、韓国7%です。

 

14.【海外からの出願件数】外国人による日本への特許出願件数は、どのくらい?

2022年、外国人による日本への特許出願件数は、70,717件です。

割合は、米国38.0%、欧州30.5%、中国13.9%、韓国10.1%です。

 

15.【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

令和5年度、特許庁の総定員2,796人です。

内訳は、審査官1,888人、審判官380人、一般528人です。

審査官の内訳は、特実審査官1,663人、意匠審査官50人、商標審査官175人です。

 


(作成2023.07.29、最終更新2023.08.10)
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(本頁に掲載の数値は特許庁編『特許行政年次報告書2023年版』に基づきます。)

特許出願の拒絶理由通知への対応【動画】

特許出願の拒絶理由通知への対応について、解説動画をYouTubeに投稿しました(13分20秒)。

特許出願の拒絶理由通知への対応について考えてみます。

2023年6月現在の弊所の見解です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


特許出願の拒絶理由通知への対応【動画】

 


(作成2023.06.10、最終更新2023.06.10)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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特許・実用新案の例4:調理器具・調理道具

特許・実用新案のわかりやすい例(その4)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、調理器具・調理道具の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


スタンド型まな板

【実用新案登録番号】第1641849号(実公昭60-33891)

【出願日】1981年9月10日

特許・実用新案の例:スタンド型まな板

【実用新案登録請求の範囲】まな板を構成する外側周縁部中、前後側周縁部の何れか一方に、まな板の前後側周縁部の長さよりも短く、且まな板の厚さより幅員が大きく均一な板状スタンド体を別設し、該体の中心部を回動自在に装着したことを特徴とするスタンド型まな板。

【備考】まな板として使用するときには、まな板の調理板面と平行に回動し、且つ、まな板を傾斜させて調理作業をスムーズに行わせる。不使用時には板状スタンド体をまな板の調理板面に対して直角状に回動して、まな板を直立させて水切り、乾燥を早める

 


やかんの簡易水量表示具

【実用新案登録番号】第1998122号(実公平5-8917)

【出願日】1988年6月14日

特許・実用新案の例:やかんの簡易水量表示具

【実用新案登録請求の範囲】やかん内の所定水量を表示し得る簡易水量表示具において、
内部に流動体(9)を収容し得る容器(7)と、
やかん(1)内の所定水量と対応する所定の指標部(10)、とを有し、
上記指標部の所定部分は、やかんの注ぎ口から水が出はじめる角度にやかんを傾斜したときに、容器(7)内の流動体(9)の水平な流動体面部分に近接する位置に設けられ、
これによりやかん内の所定水量が視覚的に認識できることを特徴とする簡易水量表示具。

【備考】やかんを傾けたときのその角度とやかん内に残る水の量とは所定の関係を有する。この関係を利用することによりやかん内の水量を間接的に知る。やかん1を傾けて注ぎ口2aから水を流出させながらガラス容器部7に注目する。ガラス容器部7内の流動体9の上面と基準線10とが一部接した時点でのやかん内に残っている水の量は所望の水量となる。

 


変形卵ゆで器

【実用新案登録番号】第2003103号(実公平5-10780)

【出願日】1986年7月3日

特許・実用新案の例:変形卵ゆで器

【実用新案登録請求の範囲】生卵を所定の形状に成形する、変形卵ゆで器に於て、
生卵を収納することができる開口部2を有する鋳型本体1と、
この鋳型本体1の開口部2を覆う、該鋳型本体1に着脱可能に取付けられた蓋3と、
この蓋3に形成された、前記鋳型本体1内に収納された生卵をゆでる場合に、膨脹する余分の卵を外部へ排出するための気孔4とからなることを特徴とする変形卵ゆで器。

【備考】動物、植物、乗物、漫画のキヤラクター、バレーボール、サツカーボール等、さまざまな形状のゆで器に、生卵を割って入れゆでて、ゆで器と同じに変形したゆで卵をつくることのできるゆで器である。

 


コースター併用鍋つかみ

【実用新案登録番号】第2102659号(実公平7-19403)

【出願日】1993年6月4日

特許・実用新案の例:コースター併用鍋つかみ

【実用新案登録請求の範囲】厚紙製コースター1を設け、そのコースター1の二箇所に切離自在のループ状切目2,2と、それぞれの中央に折目3を施し、鍋つかみ4,4を区切って設けたことを特徴とするコースター併用鍋つかみ。

