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特許・実用新案の例2:スポーツ用品

特許・実用新案のわかりやすい例(その2)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、スポーツ用品の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


金属製バット

【実用新案登録番号】第2074759号(実公平6-44447)

【出願日】1989年3月30日

特許・実用新案の例:金属製バット

【実用新案登録請求の範囲】先端を塞いだバット本体(2)の先端中央部に穴(3)を設け、
形状記憶ポリマーで該穴を覆う傘状頭部(4)とその中央下に該穴に嵌合する胴部(5)と胴部の下部を開いてバット本体の内面に密着せしめる脚部(6)とからなる栓体(A)を一体に成形し、
該栓体(A)の脚部(6)を直立状に変形させて該穴(3)に嵌入した後、40℃以上の温度で該栓体(A)の脚部(6)を元の形状に戻して固着したことを特徴とする金属製バット。

【備考】打球部の先端を開口してゴム栓を嵌合固着したバットは、消音効果があって鈍い打球音になるため、難聴障害や騒音公害を予防することはできるが、打球を反復するうちにゴム栓が抜け飛ぶ事故があり、これを防止しようとすると補強物体を用いなければならず必然的に先端の重いバットになってしまう欠点があった。

 


ビート板

【実用新案登録番号】第2116656号(実公平7-27949)

【出願日】1993年2月17日

特許・実用新案の例:ビート板

【実用新案登録請求の範囲】シート状部材で形成した空気袋本体1内の一方の側縁2に沿って該側縁2を保形する支持部材3を収納し、前記空気袋本体1の任意個所に空気注入装置4を備えたことを特徴とするビート板。

【備考】水泳の練習時に使用されるビート板に関し、従来の発泡体で形成された固形式のものに換え、空気注入式のものとしコンパクトに折り畳んで携帯、持ち運びに便利なビート板を提供する。

 


球技用ボール

【実用新案登録番号】第2124238号(実公平7-31802)

【出願日】1989年8月7日

特許・実用新案の例:球技用ボール

【実用新案登録請求の範囲】30個の6角形区画と、12個の5角形区画にてボール基体表面を覆うとともに、上記各区画の境界に細溝を形成してなる球技用ボール

【備考】サッカーボール、ハンドボール等の球技用ボールに関し、特にその表面構造に改良を図ったものである。

 


サッカーゴール

【特許番号】第2750298号

【出願日】1994年5月31日

特許・実用新案の例:サッカーゴール

【特許請求の範囲】傾動したときに直立状態に復帰させる重りが底部に設けられた可撓性の薄膜部材により形成される高さ方向に収縮膨張可能な中空の空気室と、該空気室と外気とを開閉自在に連通する空気出入口(7)と、前記空気室の外周に高さ方向に並設されるネット係止部材(8)とを備え、互いに別体に構成され間隔を存して起立して配置される一対のゴールポスト(3)と、
前記ネット係止部材により前記ゴールポスト間に係止されるゴールネット(4)とからなるサッカーゴール。

【備考】空き地や砂浜等でサッカーの練習をする場合などに、大型で重量のある競技用サッカーゴールは持ち運びできないためにこれを用いることができない。このようなサッカーゴールを使用しない場合にはゲーム中にシュートしたときにもゴールしたか否かわからない。

 


バレーボール用ネット

【特許番号】第3040349号

【出願日】1996年9月30日

特許・実用新案の例:バレーボール用ネット

【特許請求の範囲】ネット本体又はその上縁に装着した白帯の両方又は一方が電気的発光装置を内蔵し、該電気的発光装置が得点のある都度、人が操作するスイッチにて点灯し、消灯し又は点滅するようにしたことを特徴とするバレーボール用ネット。

【備考】電光表示板では、競技に熱中している観客にはそれが見えないで伝わらないこともあるし、正面からでなければその表示内容を確認することができない。観客が常に監視している競技場の内部において得点の瞬間をアピール又はショーアップする手段を設ける。

 


練習用ハードル

【特許番号】第3600967号

【出願日】1995年5月17日

特許・実用新案の例:練習用ハードル

【特許請求の範囲】左右の支持パイプ(5)を上下方向にスライド可能に備えたハードル本体と、上記左右の支持パイプの上端に屈曲可能なワイヤーを介して三次元的全方向に回動可能に取り付けられた左右のバー部材(11)と、を具備したことを特徴とする練習用ハードル。

【備考】小学校におけるハードル競争の体育授業やハードル競争選手の初級者の練習に適した練習用ハードルである。ハードリング時に足が当たるとハードルバーが前方に揺動するように構成されたものの改良である。

 


参考情報

 


(作成2023.05.22、最終更新2023.06.07)
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特許・実用新案の例1:園芸用品・栽培方法

特許・実用新案のわかりやすい例(その1)

特許・実用新案登録の例をご紹介します。特許庁の審査をパスして、実際に登録になった例です。

今回は、園芸用品・栽培方法の特許・実用新案登録の例です。権利内容が比較的分かりやすいと思われるものを抽出しました。【特許請求の範囲】、【実用新案登録請求の範囲】が権利範囲となります。読み方は、特許請求の範囲について、をご覧ください。

出願日を基準に審査されるので、あくまでも出願時において、従来同じものがなく、容易に考えられないと判断されたことになります。しかし、今見ても、興味深いものがあります。

実用新案登録も含まれますが、旧実用新案制度の下での登録例です。当時は特許と同様に、登録前に実体審査がありました。方法の発明ではなく、物の発明の場合、通常、特許でも、実用新案でも、いずれでも出願・登録できます。

現在も権利が存続中とは限りません。基本的には、既に権利が切れたものを探しました。最新の状況は、特許庁にてご確認をお願いします。

 


育苗用遮光板

【実用新案登録番号】第2016926号(実公平5-29017)

【出願日】1987年12月28日

特許・実用新案の例:育苗用遮光板

【実用新案登録請求の範囲】育苗用栽培床の上に載置される平板状部材に複数の孔を穿設し、該孔にそれぞれ個別の遮光材を設けたことを特徴とする育苗用遮光板。

【備考】播種時には発芽を促進するため種の部分が暗所となるように全面に新聞紙やわら等を拡げて覆ったり、暗所に持ち込んだりしていた。しかし、一つの栽培容器に種類の異なる種を蒔いている場合、発芽の時期が異なり、発芽が遅い種類があると、発芽している種があっても覆いを取らずに暗所に置いておかなければならなかった。同一種類の種の場合でも、発芽の日時が異なるため同様の問題があった。

 


鎌兼用スコップ

【実用新案登録番号】第2532556号

【出願日】1989年9月18日

特許・実用新案の例:鎌兼用スコップ

【実用新案登録請求の範囲】スコップ先端に刃部を有すると共に、スコップを手前に引いたときに茎や根が引掛かるような切欠き部をスコップの側部に設け、前記切欠き部に刃を設けたことを特徴とする園芸用スコップ。

【備考】従来園芸用に使用されるスコップは、土中に深く根が張ったり、太い根の張った雑草や作物等を取り除くことを目的としていない。

 


花器

【特許番号】第2857605号

【出願日】1996年2月6日

特許・実用新案の例:花器

【特許請求の範囲】有底外筒(1)内に内筒(2)を配置し、上記外筒(1)と内筒(2)との上端を上部環状板(3)で接続し、内筒(2)の下縁と上記外筒(1)の内面とを下部環状板(4)で接続し、下部環状板(4)と上記外筒(1)の底板(1’)との間に貯水空間(s)を介在し、かつ上部環状板(3)には注水用開閉栓(5)を設け、下部環状板(4)には滴下水ノズル(6)を設けてなり、
 冬期は上記内外筒(1,2)間の空間(s”)を空にして上記貯水空間(s)及び内筒(2)内の空間の上部まで水を溜め、
 夏期は上記内外筒(1,2)間の空間(s”)に水を充満し、水面を上記ノズル(6)に至る深さに貯水するよう形成してなる花器。

【備考】水の供給を夏と冬で切換えることによって花器の水中に差した茎の腐敗を防止し特に夏期における水の供給を合理的に行う。

 


苗の貯蔵方法

【特許番号】第2939545号

【出願日】1998年6月10日

【特許請求の範囲】園芸作物の苗を二酸化炭素濃度が18~23%の条件下で貯蔵することを特徴とする苗の貯蔵方法。

【備考】苗の貯蔵は5℃程度の低温で行われているが、冷熱エネルギー消費を考えると、室温に近い温度での貯蔵が望ましい。しかし、貯蔵温度が高くなると、貯蔵中に苗が徒長し、軟弱になるし、定植用機械に適用できなくなる。薬剤を用いる方法は安全性や定植後の残存薬効の問題がある。紫外線を照射する方法は、安全性の他に、陰の部分では効果が得られない。

 


移動式プランター

【特許番号】第3074153号

【出願日】1997年6月25日

特許・実用新案の例:移動式プランター

【特許請求の範囲】コーナーに脚部(7)を設けた支持フレーム(6)の、前記脚部(7)にキャスター(8)を取付けて車椅子(21)が下に入るワゴン(2)を形成し、
 このワゴン(2)の上部に受水槽(3)を載置し、この受水槽(3)の長手方向に沿った両側面に車椅子(21)に乗ったまま身体の一部が入る凹部(10)を形成し、
 更にこの受水槽(3)に園芸用土壤(4)を入れてプランター(5)を形成し、このプランター(5)の底部を貫通して排水ホース(15)を接続すると共に、前記ワゴン(2)又はプランター(5)に排水ホース(15)の先端側を着脱自在に係止する係止部(17)を設けたことを特徴とする移動式プランター。

【備考】車椅子に乗ったままでもプランターに植えた草木の手入れを行なえると共に、プランターを自由に移動できるので室内でも手入れや鑑賞ができ、また日光に当る場所への移動や水遣りも容易な移動式プランターを提供する。