【備考】インスタント食品又は調理済食品等の加熱用アルミ鍋を載置するコースター1そのアルミ鍋を安全につかむことのできる鍋つかみ4とを併用し、或いはアルミ鍋の蓋をも兼ねたコースター併用鍋つかみである。

 


調理用ザル

【実用新案登録番号】第2515286号

【出願日】1993年6月24日

特許・実用新案の例:調理用ザル

【実用新案登録請求の範囲】ザル(4)の上縁A下端から空隙hを設けて補強用のたが(1)を設け、該たが(1)の互に対象となる位置に柄(2)引掛け具(3),(3)を設けたことを特徴とした調理用ザル。

【備考】ザル(4)を洗い桶(5)の端に引掛具(3)をかけて蛇口Bの水Wを流してザルの中の野菜やゆで麺を水洗いすると、洗い桶(5)の水が一杯になって桶(5)から流れ出ても、ザルの縁Aが水面上にあるため水洗いをしている野菜や麺が水と一緒に流れ出ることがない

 


調理指導容器

【特許番号】第2850206号

【出願日】1995年4月5日

特許・実用新案の例:調理指導容器

【特許請求の範囲】適宜形状の透明な容器の周壁に、所定の飲食物に要する各種調味料又は調合料の配合割合を各調味料又は各調合料を混合する順序にしたがって容器の下から順にその調味料又は調合料を投入した時の総体量として目盛で表示した配合割合指示部(4)を設けたことを特徴とする調理指導容器。

【備考】配合割合指示部4の目盛5に従ってだしの素、砂糖、水、酒、醤油の順序で各調味料を目盛5のところまで容器1に投入すればよい。その割合で配合すれば料理専門家が作るものと同じ味付けに仕上がる。製法指示部6には、肉じゃがを2~4人前作るのに要するじゃがいも、にんじん、玉ねぎ、豚肉の量を示すと共に、これらの切り方と大きさを実物大の絵によってそれぞれ示している。

 


参考情報

 


(作成2023.05.27、最終更新2023.06.07)
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特許出願を弁理士に依頼するメリット【動画】

特許出願を弁理士に依頼するメリットについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(7分46秒)。

特許出願を弁理士に依頼するメリットについて、考えてみます。いかに優れた発明でも、出願書類の書き方によって、権利化の有無、手続の円滑性、権利範囲の広狭が異なってきます。特許出願を弁理士に依頼した場合のメリットについて、ご説明いたします。弁理士・特許事務所の探し方と、探す際の注意点については、上記リンク先をご覧ください。

2023年5月現在の弊所の見解です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


特許出願を弁理士に依頼するメリット【動画】

 


(作成2023.05.27、最終更新2023.05.27)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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特許・実用新案の例3:文房具

特許・実用新案のわかりやすい例(その3)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、文房具の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


多色鉛筆

【実用新案登録番号】第1758061号(実公昭62-951)

【出願日】1982年10月28日

特許・実用新案の例:多色鉛筆

【実用新案登録請求の範囲】端面円形状をなす鉛筆芯の長手方向に向けて該芯の中心位置より放射状に順次色彩を異にする多数の芯生地を該芯生地の圧摺接に際し同時に多数の色彩が描出され得る間隔をもって配設したことを特徴とする多色鉛筆。

【備考】筆記使用の際に同時に多数の色彩が描出される実用性を有する色鉛筆である。

 


鉛筆削り付走行玩具

【特許番号】第1514340号(特公昭63-64233)

【出願日】1982年8月5日

特許・実用新案の例:鉛筆削り付走行玩具

【特許請求の範囲】両側に車輪(8)が固着され、中間部に第1のギア(11)が固着された車軸(10)を回転可能に枢支した走行体(1)と、
この走行体(1)に、鉛筆挿入孔(19)を上向きにして回転可能に設けられ、下部に第1のギア(11)と噛合する第2のギアを一体回転可能に有する鉛筆削り機構(12)とからなる鉛筆削り付走行玩具。

【備考】鉛筆の先部を、鉛筆削り機構の鉛筆挿入孔に挿入させ、鉛筆の後部を握つて走行体を所定の進行方向に押し進めると、車輪が回転し、この回転が車軸に固着された第1のギア及び鉛筆削り機構に設けられた第2のギアを介して鉛筆削り機構に伝えられ、鉛筆が削られる