 


マツタケの増産方法

【特許番号】第3337425号

【出願日】1998年6月1日

【特許請求の範囲】8月に、マツタケの発生する地域の地表をプラスチックシートで覆い、該地域の地温を上昇させ、9月には、該プラスチックシートを除去し、前記地域に人工的にかん水して、9月に適用される水分量が天然の降水量を含めて230~270mmとなるようにすることを特徴とするマツタケの増産方法。

【備考】マツタケを、自然条件下で、気象条件にあまり影響されることなく、増産しうる方法を提供する。

 


園芸容器の受器

【特許番号】第3975306号

【出願日】1998年3月10日

特許・実用新案の例:園芸容器の受器

【特許請求の範囲】より高い方に順次内蔵される段階的な高さの差がある複数の伏箱形の受台(2a、2b、2c、…)を、これより高さのある外容器(1)の内部に収めて成る、園芸容器の受器。

【備考】植木鉢、プランター、コンテナなどの園芸容器に使用して、これに水遣りの便と水切りの効果をもたらし、さらには、高さを数段階に変えることで効果的なディスプレイを可能にする。

 


参考情報

 


(作成2023.05.21、最終更新2023.06.07)
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商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)【動画】

商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)について、解説動画をYouTubeに投稿しました(7分38秒)。

商標の指定商品又は指定役務の意義を示した最高裁判決を確認してみます(平成21年(行ヒ)第217号)。指定役務「商品の販売に関する情報の提供」の意義、つまり「商品の販売に関する情報の提供」とは何か、についてです。

指定商品又は指定役務は、どの範囲で商標の使用を独占できるかを定め、使用しないなら不使用取消の問題を生じることになります。指定商品又は指定役務についての登録商標の使用に関し、指定商品又は指定役務が具体的に「どのような商品又はサービスなのか」が問題となることがあります。その判断基準についてです。

2023年5月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)【動画】

 


(作成2023.05.13、最終更新2023.05.13)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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商標登録の指定商品又は指定役務の意義(最高裁)

はじめに

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務(えきむ:サービス)を指定して、商標ごとにしなければなりません。つまり、商標をどのような商品又は役務に使用するのかを指定して、商標ごとに出願する必要があります。指定された商品又は役務は、「指定商品」又は「指定役務」といいます。

商標権者は、指定商品又は指定役務について、登録商標の使用をする権利を専有します。指定商品又は指定役務は、商標権の権利範囲を定めることになります。

3年以上継続して権利者が各指定商品又は指定役務について登録商標の使用をしていないとき、第三者からの請求により、商標登録が取り消されることがあります。取消しを免れるには、請求に係る指定商品又は指定役務について、登録商標を使用していることを立証する必要があります。

このように、指定商品又は指定役務は、どの範囲で商標の使用を独占できるかを定め、使用しないなら不使用取消の問題を生じることになります。

指定商品又は指定役務についての登録商標の使用に関し、指定商品又は指定役務が具体的に「どのような商品又はサービスなのか」が問題となることがあります。

「指定商品又は指定役務の意義」を示した最高裁判決を確認してみます。特に、指定役務「商品の販売に関する情報の提供」の意義が示されました。

 

全体の流れ

  1. 特許庁の不使用取消審判:登録取消(指定役務に登録商標は使用されていない。)
  2. 知財高裁:審決取消(指定役務に登録商標は使用されている。)
  3. 最高裁:原判決破棄(指定役務に登録商標は使用されていない。)

登場人物

  • 不使用取消審判の請求人=被告=上告人
  • 不使用取消審判の被請求人=商標権者=原告=被上告人

 


特許庁:取消2007-300303

◆審判請求人(のちの上告人)は、第35類「商品の販売に関する情報の提供」などについて、不使用取消審判を請求した。

◆特許庁は、本件商標を「商品の販売に関する情報の提供」について使用していると認められないとして、請求に係る商標登録を取り消すべき旨の審決をした。

 


知財高裁:平成20年(行ケ)第10414号

◆原告(商標権者、のちの被上告人)の主張

  • 自社のウェブサイトにおいて、自社が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて、本件商標を表示して、自社が開発に携わり他社が販売するゲームソフトにつき、その発売日、プレイヤー人数、価格等を表示するなどした。
  • 利用者は、上記ウェブサイトを介して、本件商品の販売会社のウェブサイトを閲覧し、本件商品を購入可能である。

◆知財高裁は、本件指定役務についての本件商標の使用を認め、審決を取り消した。

 


最高裁:平成21年(行ヒ)第217号

主文

原判決を破棄する。被上告人の請求を棄却する。

 

理由

(1)前提

  • 商標登録出願は、商標の使用をする商品又は役務を、商標法施行令で定める「商品及び役務の区分」に従って指定してしなければならない。
  • 商標法施行令は、同区分を、国際分類に従って定めるとともに、各区分に、その属する商品又は役務の内容を理解するための目安となる名称を付している。
  • 商標法施行規則は、上記各区分に属する商品又は役務を、更に細分類をして定めている。
  • 類似商品・役務審査基準において、互いに類似する商品又は役務を同一の類似群に属するものとして定めている。

 

(2)商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、以下を参酌して解釈するのが相当である。

  1. 商標法施行令別表の区分に付された名称
  2. 商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質
  3. 国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明
  4. 類似商品・役務審査基準における類似群の同一性

 

(3)本件指定役務である「商品の販売に関する情報の提供」の意義について検討する(前記a~dに対応して)。

  1. 政令別表第35類の名称は「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」である。
  2. 上記区分に属するものとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質も考慮する。
  3. 出願時の国際分類を構成する類別表注釈が、「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしている。
  4. 「商品の販売に関する情報の提供」は、「経営の診断及び指導」、「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ、類似商品・役務審査基準においても、これらと同一の類似群に属するとされている。

以上からすれば、「商品の販売に関する情報の提供」とは、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。

そうすると、商業等に従事する企業に対し、商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって、商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは、「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。

 

(4)そこで、本件各行為について検討すると、前記事実関係によれば、本件各行為は、被上告人のウェブサイトにおいて、被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて、他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供するものとはいえない。したがって、本件各行為により、被上告人が本件指定役務についての本件商標の使用をしていたということはできない。

 


参考情報

「商品の販売に関する情報の提供」の解釈について、特許庁のウェブサイトには、次のとおり紹介されています(商品・役務名のQ&A、2023年1月版)。

第35類「商品の販売に関する情報の提供」は、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務」であって、企業に対し、「商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供」するものと解されます(平成23年12月20日 最高裁 平成21(行ヒ)217)。

なお、消費者向けに商品を紹介するような情報の提供の役務としては、第35類「消費者のための商品購入に関する助言と情報の提供」(なお、本表示は、第11-2018版より「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」へ変更されました。)があります。

 


(作成2023.05.09、最終更新2023.05.10)
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特許出願を弁理士に依頼するメリット(弁理士の探し方と注意点も)

いかに優れた発明でも、出願書類の書き方によって、権利化の有無、手続の円滑性、権利範囲の広狭が異なってきます。

特許出願について、弁理士にご依頼されると、以下のようなメリットがあります。実用新案登録出願についても、基本的には同様です。

弁理士・特許事務所の探し方と、探す際の注意点についても述べます。

目次

(1)特許出願を弁理士に依頼するメリット

(2)弁理士・特許事務所の探し方と、探す際の注意点

(3)本ページの解説動画

 


第三者の立場から発明をチェックできます。

◆自分の発明について自分で出願書類を作成すると、説明しなくても発明を十分に分かっているので、当然に分かる事項だとして説明不足を生じるおそれがあります。その結果、「発明が完成していない」「実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない」「発明が明確でない」などを理由に、出願が拒絶されるかもしれません。発明者にとって当然の事項でも、第三者には不明で、補強説明が必要なこともあります。出願書類に記載のない事項を出願後に加入することはできませんから、出願書類の作成には万全を期さなければなりません。弁理士を介在させることで、発明把握や出願書類作成において、第三者(特に審査官)の立場で検討がなされます。不明点や不足点があれば、弁理士が発明を把握できず出願書類を作成できないので、お客様にお問合せすることになり、結果として、審査に耐える出願書類を作成することができます。

◆発明が完全に固まっていない場合でも、弁理士とのやり取りで(出願書類作成に当たって弁理士は具体的構成をお聞きするので)、発明を完成させることができます。また、弁理士とのやり取りで(侵害回避のための代替手段の検討に慣れているので)、改良・改善点や、変更・変形例が見つかることもあります。発明の特徴についても、より拡張したり、異なる観点からご提案できることもあります。

◆特許請求の範囲には、「特許を受けようとする発明」の特定に必須な事項のみを記載する必要があります。弁理士は、技術面と法律面から、権利範囲の特定に必須な事項と、そうでない事項とを見極めて、書類作成いたします。つまり、「どこが発明なのか」を見極めて、書類作成いたします。そして、その発明がいかに優れたものであるか、ストーリーを設定して、出願書類を作成し、特許性の向上に貢献します。

 


出願書類の作成をお任せできます。

方式(様式)の整った出願書類を作成し、門前払いを防止できます。

知り得る限りの先行技術と対比して、また自社製品、他社製品、権利行使の容易性、書類の記載要件なども考慮して、最良と思われる請求項(特許請求の範囲)を作成します。そして、先行技術との違いが分かるように、明細書や図面を作成します。