 


コンパス

【実用新案登録番号】第1843832号(実公平2-14472)

【出願日】1983年11月30日

特許・実用新案の例:コンパス

【実用新案登録請求の範囲】コンパスの筆記部側の脚部に消ゴム保持部(6)を連接するとともに、この消ゴム保持部先端の消ゴム(7)を筆記部側のしん部(4)と同一軌道上に配置されていることを特徴とするコンパス。

【備考】コンパスで書き損じた場合、コンパスを着点から離すことなく素早く誤記の訂正が可能であり、中心のずれや開脚寸法の変動も防止できる。

 


鉛筆

【実用新案登録番号】第1969748号(実公平4-36945)

【出願日】1986年7月10日

特許・実用新案の例:鉛筆

【実用新案登録請求の範囲】木製等による削り被覆部(3)を、筆記用の芯材(2)に被着してなる筆記本体にあって、その両端部以外の削り被覆部には、所要数の手折用欠損部(5)が設けられている鉛筆

【備考】鉛筆本体を手折ることができ、これによる各手折り端部は、手折用欠損部により先細り状態となり、容易かつ迅速に鉛筆削り器の差込口に差し入れることができる製図用とかデツサン用など、これまでの鉛筆よりも短かいものを容易に得られる。

 


鉛筆用サック

【実用新案登録番号】第2539151号

【出願日】1993年10月19日

特許・実用新案の例:鉛筆用サック

【実用新案登録請求の範囲】筒状サック本体1と、筒状サック本体1の外周面に細かい凹・凸条2、3を上下方向に交互に繰り返すことで形成した起振部4と、筒状サック本体1の頂端に連続して設けた環状部5と、環状部5内に中心軸6を以て軸承した回転用板7とを備えたことを特徴とする鉛筆用サック。

【備考】凹・凸条2、3を上下方向に交互に繰り返すことで形成した起振部4に対して、手指の爪により上下にこする操作をリズミカルに上手に加えたときには、起振部4からの振動が環状部5および回転用板7に伝達され、回転用板7がゆっくりと回り出す。音と回転を楽しむことができる。

 


蛍光筆記具

【特許番号】第3465333号

【出願日】1993年12月28日

特許・実用新案の例:蛍光筆記具

【特許請求の範囲】第1の波長の光線が照射されると該第1の波長とは異なる第2の波長の可視光線を発する性質を有する透明な蛍光インキを含んだペン先を備えてなる筆記部と、
前記第1の波長の光線を発する発光部と、
前記第1の波長の光線を発するように該発光部を駆動する駆動部と、
を備えたことを特徴とする蛍光筆記具。

【備考】透明蛍光インキで筆記し、筆記された文字、図形等の筆記画像を通常状態では視認不可能とし、筆記部分に所定波長の光線(紫外線、赤外線、可視光線等)を照射して、筆記画像を視認可能とする。

 


参考情報

 


(作成2023.05.24、最終更新2023.06.07)
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特許・実用新案の例2:スポーツ用品

特許・実用新案のわかりやすい例(その2)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、スポーツ用品の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


金属製バット

【実用新案登録番号】第2074759号(実公平6-44447)

【出願日】1989年3月30日

特許・実用新案の例:金属製バット

【実用新案登録請求の範囲】先端を塞いだバット本体(2)の先端中央部に穴(3)を設け、
形状記憶ポリマーで該穴を覆う傘状頭部(4)とその中央下に該穴に嵌合する胴部(5)と胴部の下部を開いてバット本体の内面に密着せしめる脚部(6)とからなる栓体(A)を一体に成形し、
該栓体(A)の脚部(6)を直立状に変形させて該穴(3)に嵌入した後、40℃以上の温度で該栓体(A)の脚部(6)を元の形状に戻して固着したことを特徴とする金属製バット。

【備考】打球部の先端を開口してゴム栓を嵌合固着したバットは、消音効果があって鈍い打球音になるため、難聴障害や騒音公害を予防することはできるが、打球を反復するうちにゴム栓が抜け飛ぶ事故があり、これを防止しようとすると補強物体を用いなければならず必然的に先端の重いバットになってしまう欠点があった。

 


ビート板

【実用新案登録番号】第2116656号(実公平7-27949)

【出願日】1993年2月17日

特許・実用新案の例:ビート板

【実用新案登録請求の範囲】シート状部材で形成した空気袋本体1内の一方の側縁2に沿って該側縁2を保形する支持部材3を収納し、前記空気袋本体1の任意個所に空気注入装置4を備えたことを特徴とするビート板。

【備考】水泳の練習時に使用されるビート板に関し、従来の発泡体で形成された固形式のものに換え、空気注入式のものとしコンパクトに折り畳んで携帯、持ち運びに便利なビート板を提供する。

 


球技用ボール

【実用新案登録番号】第2124238号(実公平7-31802)

【出願日】1989年8月7日

特許・実用新案の例:球技用ボール

【実用新案登録請求の範囲】30個の6角形区画と、12個の5角形区画にてボール基体表面を覆うとともに、上記各区画の境界に細溝を形成してなる球技用ボール

【備考】サッカーボール、ハンドボール等の球技用ボールに関し、特にその表面構造に改良を図ったものである。

 


サッカーゴール

【特許番号】第2750298号

【出願日】1994年5月31日

特許・実用新案の例:サッカーゴール

【特許請求の範囲】傾動したときに直立状態に復帰させる重りが底部に設けられた可撓性の薄膜部材により形成される高さ方向に収縮膨張可能な中空の空気室と、該空気室と外気とを開閉自在に連通する空気出入口(7)と、前記空気室の外周に高さ方向に並設されるネット係止部材(8)とを備え、互いに別体に構成され間隔を存して起立して配置される一対のゴールポスト(3)と、
前記ネット係止部材により前記ゴールポスト間に係止されるゴールネット(4)とからなるサッカーゴール。

【備考】空き地や砂浜等でサッカーの練習をする場合などに、大型で重量のある競技用サッカーゴールは持ち運びできないためにこれを用いることができない。このようなサッカーゴールを使用しない場合にはゲーム中にシュートしたときにもゴールしたか否かわからない。

 


バレーボール用ネット

【特許番号】第3040349号

【出願日】1996年9月30日

特許・実用新案の例:バレーボール用ネット

【特許請求の範囲】ネット本体又はその上縁に装着した白帯の両方又は一方が電気的発光装置を内蔵し、該電気的発光装置が得点のある都度、人が操作するスイッチにて点灯し、消灯し又は点滅するようにしたことを特徴とするバレーボール用ネット。

【備考】電光表示板では、競技に熱中している観客にはそれが見えないで伝わらないこともあるし、正面からでなければその表示内容を確認することができない。観客が常に監視している競技場の内部において得点の瞬間をアピール又はショーアップする手段を設ける。

 


練習用ハードル

【特許番号】第3600967号

【出願日】1995年5月17日

特許・実用新案の例:練習用ハードル

【特許請求の範囲】左右の支持パイプ(5)を上下方向にスライド可能に備えたハードル本体と、上記左右の支持パイプの上端に屈曲可能なワイヤーを介して三次元的全方向に回動可能に取り付けられた左右のバー部材(11)と、を具備したことを特徴とする練習用ハードル。

【備考】小学校におけるハードル競争の体育授業やハードル競争選手の初級者の練習に適した練習用ハードルである。ハードリング時に足が当たるとハードルバーが前方に揺動するように構成されたものの改良である。

 


参考情報

 


(作成2023.05.22、最終更新2023.06.07)
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特許・実用新案の例1:園芸用品・栽培方法

特許・実用新案のわかりやすい例(その1)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、園芸用品・栽培方法の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


育苗用遮光板

【実用新案登録番号】第2016926号(実公平5-29017)

【出願日】1987年12月28日

特許・実用新案の例:育苗用遮光板

【実用新案登録請求の範囲】育苗用栽培床の上に載置される平板状部材に複数の孔を穿設し、該孔にそれぞれ個別の遮光材を設けたことを特徴とする育苗用遮光板。

【備考】播種時には発芽を促進するため種の部分が暗所となるように全面に新聞紙やわら等を拡げて覆ったり、暗所に持ち込んだりしていた。しかし、一つの栽培容器に種類の異なる種を蒔いている場合、発芽の時期が異なり、発芽が遅い種類があると、発芽している種があっても覆いを取らずに暗所に置いておかなければならなかった。同一種類の種の場合でも、発芽の日時が異なるため同様の問題があった。