出願書類作成の手間がかかりません。たとえば、現物があれば、口頭説明だけでも出願依頼できることもあります。

◆特許事務所の弁理士は、多様な案件について、ご相談、先行技術調査、出願書類作成、拒絶理由通知対応などを、多数経験しております。また、特許関係の法令だけでなく、特許庁の審査基準なども把握しております。さらに、外国出願、侵害警告事件、無効審判事件、異議申立事件などについても、経験したり、研修を受けたり、審判決に当たったりしています。これら知識を活用して、弁理士は出願を処理します。弁理士に依頼すると、技術面、法律面、実務面を考慮して、より強い権利を、円滑に取得しやすくなります。絶対的な登録を保証することはできませんが、通常、お客様ご自身が出願処理されるよりも、特許化への可能性を高めることができます。

意匠登録などの他の知財との関係で、助言できることもあります。

 


出願後の手続もお任せできます。

特許出願の場合、出願後にも、各種手続が発生します。期限内に適切な対応をとらなければ、特許化できません。たとえば、次の点について、知っておかなければ、適切に処理できないおそれがあります。それぞれ、詳しくは、知財制度解説をご覧ください。弁理士がいれば、弁理士に任せたり、問い合わせたりすることができます。

  • 【出願処理に必要な事項(知っておきたい用語)】 特許請求の範囲、請求項、出願審査請求、意見書と手続補正書、特許料、新規性と進歩性、先願と拡大先願、最初の拒絶理由通知と最後の拒絶理由通知、新規事項追加、シフト補正、限定的減縮、サポート要件、明確性要件、プロダクトバイプロセス、マルチマルチクレームなど

審査において、(弁理士が代理の案件でも)すぐに特許されるのは少数で、拒絶理由通知に対する応答が必要な場合が多いです。途中から弁理士に依頼するとしても、出願書類の出来が悪い場合、弁理士による対応にも限界があります。

審査において、先行する他社の出願や特許が見つかるかもしれません。また、特許後、他社製品との関係が問題になるかもしれません。そのような場合でも、弁理士にご相談いただけます。

出願後、改良発明が出るかもしれません。時期により対応が異なります。弁理士がいれば、適切な対応を助言することができます。

◆外国出願を取扱いの事務所なら、海外での権利取得についても相談できます。国内の特許事務所を介して外国出願されるなら、最初から特許事務所へご依頼された方が、処理が円滑に進みます。

 


弁理士・特許事務所の探し方と注意点

【特許事務所の選定】 弁理士を探すのに知っていただきたい事項です。

弁理士ナビ

  • 地域や専門で弁理士を検索できます。日本弁理士会の公式ですから、最も信頼できます。
  • これ以外に弁理士を探すなら、ネット検索でしょうが、「**専門」「**に強い」「おすすめ」などは、単なる宣伝文句(広告)でないか、ご確認ください。特定の技術分野の専門ならともかく、たとえば、「特許専門」なら、わざわざ言わないだけで、多くの特許事務所が該当します。「特許出願に強い」も、何をもって強いのか、見極める必要があります。もし特許率(あるいはその高さと関係した返金保証)なら、下記リンク先(特許率とその注意点)もご覧ください。「おすすめ」も、誰がどのような基準(根拠)で決めているのか、確認する必要があります。
  • 公的機関で無料相談が実施されることがあります。しかしながら、あくまで相談に止まり、出願の代理を受け付ける訳ではありません。出願をご依頼される場合、相談担当者の特許事務所などに、別途依頼することになります。費用は、その特許事務所ごとに異なります。相談担当者が弁理士であるなら、結局のところ、特許事務所・弁理士の選択になると思います。
  • 弁護士・弁理士以外は、出願代理することができません。無資格で代理すれば、弁理士法違反で処罰されます。

特許事務所・弁理士の守秘義務

  • いずれの弁理士にご相談いただいても、秘密は守られます。
  • 守秘義務に関連して、既存のお客様との関係で、ご依頼・ご相談に対応できない場合もあります。

特許率(特許査定率・特許取得率)とその注意点

  • 特許される割合と、それを比較する際の注意点についての解説です。

事務所比較、特許取得率・商標登録率、顧客、関与事件等の表示の禁止

  • 日本弁理士会は「会員の広告に関するガイドライン」を定めています。

 


(作成2023.04.30、最終更新2023.05.26)
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特許率(特許査定率・特許取得率)とその注意点

特許される割合、つまり特許率(特許査定率・特許取得率)について、統計的な数値をご紹介します。

また、特許率を比較する際の注意点、ランキングの意味、についても解説します。

なお、統計の数値自体は、特許庁編『特許行政年次報告書』に掲載のものです。

目次

 


全体の特許査定率

特許出願について、審査を受けたものの内、特許される割合は?

特許査定率は、75.9%です(2022年)。

なお、特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+ファーストアクション後の取下げ・放棄件数)です。

「特許事務所ごと、会社ごと、大学の特許査定率」と、「特許事務所の特許査定率を比較する際の注意点」については後述します。

特許される割合:特許査定率の推移:2004年~現在

 


特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)

特許事務所ごと(または弁理士ごと)の特許率?、特許率を比較する際の注意点?、ランキングの意味?