 


鎌兼用スコップ

【実用新案登録番号】第2532556号

【出願日】1989年9月18日

特許・実用新案の例:鎌兼用スコップ

【実用新案登録請求の範囲】スコップ先端に刃部を有すると共に、スコップを手前に引いたときに茎や根が引掛かるような切欠き部をスコップの側部に設け、前記切欠き部に刃を設けたことを特徴とする園芸用スコップ。

【備考】従来園芸用に使用されるスコップは、土中に深く根が張ったり、太い根の張った雑草や作物等を取り除くことを目的としていない。

 


花器

【特許番号】第2857605号

【出願日】1996年2月6日

特許・実用新案の例:花器

【特許請求の範囲】有底外筒(1)内に内筒(2)を配置し、上記外筒(1)と内筒(2)との上端を上部環状板(3)で接続し、内筒(2)の下縁と上記外筒(1)の内面とを下部環状板(4)で接続し、下部環状板(4)と上記外筒(1)の底板(1’)との間に貯水空間(s)を介在し、かつ上部環状板(3)には注水用開閉栓(5)を設け、下部環状板(4)には滴下水ノズル(6)を設けてなり、
 冬期は上記内外筒(1,2)間の空間(s”)を空にして上記貯水空間(s)及び内筒(2)内の空間の上部まで水を溜め、
 夏期は上記内外筒(1,2)間の空間(s”)に水を充満し、水面を上記ノズル(6)に至る深さに貯水するよう形成してなる花器。

【備考】水の供給を夏と冬で切換えることによって花器の水中に差した茎の腐敗を防止し特に夏期における水の供給を合理的に行う。

 


苗の貯蔵方法

【特許番号】第2939545号

【出願日】1998年6月10日

【特許請求の範囲】園芸作物の苗を二酸化炭素濃度が18~23%の条件下で貯蔵することを特徴とする苗の貯蔵方法。

【備考】苗の貯蔵は5℃程度の低温で行われているが、冷熱エネルギー消費を考えると、室温に近い温度での貯蔵が望ましい。しかし、貯蔵温度が高くなると、貯蔵中に苗が徒長し、軟弱になるし、定植用機械に適用できなくなる。薬剤を用いる方法は安全性や定植後の残存薬効の問題がある。紫外線を照射する方法は、安全性の他に、陰の部分では効果が得られない。

 


移動式プランター

【特許番号】第3074153号

【出願日】1997年6月25日

特許・実用新案の例:移動式プランター

【特許請求の範囲】コーナーに脚部(7)を設けた支持フレーム(6)の、前記脚部(7)にキャスター(8)を取付けて車椅子(21)が下に入るワゴン(2)を形成し、
 このワゴン(2)の上部に受水槽(3)を載置し、この受水槽(3)の長手方向に沿った両側面に車椅子(21)に乗ったまま身体の一部が入る凹部(10)を形成し、
 更にこの受水槽(3)に園芸用土壤(4)を入れてプランター(5)を形成し、このプランター(5)の底部を貫通して排水ホース(15)を接続すると共に、前記ワゴン(2)又はプランター(5)に排水ホース(15)の先端側を着脱自在に係止する係止部(17)を設けたことを特徴とする移動式プランター。

【備考】車椅子に乗ったままでもプランターに植えた草木の手入れを行なえると共に、プランターを自由に移動できるので室内でも手入れや鑑賞ができ、また日光に当る場所への移動や水遣りも容易な移動式プランターを提供する。

 


マツタケの増産方法

【特許番号】第3337425号

【出願日】1998年6月1日

【特許請求の範囲】8月に、マツタケの発生する地域の地表をプラスチックシートで覆い、該地域の地温を上昇させ、9月には、該プラスチックシートを除去し、前記地域に人工的にかん水して、9月に適用される水分量が天然の降水量を含めて230~270mmとなるようにすることを特徴とするマツタケの増産方法。

【備考】マツタケを、自然条件下で、気象条件にあまり影響されることなく、増産しうる方法を提供する。

 


園芸容器の受器

【特許番号】第3975306号

【出願日】1998年3月10日

特許・実用新案の例:園芸容器の受器

【特許請求の範囲】より高い方に順次内蔵される段階的な高さの差がある複数の伏箱形の受台(2a、2b、2c、…)を、これより高さのある外容器(1)の内部に収めて成る、園芸容器の受器。

【備考】植木鉢、プランター、コンテナなどの園芸容器に使用して、これに水遣りの便と水切りの効果をもたらし、さらには、高さを数段階に変えることで効果的なディスプレイを可能にする。

 


参考情報

 


(作成2023.05.21、最終更新2023.06.07)
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商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)【動画】

商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)について、解説動画をYouTubeに投稿しました(7分38秒)。

商標の指定商品又は指定役務の意義を示した最高裁判決を確認してみます(平成21年(行ヒ)第217号)。指定役務「商品の販売に関する情報の提供」の意義、つまり「商品の販売に関する情報の提供」とは何か、についてです。

指定商品又は指定役務は、どの範囲で商標の使用を独占できるかを定め、使用しないなら不使用取消の問題を生じることになります。指定商品又は指定役務についての登録商標の使用に関し、指定商品又は指定役務が具体的に「どのような商品又はサービスなのか」が問題となることがあります。その判断基準についてです。

2023年5月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)【動画】

 


(作成2023.05.13、最終更新2023.05.13)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)

はじめに

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務(えきむ:サービス)を指定して、商標ごとにしなければなりません。つまり、商標をどのような商品又は役務に使用するのかを指定して、商標ごとに出願する必要があります。指定された商品又は役務は、「指定商品」又は「指定役務」といいます。

商標権者は、指定商品又は指定役務について、登録商標の使用をする権利を専有します。指定商品又は指定役務は、商標権の権利範囲を定めることになります。

3年以上継続して権利者が各指定商品又は指定役務について登録商標の使用をしていないとき、第三者からの請求により、商標登録が取り消されることがあります。取消しを免れるには、請求に係る指定商品又は指定役務について、登録商標を使用していることを立証する必要があります。

このように、指定商品又は指定役務は、どの範囲で商標の使用を独占できるかを定め、使用しないなら不使用取消の問題を生じることになります。

指定商品又は指定役務についての登録商標の使用に関し、指定商品又は指定役務が具体的に「どのような商品又はサービスなのか」が問題となることがあります。

「指定商品又は指定役務の意義」を示した最高裁判決を確認してみます。特に、指定役務「商品の販売に関する情報の提供」の意義が示されました。

 

全体の流れ

  1. 特許庁の不使用取消審判:登録取消(指定役務に登録商標は使用されていない。)
  2. 知財高裁:審決取消(指定役務に登録商標は使用されている。)
  3. 最高裁:原判決破棄(指定役務に登録商標は使用されていない。)

登場人物

  • 不使用取消審判の請求人=被告=上告人
  • 不使用取消審判の被請求人=商標権者=原告=被上告人

 


特許庁:取消2007-300303

◆審判請求人(のちの上告人)は、第35類「商品の販売に関する情報の提供」などについて、不使用取消審判を請求した。

◆特許庁は、本件商標を「商品の販売に関する情報の提供」について使用していると認められないとして、請求に係る商標登録を取り消すべき旨の審決をした。

 


知財高裁:平成20年(行ケ)第10414号

◆原告(商標権者、のちの被上告人)の主張

  • 自社のウェブサイトにおいて、自社が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて、本件商標を表示して、自社が開発に携わり他社が販売するゲームソフトにつき、その発売日、プレイヤー人数、価格等を表示するなどした。
  • 利用者は、上記ウェブサイトを介して、本件商品の販売会社のウェブサイトを閲覧し、本件商品を購入可能である。

◆知財高裁は、本件指定役務についての本件商標の使用を認め、審決を取り消した。

 


最高裁:平成21年(行ヒ)第217号

主文

原判決を破棄する。被上告人の請求を棄却する。

 

理由

(1)前提

  • 商標登録出願は、商標の使用をする商品又は役務を、商標法施行令で定める「商品及び役務の区分」に従って指定してしなければならない。
  • 商標法施行令は、同区分を、国際分類に従って定めるとともに、各区分に、その属する商品又は役務の内容を理解するための目安となる名称を付している。
  • 商標法施行規則は、上記各区分に属する商品又は役務を、更に細分類をして定めている。
  • 類似商品・役務審査基準において、互いに類似する商品又は役務を同一の類似群に属するものとして定めている。

 