通常、特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)を知ることはできません。仮にできても、次の理由により、単純に比較・ランキングすることはできません

  • それぞれ異なる案件を処理しており、同一案件での力量を測るものではない。
  • 技術分野や取扱件数などにより、特許率は変動する。仮に1件だけを受任して特許にできれば特許率100%となってしまう。
  • 特許の場合、権利範囲を狭めれば特許率を高くできる。一般に、広めの権利範囲を目指そうとすれば、審査で拒絶される可能性が高まる一方、審査での拒絶を避けようとすれば(特許を取ることを最優先にすれば)、権利範囲は狭くなりがちとなる。特許の内容(権利範囲)も考慮する必要がある。
  • 出願人(特許事務所への依頼者)により、狭い範囲なら特許は不要との考えと、狭い範囲でも特許が欲しいとの考えがある。依頼者の考えにより、事務所の特許率が左右される。なお、「狭い範囲」とは、「(想定していた)希望の権利範囲でない範囲」ということができる。特許の成立や維持には費用がかかるため、費用対効果が考慮される。

「誤導又は誤認のおそれのある広告等」あるいは「誇大又は過度な期待を抱かせる広告等」に当たるとして、所定の場合を除き、特許率を明示した広告は禁止されております(日本弁理士会「会員の広告に関するガイドライン」)。「所定の場合」とは、「誤導又は誤認を生じるおそれがなく、誇大又は過大な期待を抱かせるものでないことが明らかな場合」をいいます(会員の広告等に関する規則 第4条の2第2号括弧書き)。

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


会社ごとの特許査定率・最終特許率

主要な会社の特許率は?、その意味は?

特許庁のウェブサイトには、次の資料が掲載されています。審査段階の特許査定率と、審判段階を含んだ最終特許率とが掲載されています。

  • 特許登録件数上位200社(2022年)の出願・審査関連情報(https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2023/document/index/020211.pdf)

但し、前述した「特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)」で述べたのと同様の事情はあると思います。

一方で、出願人の技術力、出願人や代理人の先行技術調査力なども関係すると思われます。

その他、国内企業と外国企業との差もあると思います。

 


大学の特許査定率

大学の特許率は?

大学の特許査定率は、79%です(2022年)。
(出願人が大学長又は大学を有する学校法人名の出願及び承認TLOの出願を検索・集計。企業等との共同出願を含む。)

前述した全体の特許率75.9%よりも高くなっています。

一部の大学については、前述した「会社ごとの特許査定率・最終特許率」でご紹介の「特許登録件数上位200社(2022年)の出願・審査関連情報」にも掲載されています。

 


関連情報

 


(作成2022.07.28、最終更新2023.07.29)
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特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)【動画】

特許率(特許査定率・特許取得率)についての動画を、YouTubeに投稿しました(3分28秒)。

特許率(特許査定率・特許取得率)、つまり特許になる割合、について考えてみます。特に、特許事務所(弁理士)ごとの特許率(特許される割合)についてです。日本弁理士会の広告ガイドラインについても、ご紹介します。

2023年4月現在の情報であり、弊所の見解です。

【ご参考1】特許率(特許査定率・特許取得率)とその注意点
【ご参考2】事務所比較、特許取得率・商標登録率、顧客、関与事件等の表示の禁止

【補足】動画中、「所定の場合を除き、特許率を明示した広告は禁止」について
「所定の場合」とは、「誤導又は誤認を生じるおそれがなく、誇大又は過大な期待を抱かせるものでないことが明らかな場合」です(会員の広告等に関する規則 第4条の2第2号括弧書き)。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)【動画】

 


(作成2023.04.22、最終更新2023.04.27)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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特許出願の拒絶理由通知への対応

目次

 


拒絶理由通知とは

特許出願に対する拒絶理由通知とは、審査官が特許出願について審査した結果、所定の拒絶理由に該当すると認めるとき、その旨を出願人に伝えて反論の機会を与えるための通知をいいます。

 


拒絶理由通知の概要

特許出願について審査した結果、特許できる場合は「特許査定」がなされ、特許できない場合は「拒絶査定」がなされます。

しかし、いきなり拒絶査定をしたのでは出願人に酷であるし、審査官の間違いである可能性も残ります。

そこで、拒絶査定に先立ち、まずは「拒絶理由通知」がなされます。拒絶理由通知は、出願人に「拒絶理由通知書」を送付してなされます。拒絶理由通知書には、拒絶の根拠となる条文や理由が示されます。

 

拒絶理由の一覧は、次のリンク先をご覧ください。

 

拒絶理由通知では、たとえば、次のような拒絶理由が通知されます。

  • そもそも特許法が保護する発明に当たらない(発明該当性)。
  • 出願前から知られた先行技術と同一である(新規性)。
  • 先行技術と同一ではないが、それから容易に発明できる(進歩性)。
  • 出願日前になされた出願に記載されている(先願拡大先願)。
  • 出願書類が所定の要件を満たしていない(記載要件)。