(2)商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、以下を参酌して解釈するのが相当である。

  1. 商標法施行令別表の区分に付された名称
  2. 商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質
  3. 国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明
  4. 類似商品・役務審査基準における類似群の同一性

 

(3)本件指定役務である「商品の販売に関する情報の提供」の意義について検討する(前記a~dに対応して)。

  1. 政令別表第35類の名称は「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」である。
  2. 上記区分に属するものとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質も考慮する。
  3. 出願時の国際分類を構成する類別表注釈が、「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしている。
  4. 「商品の販売に関する情報の提供」は、「経営の診断及び指導」、「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ、類似商品・役務審査基準においても、これらと同一の類似群に属するとされている。

以上からすれば、「商品の販売に関する情報の提供」とは、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。

そうすると、商業等に従事する企業に対し、商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって、商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは、「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。

 

(4)そこで、本件各行為について検討すると、前記事実関係によれば、本件各行為は、被上告人のウェブサイトにおいて、被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて、他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供するものとはいえない。したがって、本件各行為により、被上告人が本件指定役務についての本件商標の使用をしていたということはできない。

 


参考情報

「商品の販売に関する情報の提供」の解釈について、特許庁のウェブサイトには、次のとおり紹介されています(商品・役務名のQ&A、2023年1月版)。

第35類「商品の販売に関する情報の提供」は、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務」であって、企業に対し、「商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供」するものと解されます(平成23年12月20日 最高裁 平成21(行ヒ)217)。

なお、消費者向けに商品を紹介するような情報の提供の役務としては、第35類「消費者のための商品購入に関する助言と情報の提供」(なお、本表示は、第11-2018版より「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」へ変更されました。)があります。

 


(作成2023.05.09、最終更新2023.05.10)
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特許出願を弁理士に依頼するメリット(弁理士の探し方と注意点も)

いかに優れた発明でも、出願書類の書き方によって、権利化の有無、手続の円滑性、権利範囲の広狭が異なってきます。

特許出願について、弁理士にご依頼されると、以下のようなメリットがあります。実用新案登録出願についても、基本的には同様です。

弁理士・特許事務所の探し方と、探す際の注意点についても述べます。

目次

(1)特許出願を弁理士に依頼するメリット

(2)弁理士・特許事務所の探し方と、探す際の注意点

(3)本ページの解説動画

 


第三者の立場から発明をチェックできます。

◆自分の発明について自分で出願書類を作成すると、説明しなくても発明を十分に分かっているので、当然に分かる事項だとして説明不足を生じるおそれがあります。その結果、「発明が完成していない」「実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない」「発明が明確でない」などを理由に、出願が拒絶されるかもしれません。発明者にとって当然の事項でも、第三者には不明で、補強説明が必要なこともあります。出願書類に記載のない事項を出願後に加入することはできませんから、出願書類の作成には万全を期さなければなりません。弁理士を介在させることで、発明把握や出願書類作成において、第三者(特に審査官)の立場で検討がなされます。不明点や不足点があれば、弁理士が発明を把握できず出願書類を作成できないので、お客様にお問合せすることになり、結果として、審査に耐える出願書類を作成することができます。

◆発明が完全に固まっていない場合でも、弁理士とのやり取りで(出願書類作成に当たって弁理士は具体的構成をお聞きするので)、発明を完成させることができます。また、弁理士とのやり取りで(侵害回避のための代替手段の検討に慣れているので)、改良・改善点や、変更・変形例が見つかることもあります。発明の特徴についても、より拡張したり、異なる観点からご提案できることもあります。

◆特許請求の範囲には、「特許を受けようとする発明」の特定に必須な事項のみを記載する必要があります。弁理士は、技術面と法律面から、権利範囲の特定に必須な事項と、そうでない事項とを見極めて、書類作成いたします。つまり、「どこが発明なのか」を見極めて、書類作成いたします。そして、その発明がいかに優れたものであるか、ストーリーを設定して、出願書類を作成し、特許性の向上に貢献します。

 


出願書類の作成をお任せできます。

方式(様式)の整った出願書類を作成し、門前払いを防止できます。

知り得る限りの先行技術と対比して、また自社製品、他社製品、権利行使の容易性、書類の記載要件なども考慮して、最良と思われる請求項(特許請求の範囲)を作成します。そして、先行技術との違いが分かるように、明細書や図面を作成します。

出願書類作成の手間がかかりません。たとえば、現物があれば、口頭説明だけでも出願依頼できることもあります。

◆特許事務所の弁理士は、多様な案件について、ご相談、先行技術調査、出願書類作成、拒絶理由通知対応などを、多数経験しております。また、特許関係の法令だけでなく、特許庁の審査基準なども把握しております。さらに、外国出願、侵害警告事件、無効審判事件、異議申立事件などについても、経験したり、研修を受けたり、審判決に当たったりしています。これら知識を活用して、弁理士は出願を処理します。弁理士に依頼すると、技術面、法律面、実務面を考慮して、より強い権利を、円滑に取得しやすくなります。絶対的な登録を保証することはできませんが、通常、お客様ご自身が出願処理されるよりも、特許化への可能性を高めることができます。

意匠登録などの他の知財との関係で、助言できることもあります。

 


出願後の手続もお任せできます。

特許出願の場合、出願後にも、各種手続が発生します。期限内に適切な対応をとらなければ、特許化できません。たとえば、次の点について、知っておかなければ、適切に処理できないおそれがあります。それぞれ、詳しくは、知財制度解説をご覧ください。弁理士がいれば、弁理士に任せたり、問い合わせたりすることができます。

  • 【出願処理に必要な事項(知っておきたい用語)】 特許請求の範囲、請求項、出願審査請求、意見書と手続補正書、特許料、新規性と進歩性、先願と拡大先願、最初の拒絶理由通知と最後の拒絶理由通知、新規事項追加、シフト補正、限定的減縮、サポート要件、明確性要件、プロダクトバイプロセス、マルチマルチクレームなど

審査において、(弁理士が代理の案件でも)すぐに特許されるのは少数で、拒絶理由通知に対する応答が必要な場合が多いです。途中から弁理士に依頼するとしても、出願書類の出来が悪い場合、弁理士による対応にも限界があります。

審査において、先行する他社の出願や特許が見つかるかもしれません。また、特許後、他社製品との関係が問題になるかもしれません。そのような場合でも、弁理士にご相談いただけます。

出願後、改良発明が出るかもしれません。時期により対応が異なります。弁理士がいれば、適切な対応を助言することができます。

◆外国出願を取扱いの事務所なら、海外での権利取得についても相談できます。国内の特許事務所を介して外国出願されるなら、最初から特許事務所へご依頼された方が、処理が円滑に進みます。

 


弁理士・特許事務所の探し方と注意点

【特許事務所の選定】 弁理士を探すのに知っていただきたい事項です。

弁理士ナビ

  • 地域や専門で弁理士を検索できます。日本弁理士会の公式ですから、最も信頼できます。
  • これ以外に弁理士を探すなら、ネット検索でしょうが、「**専門」「**に強い」「おすすめ」などは、単なる宣伝文句(広告)でないか、ご確認ください。特定の技術分野の専門ならともかく、たとえば、「特許専門」なら、わざわざ言わないだけで、多くの特許事務所が該当します。「特許出願に強い」も、何をもって強いのか、見極める必要があります。もし特許率(あるいはその高さと関係した返金保証)なら、下記リンク先(特許率とその注意点)もご覧ください。「おすすめ」も、誰がどのような基準(根拠)で決めているのか、確認する必要があります。
  • 公的機関で無料相談が実施されることがあります。しかしながら、あくまで相談に止まり、出願の代理を受け付ける訳ではありません。出願をご依頼される場合、相談担当者の特許事務所などに、別途依頼することになります。費用は、その特許事務所ごとに異なります。相談担当者が弁理士であるなら、結局のところ、特許事務所・弁理士の選択になると思います。
  • 弁護士・弁理士以外は、出願代理することができません。無資格で代理すれば、弁理士法違反で処罰されます。

特許事務所・弁理士の守秘義務

  • いずれの弁理士にご相談いただいても、秘密は守られます。
  • 守秘義務に関連して、既存のお客様との関係で、ご依頼・ご相談に対応できない場合もあります。

特許率(特許査定率・特許取得率)とその注意点

  • 特許される割合と、それを比較する際の注意点についての解説です。

事務所比較、特許取得率・商標登録率、顧客、関与事件等の表示の禁止

  • 日本弁理士会は「会員の広告に関するガイドライン」を定めています。

 


(作成2023.04.30、最終更新2023.05.26)
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