典型的には、新規性または進歩性の欠如を理由とする拒絶理由通知となります。その場合、先行技術が記載された「引用文献」が示されます。多くの場合、内外国の特許公報となります。その引用文献に記載の発明「引用発明」と同一(新規性がない)か、引用発明から容易に発明できる(進歩性がない)として、特許できない旨の通知となります。

 

拒絶理由通知に対し、出願人は、以下のような対応をとることができます。

なお、拒絶理由通知書に記載の期間内に対応する必要があります。但し、所定の手続により、応答期間を延長することができます。

 


意見書の提出

◆意見書とは、審査官が示した拒絶理由には該当しない根拠を述べたり、特許請求の範囲等の補正により拒絶理由が解消した旨を述べたりする書類です。

◆拒絶理由通知に対し、出願人は、意見書を提出することができます。意見書では、審査官が示した拒絶理由には該当しないか、後述する手続補正書により拒絶理由は解消した旨を述べます。たとえば、次のとおりです。なお、補正する場合、補正の適法性(補正の根拠など)についても、意見書で述べます。

  • 発明該当性の拒絶理由に対しては、特許法上の発明に当たる理由を述べます。
  • 新規性や進歩性の拒絶理由に対しては、先行技術と同一ではないし、先行技術から容易に発明できない理由を述べます。
  • 先願や拡大先願の拒絶理由に対しては、先願発明と同一ではない理由を述べます。
  • 記載不備の拒絶理由に対しては、記載要件を満たしている理由を述べます。

特許請求の範囲(権利範囲)との整合性に注意します。たとえば、権利範囲が「断面形状の限定のない鉛筆(断面円形も含む鉛筆)」であるのに、意見書において「断面六角形だから転がりにくい」といくら主張しても、拒絶理由の解消には不十分です。後述する手続補正書も提出して、特許請求の範囲(権利範囲)を「断面六角形の鉛筆」に限定する必要があります。

◆意見書(および後述の手続補正書)提出後の流れ
意見書を提出すると、審査官による再審査に付されます。拒絶理由が解消していれば、特許査定がなされ、解消していなければ、拒絶査定がなされます。通知済の拒絶理由が解消しても、別の拒絶理由があれば、再度の拒絶理由通知がなされます。

 


手続補正書の提出

◆手続補正書とは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面を補正(修正)するための書類です。

◆拒絶理由通知に対し、出願人は、手続補正書を提出することができます。手続補正書では、明細書、特許請求の範囲または図面の補正ができます。たとえば、次のとおりです。なお、補正の効果は出願時まで遡ります。つまり、補正後の内容で出願したことになります。補正が適法である(補正の要件を満たしている)旨、別途、意見書で説明する必要があります。

  • 発明該当性の拒絶理由に対しては、特許法上の発明に当たるように、特許請求の範囲を補正します。
  • 新規性や進歩性の拒絶理由に対しては、先行技術と同一ではなく、先行技術から容易に発明できない内容に、特許請求の範囲を補正します(構成要件を追加して権利範囲を狭めます)。たとえば、「鉛筆」を「断面六角形の鉛筆」や「消しゴム付きの鉛筆」に補正し(権利範囲を狭め)、意見書において、そのメリットなどを主張します。「特許請求の範囲の記載」と「権利範囲」との関係については、特許請求の範囲についてをご覧ください。
  • 先願や拡大先願の拒絶理由に対しては、先願発明と同一ではない内容に、特許請求の範囲を補正します。
  • 記載不備の拒絶理由に対しては、記載要件を満たすように、明細書、特許請求の範囲または図面を補正します。

手続補正書の提出は任意です。たとえば、新規性や進歩性の拒絶理由に対し、特許請求の範囲を補正しなくても既に引用発明との違いが十分に出ていると考えるならば、意見書でその旨説明することも考えられます。しかし、“本当に”補正する必要がないのか、たとえば現状の請求項の記載では引用発明も含むように読めなくもない場合もあるので、いま一度、十分な確認が必要です。

◆拒絶理由通知には、「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」とがあります。最初か最後かに応じて、補正の要件が異なります。「最後の拒絶理由通知」の場合、拒絶理由通知書に「最後」との明示があります。最後の拒絶理由とは、「原則として、最初の拒絶理由に対する補正により通知することが必要となった拒絶理由のみを通知するもの」をいいます(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第22版』第17条の2)。単純に、2回目の拒絶理由通知が「最後の拒絶理由通知」になる訳ではありません。また、最初の拒絶理由通知に対する応答(意見書および/または手続補正書の提出)後、再度の拒絶理由通知なく、拒絶査定になることもあります。

 

最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正は、次の要件を満たす必要があります。詳しくは、「明細書・特許請求の範囲・図面の補正(まとめ)」をご覧ください。

 

最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正は、次の要件を満たす必要があります。詳しくは、「明細書・特許請求の範囲・図面の補正(まとめ)」をご覧ください。

 


出願の分割

◆出願人は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を、一又は二以上の新たな特許出願とすることができます。

◆たとえば、次のような目的のために、出願の分割を行います。なお、分割出願については、別途、出願審査請求が必要です。

  • 発明の単一性違反(一出願に含めることができる発明の範囲を超えている旨)の拒絶理由を解消するために、特許請求の範囲の各請求項を複数の出願に分ける。
  • 特許性(権利化できる見込み)の高低、審査状況などを考慮して、特許請求の範囲の各請求項を複数の出願に分ける(特許できるものは迅速に特許化し、争うものと分ける)。
  • 明細書又は図面に記載しているが特許請求の範囲には記載していない発明について、分割出願により権利化を目指す。
  • 最後の拒絶理由通知に対する応答時の特許請求の範囲の補正は、前述したとおり要件が厳しいため、補正が難しい場合には分割出願する。

 


出願の変更

実用新案登録出願への変更

特許出願人は、所定要件下、特許出願を実用新案登録出願に変更することができます。但し、特許出願についての最初の拒絶査定謄本送達日から3月を経過した後、又はその特許出願日から9年6月を経過した後は、この限りではありません。出願変更があったとき、その実用新案登録出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなされます。

 

意匠登録出願への変更

特許出願人は、所定要件下、特許出願を意匠登録出願に変更することができます。但し、特許出願についての最初の拒絶査定謄本送達日から3月を経過した後は、この限りではありません。出願変更があったとき、その意匠登録出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなされます。

 


新たな出願

別途の新規出願

拒絶理由通知を受けた出願が未公開(出願公開前)であれば、出願内容を充実させた新たな出願をして再トライすることも考えられます。

但し、先の出願の出願日を確保できませんから(つまり新たな出願の出願日を基準に審査されるので)、先の出願後に他人の出願がなされていると、それが新たな拒絶理由となる可能性があります。

また、先の出願内容を既に公開・実施(ホームページ掲載や製造販売等)している場合、特許を受けられない場合があります。所定の場合、新たな出願について、新規性喪失の例外規定の適用を受けたり、先の出願に基づき国内優先権を主張することも考えられます。

 


権利化の断念

放置(対応しない)

拒絶理由通知の内容を受け入れる場合、そのまま放置すれば足ります。後日、拒絶査定がきますが、それも放置すれば足ります。それにより拒絶査定は確定します。

出願公開前に拒絶査定が確定した場合、原則として、出願公開されません。そのため、拒絶査定確定の時期によっては、出願内容の公開を防止できる場合があります

出願公開後に拒絶査定が確定した場合、特許を受けられなくても、出願公開されていれば、同一発明について後日他人が出願して権利化するのを防止することができます出願による他者権利化阻止効果(防衛出願))。

 

出願の取下げ・放棄

所望により、出願を取下げ又は放棄することもできます。

出願公開前に出願が取下げ又は放棄された場合、原則として、出願公開されません。そのため、出願の取下げ又は放棄の時期によっては、出願内容の公開を防止できる場合があります

 

◆その他

拒絶理由の引用文献として、他人の先願が挙げられた場合、その権利を侵害しないように留意する必要があります。先行技術とされた公報の出願が権利化されたのか、その権利が現在も存続中なのか、その権利の内容と自社製品の関係など、様々な検討が必要です。

 


特許出願の拒絶理由通知に対するご相談

 


関連情報

 


(作成2023.04.19、最終更新2023.04.20)
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工業上利用することができる意匠か否かの判断事例1(意匠登録無効審判:車輪用ナット)【動画】

工業上利用することができる意匠か否かの判断事例1(意匠登録無効審判:車輪用ナット)について、解説動画をYouTubeに投稿しました(2分14秒)。

意匠法は、「工業上利用することができる意匠」を保護します(3条1項柱書)。そのため、そもそも意匠に該当しないか、工業上利用することができない意匠は、意匠登録を受けることができません。

図面の不備も、意匠が具体的でないとして、工業上利用性に関連します。ナットの意匠なのに、ねじ溝(螺旋状溝)を図示しなかった場合、救済されるか。特許庁の意匠登録無効審判事件を確認してみます。

2023年4月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


工業上利用することができる意匠か否かの判断事例1(意匠登録無効審判:車輪用ナット)【動画】

 


(作成2023.04.15、最終更新2023.04.15)
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新規性喪失後の意匠登録出願(意匠登録無効審判:ゲーム機)【動画】

新規性喪失後の意匠登録出願(意匠登録無効審判:ゲーム機)について、解説動画をYouTubeに投稿しました(4分22秒)。

自ら公開後、直ちに意匠登録出願を行ったが、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続をしなかった場合、救済されるか。特許庁の意匠登録無効審判事件を確認してみます。

2023年4月現在の弊所把握情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


新規性喪失後の意匠登録出願(意匠登録無効審判:ゲーム機)【動画】

 


(作成2023.04.08、最終更新2023.04.08)
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